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復讐するため今日も生きていく  作者: ゆづにゃん
第十一章平和を求めて
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第117話出会い

投稿が遅くなると思います、すいません。

酒を飲み始めてから、どれだけ時間が経過したのだろう。

そこまで飲んだとは思ってないが、少しばかり頭がフラフラする。

ちなみにカノンは俺にお酒を継ぐくせに一向に自分では飲もうとしない。

まるで、俺を酔わせる事が目的みたいな......


「今度はこのワイン開けますか?それとも何か食べます?」


甲斐甲斐しく俺の隣ではニコニコと笑顔でカノンが俺の世話をしてくれている。

わざわざ人前であーんをさせないで欲しい。

てか、ちょっと酔いすぎて頭が良く回らなくなってきた。


「いや、あの、ちょっと待っ....」


「それとも......私?」


........いま、何言ったんだ?

聞き間違いかな?


「すまん、なんか変な幻聴聞こえてきたから、少し休ませてくれ」


椅子に体を預け、仰け反らせるとのぼせた頭に自然と手を置く。

そんな俺を見ていたカノンは、少しだけ見つめていた後、大きく深呼吸。

意を決して口にした。


「あの.....抱きついていいですか?」


「.......いいよ」


(あれ......俺今何言った?)


右手に何か暖かくふくよかな膨らみが当たっているような気がするが、もうどうでもいい、ひとまず体の熱を抜いて、出来るだけ酔いを覚まさないと。

隣で何故か俺の腕に抱きついている、カノンを見て、邪な気持ちが渦巻く。

それをなんとか抑え込むと、天井を見上げた。


(眠くなってきた.......)


そろそろダンスが始まるはずだ。

お酒を飲むんじゃなかった、カノンを右手に抱きつかせたままおもむろに席を立つ。

そしてそのまま二階のベランダに出た、回復魔法でなんとか酒の毒素を抜くが、それでも頭は多少フラフラする。


「おや、キリア王、いいご身分だね」


そこにはまたもや知らない女性、長い茶髪がよく似合う。

今日はあの爺に続き変なやつによくで会う日らしい。


「えーと、どちら様で?」


「リミナース家が長女リサ、覚えなくていいよ?ユウリ後輩」


「……もしかして学院の先輩ですか?それもいろいろとばれてます?」


「安心しなよ、学院の上級生では今のところXの

正体は私しか知らない」


このリサという女はなんのためにそんなことを調べたのだろう。


「何か狙いでも?」


「いや特に……ないけど」


「……え?」


「暇だったから少し調べただけだし、後輩の彼女との二人きりの時間を邪魔してやろうと思っただけ」


そうジト目でリサに言われて気づく。

カノンに抱きつかれているこの状況、人目には彼氏、彼女に見えているのだと。

それはまずい、カノンの嫁の貰い手がなくなってしまう。速やかにそっとカノンから腕を外そうとすると。


「………」


うるんだ瞳でこちらを見つめてきた。

それはずるい本当にそう思う。

そんな困惑する俺にリサは軽く肩を叩いた。


「後輩」


「何ですか?」


「死ねばいいのに」


無機質な笑顔でそう告げられた。


「ここまでまっすぐな殺意久しぶりですよ」


「はあ……世の中不公平だね……こんなパッとしない非凡人がもてるだなんて」


心底不快そうに俺を睨むと、軽やかなてつきで右手を振った。

すると急にカノンの顔が緩み始め、まぶたを閉じた。


「うおっと……カノン?」


いきなり俺に全体重をかけると、地面にへたりこんでしまった。


「せっかくだ後輩、こっちに来なよ、少し世間話でもしようか」


ベランダのわき、木の装飾が施された間のベンチにリサは腰をかけると、隣をポンポンと叩く。

座れと手で示しているのだろう。

仕方なくカノンを、それもお姫様抱っこで持ち上げると、リサは案の定舌打ちをした。

そんなこと気にせず、ベンチにそのまま座らせる。

体制が不安定で、すぐに倒れてしまいそうなので、リサの隣に座る俺の方に寄りかかってくるようにした。


「……後輩」


「何ですか」


「死んだらどうなると思う?」


「世間話にしては物騒な話題ですね……え、と、何もないんじゃないですかね、あるのは無だけじゃ……」


一度死んだ俺だからわかること、死んだときうっすらと覚えているのは真っ白く永遠に続く空間がそこにはあって……何か人影が……

混濁する記憶に困惑する俺は少し黙る混んでしまう。


「人は絶対にいつか死ぬ、それが世界の絶対のルール、けどもし死んで生き返るような、記憶だけをもって生まれ変わる、それを死んだって言うのか……私はわからない」


銀の瞳が俺を射抜く、まるで自分が記憶を持って生まれ変わっていることがばれているかのようで、少しだけ鼓動が高くなる。


「世の中には転生者、記憶者、などがいるらしい……その者たちは生まれ変わる前、転生前の人生に悔いがあり、何かに向けた強い思いによってギフトが施される」


「ギフト……」


「あの世に通じる道があり、その道には悪魔がいてその悪魔に魅いられると、記憶者となり人外の力を与えられる、それがギフトなんだそうだよ……」


ギフト、ならば俺のギフトは復讐者のスキルだと言うことなのだろう。

それとも霊鬼がギフトなのだろうか、もしくは両方とも?……

そもそもこのリサの言っていることが真実かどうかもわからない、ただ、悪魔か分からないが何か人影があったのは確かだ。


「まあ、本に書いてあったことだしね、正しいかどうかなんてわからない……実際死んだときの記憶なんてない」


「え?それってどういう……」


まるで自分のことをいっているみたいに、一瞬だけ暗い表情を浮かべると、場内を見つめた。

既にダンスは終盤を迎えている。


「時間潰し手伝ってくれてありがと」


それだけ告げると、置いてあったグラスを手に持ち城内に入っていってしまった。

それを見送り、俺に寄りかかるカノンを俺の膝の上の移動させ、軽く頭を撫でた。


「また、女を増やしたんですか?」


「変な言い方しないでくれ」


呆れたようにそう呟いてきたのはエミリーだ。

いつからそこにいたのか、すぐ後ろの手すりの上にグラスを傾けながら座りこみ月を眺めていた。

ちょっとだけ気まずい。

エミリーは知らなくて当たり前なんだが少し前に闘争をした間柄なのだ……

と、そんな事を考えたからだろうか、エミリーが考えていた事の話題を出してきた。


「そう言えば……学院に私より強い人がいました」


「エミリーより?そんなやつがいたのか」


「はい、後……もうひとつ分かったことが…」


エミリーは少し照れるように、ほほを描くと言った。


「こんな私でも……友達が出来るんだな、って…」


「……そっか、良かったな」


「はい……」


友達を作れば、また失う。

その恐怖から、エミリーは俺達以外と下手に馴れ合うようなことはしなかった。

そんなエミリーが友達を作った、それはとても大きな一歩だ。


「ユウキさんは……人に戻りたいと思いませんか?」


それは唐突にエミリーが告げた言葉。


「違うんですよ!?別に生活に不満があるとかじゃなくてですね……」


俺は何もいっていないのに勝手に勘違いをして、言い訳をするように焦った口調で喋り出す。


「こう、皆で喋ってるときとか、恵まれてるなって、自分でも感じるんです……けど、やっぱり…一人になってステータスを見たときに気づくんです……自分は人じゃないんだな、って……」


今自分が平和に暮らし、友ができたと言う現実と。

友を殺した一族に復讐を誓い、化け物となった現実。

エミリーは俺に問いかけているのだ、復讐を辞めて、今という現実を大切にしないかと。


「エミリーはどうしたいんだ?」


「私は……」


「王!早く来てください!挨拶をしに来ている貴族の方が待たれております!」


ゴブリンがタイミングよく俺を見つけると、それから社交界が終わるまでの数時間カノンを膝枕しながらニス=グリモアとエストロニアの貴族の応対をするとてもきつい時間が流れた、だが、エミリーの答えを聞けない自分に何処か安堵していた。


           #


「すいません、なんか恥ずかしいことさせちゃったみたいで」


その日の夜、俺とカノンは城に泊めてもらっていた、それも同じ部屋に。

まあ別になれているからいいのだが、本当にカノンがそれでいいのかがよくわからない。

まあ、今はそんなことも気にせず、ベッドの上で俺はストレッチの手伝いをしてもらっていた。


「本当に固いですね~」


「い、痛い…ちょっと待って」


「なんかい止める気ですか、こういうのは勢いです」


俺の背中に体を密着させるとそのまま前に倒していく、膨らみが背中に当たって、顔が赤くなりそうだ。

というか色々と変な気分になってきてしまう。


「それにしてもいきなりなんでストレッチなんか?」


「体が固すぎて蹴り技がうまくできないんだ」


「なるほど……」


「ちょ!い、痛い痛い!!」


無理矢理体がを押され、痛みから逃げるようにベッドから跳び降りる。


「それじゃあ、いつになっても柔らかくなりませんよ?」


そんな俺に呆れたようにため息混じりにそう呟く。

俺は少しばつが悪そうに部屋の電気を消す。

そしてベッドの中に潜り込んだ。

大きいベッドのはずなのに背中越しにカノンの体温を感じる。


「ユウキさん」


「どうした?」


「どこにも行かないでくださいね」


「…いきなりどうした?……」


「………」


「カノン?……」


俺の質問に結局カノンは答えてくれなかった。

ただひとつだけ言えるのは、カノンは俺がいなくなるのではないかと、思っているのだろう。

俺が何処かにいくわけがないと言うのに……


#


月光が城を照らす、ただそれだけだと言うのにその光景は何処か神秘的だった。

そんな城に忍び込む人影が一つ。


(うう……なんとか城前の警備は突破できたっすが……この先が心配っす)


おどおどと、怯えた足取りで城の南西側に回り込むと、そこにはこれ見よがしに二階から下ろされた縄ばしごがかけられていた。

その縄を登りきると、見えたのは熟睡中の愛らしいカノンの顔と、椅子に腰を掛け本を読むユウキの姿だった。


「5分のロスだぞ」


小さな明かりがついた豪華な部屋、ユウキは本を机の上に置くとそんな厳しい言葉を投げ掛ける。


「それくらい、勘弁してほしいっすよ」


「冗談だよ、それより気づかれたか?」


「いえ、今のところは……」


自分の能力だと言うのに、心底不思議そうに首をかしげていた。


(やっぱ、異常だな…)


実のところ今日のみ、ロカにお願いして警備を厳しくしてもらっていたのだ。

たしか入り口付近には10人程見張らせていたはず。

まさか本当に、誰にも見えていない、透明人間にでもなれると言うのだろうか。


(まあ、そのための実験なんだけど……)


「あの…もう終わりっすか?帰っていいっすか」


「まあまて、まだやることがある、ちょっと宝物庫にいって、魔剣盗んできてくれ」


「ま、魔剣!?」


才能がなくとも魔法を扱うことができる剣、ただ自分の魔力が減っていく。

ただそれだけの剣、それがユウキの見解だ、だがツバキ達一般人からしたら物語上の剣なのだ。

驚くのも無理はない。


「それが盗めたら終了、かえっていいぞ」


「い、いや、そんなことしたら怒られるどころじゃすみませんよ!?」


「いいから、いってこい!」


嫌そうに部屋でとどまっているツバキの背中を突き飛ばすと、そのまま部屋から追い出した。

ツバキは「冗談っすよね…」と期待を込めて後ろに振り向くと、固く閉ざされた扉が目に見えた。

それで気づく、マジだ、と。

ツバキは小さく深呼吸をして両頬をはたいた。


「覚悟を決めるっすよ……よし!」


覚悟を決めた後のツバキの動きはとても軽やかだった。

二階の廊下を抜けて、一階までの階段を降ると、社交界が行われたホールに出た。

今のところは警備兵の姿はない、とても安全な道だった。

だが、地下一回の階段には警備兵が二人も見張っていた。

これはもう、ユウキがいっていた力を使うしかない。

全身の力を抜き、大きく深呼吸をした。


(思い出せ……あの時の…気持ちを)


魔力は人の強すぎた思いを、スキルとして具現化することがある。

それは天才の証、生まれつきの圧倒的な魔力濃度による他を隔絶した力。

まあ、つまり、警備兵の目の前を通っても一向に気づかれず、楽に魔剣を盗みだしユウキの部屋までもってきた、この結果はツバキがSクラスに匹敵する、いやそれ以上の力があるという証明だ。


「これであってるっすか?」


「ああ、あってる」


その魔剣は小さな刀である、波紋は美しい紅色で、見ていると、どことなくひきこまれそうになってしまう。


「あと、それあげるから」


「え、いいんすか?」


「元々俺のだし、うまくできたんだが使い道無かったしな」


ツバキから受け取った魔剣を投げ渡すと、危なっかしく受け止める。


「あと、ついでにこれも」


「なんすか、これ?」


またもや投げられたのは鉄製の小さなバッジ。


「ピンチになったら裏のボタンを押せ、いつでも居場所が俺に伝わる」


「へ~、でも多分俺、使いませんよ?」


「何でだ?X探しで学院が多少危険になるぞ?」


「いや、だって…友達に迷惑かけたくないっすし」


そんな嬉しいことを平然と告げられて胸が暖かくなる。そして安堵した、友達だと思ってもらえているのだと。


「……そうか」


「そうっすよ」


「……ありがとな」


暗い過去、人殺しによって血に染まった今が少しだけ、薄れたような気がして、つい、そんな言葉が口から漏れた。


「え……今なんて?…」


「なんでもないよ、お前はさっさと帰れ」


少しだけ照れ臭かったのか、無理矢理登ってきた窓からツバキを突き落とした。


「ちょっ!?落ち!?……うぎゃああ!?」


一応ここは二階、それも城と言うでかい規模の二階、落ちたらただではすまないだろう。


(まあ、大丈夫か……)


ツバキならきっと縄ばしごをつかんでくれているだろうと願って振り返った。

ベッドの上では熟睡中のカノン、俺の代わりのように枕を抱き締めている。

そのせいか寝るスペースがない、かといって一緒に寝ないと朝不機嫌になってしまう。

仕方なく枕をすっと抜き取り、そこに腕を絡め、ベッドの中に潜り込んだ。


「ふあ~」


小さなあくびを一つ。

部屋を照らす月明かりが、少し眩しいと感じながらも瞼を閉じた。


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