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復讐するため今日も生きていく  作者: ゆづにゃん
第十一章平和を求めて
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第115話新しいスキル

「先に言っとくぞ!魔力が100を切った瞬間....」


とても座ったその瞳を浮かべたリン。

ぞわりと寒気がするように背筋が縮こまると、右手を上げ力強く自分の拳を握りしめた。


「殴り落とす」


「いや、一応病人だよ?俺」


魔王の殴りとか、シャレにならん。

雰囲気的に1ヶ月くらい動かないように全身の骨を折られる気がする。


「.....なら、今すぐ殴り落とす」


それ、ただ単に俺の事動けないようにしたいだけじゃねえの?もの凄い悪意を感じた。


「冗談だって....気をつけるからさ」


「なら、さっさとしろ、終わったら最低一週間は監禁じゃからな......」


「いや、ロカから社交界のお誘いが......」


「安心しろ、しっかりとカノンと二人で見張ってやるからの」


ニヤニヤしてるこいつがとても腹立たしい、完全に見張りに来るきまんまんじゃないか。

自分の自由のなさに小さくため息を吐くと、


「ステータス、オープン」


ステータスを空中に展開した、まず複合の固有スキルをタップした。

すると、隣に別枠のスクエアーが発生した。

これは複合スクエアー。

複合のスキルは、ステータス内でスキルの合成を行う欄が発生するのだ。

ステータスの固有スキルの欄から、適当なスキルをホールド、そのまま合成欄に入れていく。


(まず、最初は「合力」と「破壊」を合成っと.....)


『複合:「合力」「破壊」』


まあ、くっつけただけなスキルだ。

ただ、俺の予想が正しければ.....


(この木でいっか....ふむ14...この数値を見た後に..全身全霊の力を振り絞って.....)


右手を引きしぼり、力強く拳を握ると、一気に前に突き出した。

木から激しい打撃音を響かせ、根っこごとぶっ飛ばした。


「うーん?強くなってる....のかな?」


よく分からないが、上手くいっていると思いたい。

俺が思ったのは、合力スキルの強制的に力を引き出すというのは、もしかしたら破壊スキルの、怒る、などの条件を無視して力を引き出せるんじゃないか.....という事なのだが。


(まあ、出来てると仮定しよう.....ちょっと手が痛い)


だいぶグダグダだが、まあいいか。

後は両腕に【竜装12】を付与すれば.....

両腕を合わせて、地面に振り降ろすと、あたりの土がぶっ飛び、放った場所、そこを中心に、あたり一帯を土肌に変えた.....のだが、なんか納得できなかった。


「なんていうか....微妙?」


「残り300」


わざわざ嫌がらせのように、報告をしてくるリンの性格が悪い、ちょっとジト目で睨みつけてやるが、逆に睨み返されて、怖かったのでやめた。


(違うんだよな.....近接戦で、相手とやりあうには.....)


「なあリン様〜.....近接格闘に強くなるスキルを教えてくれません?」


俺がため息混じりに聞くと、リンはジト目で俺を睨みながら、近づいてくると俺のステータスを覗き見た。


「ふーむ、な、なんじゃこの量?....やはり主様...わしに教えておらん....いや、仲間に打ち明けてないスキルがあるじゃろ」


「なんのことだ?」


流石に、このスキルを教えるわけにはいかない。

カノンの時は特に考えずに教えてしまったが、よくよく考えてみれば、漏洩の可能性があるのに、むやみに教えるわけにはいかない。


「話すならば、少しは手伝ってやらんでもないぞ?」


「......俺の復讐スキルだよ、自分のスキル習得率を10倍に引き上げる」


「固有スキルもか?」


「見たスキルは習得できるようになって、それっぽい動きをすると習得できる」


「ふーん...そうか」


何か納得いった、ような顔つきで、俺の顔を見ると、次の瞬間、


「ぐがッ!?」


「この魔王相手に嘘とは、感心せんな主様」


強烈なボディーブローが体に入った、マジで痛い。

お腹の中のもの全て吐き出してしまいそうだ。

頭を抑えるようにお腹に手を当てると、目の前で腕を組むリンを見つめながら、気力で立ち上がった。


「病人だって....言ったよな俺?」


「そうか?せっかく手伝ってやろうと思ったのじゃが」


「え、つまり、かかって来いって事?」


「それ以外何がある?」


少しばかりがっかりした。


(やっぱり、優しく手解きしてくれるわけないよね.....まあ、相手してくれるだけいいと思うか....)


できる事なら魔王の力の片鱗を俺に教えてほしいものだが........

そんな不満が顔に現れていたのか、リンはため息を吐いた後、俺に小さく告げた。


「主様は考え過ぎなのじゃよ、使えるとか使えないとか.....全ての力を使えばよかろう?」


「ん......確....かに....」


それもそうだ、俺は何を考えていたんだろう。

近接格闘に使えるスキルを、選出して使う必要はないんだ。

傲慢に、全て使って近接格闘をすれば良いのだ。


「それもそうだな...よしっ」


固有スキルの中で、戦闘ものを除く全てを選択、ホールドしてスクエアーの中に詰め込んだ。

無理矢理全てを合成、とんでもなく長い固有スキルが出来上がった。


(これは多分、発動した瞬間......耐えられるかな...)


このスキルを発動させれば魔力が一気に消え、二週間は監禁されるだろう。てかその前に確実にリンの渾身の一撃が鳩尾に叩き込まれる事を予期できる。


(魔王の一撃.....耐えられたら...使える、よな)


俺の命の灯火が、消される可能性がある。

それでも、試さずにはいられなかった。


「複合発動!」


魔力がユウキの体を包んだその時、リンは


「馬鹿」


地面がえぐれ上がり、周りの木が吹き飛ぶ勢いの蹴りを叩き込んだ。


ムー邸ベッドの上にて.....

そこには白髪の少年、両手両足には金具が取り付けられ、動かないようにされている。

それを見てリンはにこやかに呟いた。


「これで1ヶ月は監禁じゃな♪」


見事ユウキは気絶した。

まあ、当然といえば当然だろう、あんな魔力を使えば、また魔力欠乏症をこじらせるに決まっている。

だが、それでもリンは少しだけ不満があった。

それは自分が蹴り落とせなかった事。


(まさか...やり返されるとはのぉ....不覚じゃの)


特級装備、それも魔王が装着するような化け物じみた装備、ゴスロリドレス、その服の一部が破れていた。

これは、ユウキにやられたのだ。

リンの本気の蹴りをまさか同じ蹴りで塞がれたあげく、逆に蹴り返されてしまったのだ。

まあ、それだけやって地面に倒れ込んだが。


(.主人の成長を喜ぶべきか.....それとも....危険視するべきか)


このスキルに、もし、もし霊鬼の力を加えたとなれば、今のわしでは勝てなくなるだろう。

まあ、勝つ必要などないのだが。

万が一、もし主様が敵となった時......虚無にならなくてはいけないだろう。

そして虚無となれば高確率で殺してしまうだろう。

別に殺すことに躊躇う気持ちなんて微塵もない...ただ、


(少しわしも鍛えるかのぉ....)


殺したいだなんて、思いも微塵もなかった。

ただそれだけの事。



ニス=グリモア学院は今日も平和....

とは、言い難く、どのクラスでもある事態が発生した、それはFクラスでも同じ事で.....

教室にいる、偉そうなSクラスの生徒は、紐を解くと丸めた紙を広げた。


「Xに懸賞金をかける事となった!」


そこには仮面の男が描かれていた。

この事態が発生したのにはある三つの理由が重なったためだ。

まず一つ、つい最近起こった、闘技場における生徒暴行事件、それの主犯がXとされている。

その場に先生が居合わせたので、普通止めるべきと、生徒会として伝えたのだが、帰ってきたのは。


「あの戦いに割り込めるわけがない」


との、一点張りであった。

そのことに関し、仕方なく生徒会が動きを始めた事。

二つ目は、Sクラスの暴動である。

エミリーに守られ優しさを知ったとでも言うべきだろうか、自分達の昔、エミリーにたいする行動を悔いたのか。

まるでその事を誤魔化すように、他クラスを脅しXの正体を探し始めたのだ。

その誤魔化した事が原因など考えもしないで。

そして三つめ、学院の第2位階が生徒会に所属していて、なおかつ三代貴族の息子であった事だ。


「Xに懸賞金をかける事、文句はありますまいな」


「ぐぅ.....」


学院長も否定する事は出来なかった事。

この三つが奇跡的な重なり方をした結果、指名手配アンド、その取り締まりとして各クラスに派遣される事となったのがSクラスの生徒。

その生徒達が今Fクラスに来ていた。


「分かったかカスども!見つけたら即刻Sクラスに!....」


「馬鹿っ!」


憤った少年の頭を、一人の少女が殴りつける。

すると、少年はバツが悪そうに視線を逸らした。


「はぁ...速やかに生徒会に報告してください、お願いします...ほら、行くわよ」


それは、つまりSクラスに報告されても対処できないと、言う事なのだろう、なんとなく察しがついた。


「一応期待してるからな!お前ら!!」


それは、Fクラスのピンチに駆けつけた事から、関係があるのではないかと疑われている、そう言っているようなものだった。

その本人はここ一週間姿を見せていない。


(大丈夫っすかね、ユウリは....)


少しばかり何かあったのではないか、ちょっとだけ心配になっていたツバキは、四人部屋のカノンに相談してみると。


「大丈夫ですよ♪」


とてもテンション高げにそう告げられた。


「心配なら、会ってみますか?」



そんなこんなで連れていかれたのは、まさかの貴族の、それも上流階級の貴族のみが住む一等地。

その一角に堂々と家を構える豪邸。

その中にカノンが入っていく、その後ろをツバキはおどおどとついてく。

中に入ると金髪の女の子や、執事服のおじさんの姿があって、そのすぐそばには何か鍵みたいな....


「早く来てくださいよ」


「あ、はいっす」


二階に連れていかれると、一番手前の部屋の扉を指されると。


「少し飲み物持ってきますね」


カノンは一階に降りて行ってしまった。

一人扉の前に残されたツバキは、扉を開けるとそこには。

ベッドの上で両腕、両足を束縛され、寝転がされているユウリの姿が、それを見て、予想以上に心配という心が消え失せた。


「......ユウリ?頭大丈夫っすか?」


「そう見えるか?、頭って何だこの野郎」


「見えますっすよ?何か、特殊なプレイの途中みたいな.....もしかしてお邪魔っすか?」


「邪魔じゃないし、そんなプレイじゃないよ、俺がそんな事望むわけないだろ?」


「ならなんで壊さないっすか?氷塊みたいに壊せばいいじゃないっすか」


「魔力封じの手錠と足枷なんだ....」


「なるほど....ご飯食べます?」


「ああ、食べる」


なんて、普段通りの巫山戯たようなお喋りをしながら、申し訳程度に置かれた飯を口に運んでもらった。

その時目の前で、あーんと言うツバキの顔が可愛すぎる。

相手は男なのに、不覚にもドキドキした。


「なあ、お願いがあるんだけど....」


「何っすか?」


「鍵持ってきてくんない?」


「えー、いやっすよカノンさんに嫌われちゃうっす」


露骨に嫌な顔をされた。

流れ的に確実に断られる、そんな気がした俺は慌てて何か引き止められないかと、甘言を紡ぐ。


「じゃ、じゃあさ、なんかお願いあるか?交換条件だ、なんでもいいぞ?欲しい物とかあるか?」


「そうっすね〜......あっ....」


「どうした?決まったのか?」


「決まりましたっすよ....俺を鍛えてー」


「は?え、と....それ以外で」


「なんでっすか!?」


分かっていないのだツバキは、もし本気で鍛えるとなれば人で無くなる覚悟がいるし。

いくら俺が友達だと、裏切られる可能性がないと、断じたからだとしても、逆に友達と思ってるからこそできない。

なんとも言い難い、頷けば友達人外化、断れば残り三週間くらい監禁され、リンとカノンに遊び道具にされる。

てか、理性がもたないし、体力ももたない、二人して抱き枕みたいにして寝るのをやめてほしい。

悶々としてここ最近眠れなくて、ある意味拷問に近いのだ。

久しぶりにすっきりと寝たい。


「なら、鍵はとってこないっす」


そう言って、扉から出て行こうとするツバキを、俺は慌てて引き止める。


「ま、待ってくれ、分かったその条件飲むから」


大丈夫だ、そう、しっかりと弱めに鍛えれば、人外などになりはしない。

俺ならできるはずだ....多分、それに本当に取ってこれるとは思っていないし.....


「じゃあ、開けるっすね」


「ああ、頼む....って、え?いつの間に?」


「えっと、っすね、多分こうなるだろうな、と思って先に盗んできました」


テヘッと舌を出すツバキ、可愛い。

じゃなくて、異常だ。


(おい、嘘だろ....あの魔王様の監視を掻い潜ったってのか?)


何か、そういったスキルや経験があるのか?....

けど他人から感知されないなんて、SクラスLVの能力じゃないのか?


(少し面白いな)


「どうかしたっすか?」


「いや....少し本気で鍛えてみようかと」


「え、本気じゃなくていいっすよ?いや、てかユウリに本気になられると俺の身がもたないっす...って聞いてるっすか?」


ツバキの今更勘弁して欲しいなどという言葉は全く耳に入ってこない。

それよりも、その才能を見てみたくて仕方がない、魔王を欺いた力、もし近場で見ればその技術を奪い取れるかもしれない。


「ツバキ、明日夜の8時にここに来てくれ」


少し笑みを浮かべた俺に、ツバキは何が始まるのかと、少し戸惑いから喉を鳴らした。



「ちょっと、待って!!辞めてー!!?」


「この!はな、ひゃぁぁあ!?」


後日、ユウリの言う通り、ツバキと、面白そうだからついてきたラサーナは、豪邸ムー邸の前に来てみると、ゆっくりと扉が開いて中に引き込まれた。

いきなり金髪の幼女に捕まったかと思うと、裸に剥かれた。

抵抗しようにも、体が金縛りにあったみたいに動かず、いたる所をじっくりと眺められた。

これは何という羞恥プレイなのだろうか。

ツバキがユウリを信じれなくなっていると、


「これじゃな」


金髪幼女は、無数にならぶ燕尾服、タキシードの中から2着をツバキに覆いかぶさるように投げつけると、外にそのまま追い出した。

何が何だか分からず、目を点にしていると。


「大丈夫か?」


そこにはぐったりとしたタキシード姿のユウリと、白いドレス姿のカノンがそこにいた。

ツバキが一瞬見惚れてしまうほどカノンのドレス姿はとても素敵で、頬が赤くなる。


「おーい、聞こえてるか?」


「き、聞こえるっす!」


慌てて返事を返すとユウリは小さく溜息を吐いた。


「おい、出来たぞ」


すると、ツバキが放り出された扉から、ラサーナが出てきた。

ラサーナは紫を基調としたドレスを身につけて髪を後ろでまとめて落ち着かせている。

こちらもとても可愛い。


「なあ、ユウリ....何これ?あんまり落ち着かないんだけど」


「その割に似合ってるじゃないか」


「そ、そうか?」


ちょっとだけ照れたように頬を描く。

そんなラサーナの手と、ツバキの手をいきなり握りしめる。

少し戸惑った表情を浮かべる二人。

ユウリは後ろを向くとカノンが背中に抱き付いていることを確認してから、小さく魔法を唱えた。

床に魔法陣が展開、ユウリの足元から黒が溢れ出す。

その光景をにツバキとラサーナは目を見開く。


「行ってきます」


ユウリがリンにそう呟くと、ツバキ達ごと黒が丸め込み一瞬にしてその場から姿形残さず消えてしまった。


「全く、わしは何でも屋じゃないというに....」


ドレスの着付けまでしたリンは、今まで散々ユウキにやらされてきた事に不満の言葉を漏らした。


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