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復讐するため今日も生きていく  作者: ゆづにゃん
第十章学院と戦争と
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第101話戦争二日前

この国....いや、どの国でも同じだろう、魔法使いの扱いというのは。

魔法使い、太古の時代では奇跡使いなどと呼ばれていた。

奇跡、何というか、大きなものに表しすぎている....現代である今から思えば確かにそう思うものも多いだろう。

だが、大量の魔物を一瞬で葬り去るその様は、まさに奇跡、としか言いようがない出来事だったのだろう。

太古の昔では魔法使いはとても貴重なものとして、とても優遇されていた。

そして今現在..も....昔と同じようにとても重宝されていた。

この国、ニス=グリモアにおいても魔法兵は重宝されるものであり、普通の兵隊の枠ではなく、上級兵隊とされどんな死地にも送られず、兵として特殊な訓練を受け日々を過ごす。

つまり魔法兵は切り札.....と、そこまではいかずとも、安易に戦争に出すような真似はしない。

そして今回の戦争は、魔法兵の投入を許可されている、だがそれはあくまでも全てというわけではない。

あくまで過半数だけである。


「....それではだめだ!」


戦争の兵投入率の報告書を見たヤナサ卿は、思いきりこぶしを机に叩きつけた。

玉のような汗を垂らし、怒鳴りつける旦那様のその様子に、お茶を持ってきていたメイドはビクリと驚き髪を揺らした。


「だ、旦那様?大丈夫でしょうか?」


「あ、ああ、いやなんでもないんだ、気にしないでくれ...」


表面上はいたって普通に接しているが、頭の中は戦争のことで頭がいっぱいだった。


(やはりだめだ、あのような作戦じゃ!どう考えても、神頼みの要素が多すぎる....特にあの白髪の少年....あの馬鹿貴族共...甘く見すぎなんだ!)


ヤナサ卿は1802年に起きたギリンソウ橋による戦いで大いに活躍し、特別に貴族に昇格した魔法兵の一家である。

そのため偶然あの場に居合わせた、ヤナサ卿は知っている、あの少年の剣だけではない、魔力のスペックも。


(いくら剣の腕が兵士5000人程度だとしても、それはあくまで剣の腕のみ....もしそれにあの馬鹿げた魔力が加わるとするなら....)


考えるだけでもおぞましい、ゾッと身震いさせながら今後のことを考える。

とうぜん今後とは、この国ではない、愛する家族のことだ。


(もう、この国などどうでもよい!.....私は愛する家族だけを守らせてもらう!...だがどうしたものか...流石に国の魔法兵を使うわけにもいくまい....)


背もたれに体重をかけながら髭を撫でていると、ふとあるものが目に留まった。

それは荒れた書類の中に挟まっていた、一通の手紙。


「エーグル=C=ノーバン?誰だ?...」


手紙の裏には知りもしないその名前と、神秘を表す樹木のハンコが押されていた。


「キヒッ...」


「むっ?」


何かの気配を感じ、ヤナサ卿は窓の外を仰ぎ見るが...なにもない。

ただ、窓から見ることがかなったのは美しい雪の結晶だった。


「もう、そんな季節か....」


                       ♯


ユウキに率直に帰れといわれた魔女は今、用事があるといっていたフィリアナを連れ(泣き脅し)自分の家で料理を作らせていた。


「今日は何のご飯かな、愛弟子よ!」


調子に乗った魔女はキザなポーズをとりながら、机に片足を乗せている。

その机に、こめかみに青筋を浮かばせたフィリアナは乱暴に昼飯を叩きつけた。


「愛弟子っていうんなら!私の用事を優先させてくださいよ!?あれから一時間も粘りやがって!...」


最初ワムルス邸にきた魔女を居留守作戦で無視しようとしたのだが...一時間近くドアを叩かれ、さらには周りに住んでる貴族共に変な噂を流し始める始末。

最終的に魔法でぶっ壊そうとしてきたので....流石の私もそれで折れた。


「で?何の用ですか?魔女さんの行動はいつも突拍子もないですが、あまりにしつこいときは毎回何かありましたし...今回は何が起きましたか?」


目の前でパスタをすすりジト目でこちらをにらむ愛弟子に、魔女は困ったように頬をかいた。


「んーと...実はだな...もうすぐで魔法が解ける」


「魔法?なんのですか?」


「ユウキの....っていえばわかるだろう?...」


苦々しく笑う魔女の顔には余裕などみじんも感じられない、引き攣った笑顔。


「ま、さか...嘘でしょう?...」


魔女の顔を一目見ただけで、嘘ではないと理解したフィリアナはつい、手に持っていたフォークを落としてしまった。

その魔女から出た言葉はあまりに衝撃的で、今の、このユウキがいる生活を根本的に壊してしまいかねない物だ。

フィリアナの額からは静かにつたった汗が流れ落ちる。


「そのまさかさ、正直私も驚いてる...」


「何故今更....それは完全に封印をしたはずでは?...」


これはユウキが死んだ後、なんとか魔女の手によって完全に封印されたはずなのだ...

なのに何故今になって.....そんな疑問が頭に浮かんだが、すぐに答えが浮かんできてしまった。

今と、昔とで、決定的に違う何かを....


「それが、私もよくわかってないんだ....もしかしたら、私の推測だが.....ユウキの体の中に戻ろうとしてるんじゃないか...とな」


「それだけは駄目です!何としても阻止してください!」


珍しくフィリアナは声を荒げ、机の上に身を乗り出す。

その言葉に魔女は静かに首を縦に振り、肯定を返した。


「それは分かってるが....一応理解しておけよ。いずれは返さなくちゃいけないことなんだから....それが、どんなにユウキを苦しめようとも.な...」


そう残酷なことを言っているがその魔女の顔にも元気はない。

本当は魔女だって、愛弟子に傷ついてほしいだなんて思ってないから。


(これじゃあ....敵対した意味がないじゃないですか....)


あの、兄の仲間たちの顔を思い浮かべて、悔し気に奥歯をかみしめる。


「それで、どれくらい持ちそうですか?」


「持って、ひと月かな....」


切り出された時間はたったの一月、たったそれだけの間に、どうしろというんだ。


「それだけの時間じゃあ....」


いや、そもそもな話どうしろというのだろう.....どうすればいいのだろう。

フィリアナには良くわからない、どうすれば()()()()()()が戻らずに済むのだろうか。


「何をすればいいんですか?....」


「そうだな....一人」


「一人?」


「ユウキの仲間の誰か一人に、手伝いを乞うことからだろうな....」


それは、あれだけ熱く敵対宣言をしたフィリアナにとっては酷な話だが、今の言葉を聞いたフィリアナからは嫌だという感情は全く見られないかった。


「分かりました....」


小さな声で言葉を紡ぐと、ユウキに買ってもらった奇麗なコートを羽織り、フードで目までしっかりと隠すと、外に歩き出していった。

その立ち振る舞いは、意地でもユウキを、兄を助けて見せるという誓いであふれ出ていた。


                        ♯


ニス=グリモア学園、南部の学生寮、の隣には特殊な部屋である四人部屋が存在する。

外見はほとんど家と変わらない、二階建ての大きな館である。


「どうしますか?」


「見とく、今のところは」


家の中から出てきたときには既に遅かったようで、何やら喧嘩が始まっているようだ。

だが、真ん中を中心に人だかりが出来てしまい、ここからではよく見ることができない。

仕方なく、軽く跳躍して家の屋根に飛び乗るとそこに腰を下ろした。


(ふーん....なかなか強いな....)


見た感じ、前衛がラサーナで後衛がツバキといった感じだ。

まあ、ほぼラサーナがつぶしているが....


(手...やられたのか...)


右手には力を入れず、左手のみでつぶしていた。


「て、てめぇ、いつの間に!?ぐえッ!...」


「なっ!?武器が...げはっ!?」


さらにすごいのは、相手の武器を盗み取り、無力化、さらには相手に見えない速度での瞬間的な行動だ。

確かにSクラスに入れるわけだ....だからといっても所詮一人、体力にだって限界があるわけだ。

既に息を切らしているラサーナに勝ち目はない。

それによくよく見たら、周りのやつらは野次馬じゃない。

全員グルの敵だ。


「はぁ、...はぁ...ふぅ...やぁッ!」


息を整えたラサーナは、一瞬のうちに相手の懐に潜り込むとそのまま回し蹴りを叩きこんだ。


「ぐぅ......へっ!...」


強烈な打撃音が響くが目の前の男は、ニヤリと笑った。

あの一撃を耐えきったのだろう。


「ちっ、この野郎ー!?ぐあっ!」


そのまま目の前の足を力任せにつかむと、振り上げ地面に叩きつけた。

その時ラサーナの体が跳ね、力なく地面に倒れこんだ。


「ん?おっ?...ポイント増えてるぜ!?」


「ぐあっ!?」


男がラサーナの体に強烈なけりを叩きこむと。

自分の腕時計から音が鳴った、するとそこには増えたポイントが記されていた。


「すげえぞ!こいつ蹴れば蹴るだけ、ポイントを吐きやがる!」


「やべぇ、あいつに全部ポイントとられるぞ!」


そういいながら慌てて男たち、女たちはラサーナの腹を蹴り始めた。

誰も加減をしない一撃一撃はラサーナの体を次々と壊していく、痣が付き、口からは吐血を始める、目は腫れあがり、爪はめくり上がる。

意識が遠のいていく中、朧げな瞳が最後に見たのは自分の腕時計だった。


(このままじゃ....退学か...すまねえ皆..やっぱり俺駄目だったよ...)


「流石に見てられないか....」


そんなラサーナの耳元にある声が響いた。

それは自分が最も恐怖していた人の声だった。

その男は悠然と俺の目の前に現れると、俺の体を担ぎ上げ屋根の上まで投げ飛ばしたのだ。


(え....ええええ!?...)


そんなラサーナを受け取ったのは紅の髪をした少女、あの怖かった人№2カノンだ。

受け取ったカノンは腰をその場に下ろし、ユウリを見て首を縦に振る。


「大丈夫ですか?これで治るはずですから...」


「あ、ありがと...」


手渡されたのは緑の液体の入った瓶。

少し警戒しながら、口につけると一瞬でまず指が治った。

驚愕で口元から瓶を離すと、カノンに注意をされてしまった。


「駄目ですよ、早く飲んで体を治さないと」


そう優しく微笑むカノン、今までは恐怖しか感じなかったが今、この状況ではとても優しく可愛い少女に見えてきていた。


「ああ、わかった...」


瓶の中身を飲み干すと、横目でちらりと先ほどの現場を流し見た。

そこではあの化け物が、自分を散々嬲って着た奴らと対話のような....いやそんな高尚な物じゃあなかった。


「なんだてめえ?あの女の男か?あ?」


「いえいえ、そんなの私にはもったいないですってFランクの私にはね?」


まるであえて自分が弱いかのように告げるユウリにラサーナはただおかしいと疑問を浮かべる。


「ぶっ!?ははは!お前この学院最弱なくせに、この場に入ってきたってのか?こりゃあ傑作だ!」


男どもは笑い出し、女たちもくすくすと笑いだす。

そんな様子が逆におかしいを通り越して哀れに見えてきた、カノンに至っては目が冷めきってしまっている。


「で?どう責任取ってくれるつもりだ?まさか俺らとやりあう気なわけないだろう?」


「いえ?やりますよ代わりに...」


呆けた顔で言った俺が面白かったんだろう、周りのやつらは笑い出すのだ楽しそうに。


「何言ってんだよあいつ!馬鹿じゃねえの!?」


「きっとあの子目が悪いのよ!この数が見えてないんだわ!」


ひとしきり笑いあうと、先ほどからリーダー格の男であるだろう奴が目をぬぐいながら、前に出てきた。


「いやすまん、やるんだよな!...ほら握手だ、戦う前の!」


出された手、その左手を俺は迷いなく手に取った。

すると、いきなり頬を笑ませ俺の手を引っ張ると、右拳の凶悪な一撃が俺の腹に決まった。


「はっ!馬鹿が!」


「うっわ!リーダーえっぐいな!」


「こんな雑魚にまでそんなことする必要ないっしょ!」


面白そうに笑う奴ら、何が面白いのか俺にはよく分からない。

そんな周りのやつらを見て自慢げに手を上げた。


「念には念を入れてってやつだ、さあ皆で潰....え?」


そこで気が付いたのだろう、自分のひん曲がりぐちゃぐちゃな右拳を。


「え!?う、うわああああ!手が、手があ!?」


「あー、これでラサーナは右手をやられたわけね....あんまなめんなよ..」


立ち上がった俺は無造作に右手で泣きわめく目の前の男の頬を殴った。

その一連の動作は誰にも理解が及ばない速度の一撃、ただリーダーが近くの岩に頭から突き刺さったというだけの話。


「ん?あれおかしいな...ポイントはいってないじゃん」


右手を掲げそのポイントを見せつけるようにすると、周りのやつらは驚きのあまり言葉を失った。


「なんでかな?」


そこに書いてあったのは数字ではない、文字だ【Ⅹ】という文字が紛れもなく刻んであった。


「ここに入り奴ら全員つぶせば、ポイント増えるかな?やってみるか」


慈悲もなく嬉々とした顔で一人一人丁寧につぶしていくその様に、助けなど 慈悲などありはしなかった。

この日、魔法学院四大派閥のうちの一つ、ガリー組の一年の部が崩壊し、ニス=魔法学園の防壁には何かが突き刺さったような跡がいくつも残っていたそうだ。


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