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復讐するため今日も生きていく  作者: ゆづにゃん
第十章学院と戦争と
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第99話御前会議

ニス=グリモアに天高くそびえ立つ城、ラマナイト城。

今日はその城の警備は普段の3倍以上の数でガッチリと兵士に囲まれていた。

その理由は貴族、王族で行われる重要な会議がこの城で行われるからだ。


「今から御前会議を行う、皆の者席に着くが良い」


円卓状に並べられた席に4代貴族含む貴族達が座ると、王の玉座に座る男は思い切り手に持っていた杖を地面に突き下ろした。


「今宵集まっていただいたのは、近づいている戦争についてである、スー=クライアル騎士団長よ」


「ははっ!」


呼ばれた男は赤き鎧を纏い、金属音を鳴らしている。

王に一礼をしたのち口を開いた。


「戦争についての説明、それと出兵の話をせよ」


「分かりました王.....今回の戦争についてですが、この場のみにおいて公表させて頂きます、実の所しっかりとした規約がございません、ただしっかりと規約されておりますは戦争の日付、時間につきましては太陽が昇る時、とされております」


「ほう、それはつまり他の規約はされていないと言っているのですかな?クライアル騎士団長よ」


「はい、その通りでございますマウント卿」


質問をしてきたのは4代貴族を引きずり下ろし自分が成り上がろうとしていると噂のマウント卿。

下卑た笑みを浮かべ自分の髭を撫でている、この男。

見た目はボンボンといった風に見られがちだが、それでいて中々の策士だ。

どうすればこの戦いで戦果をあげ、貢献し知名度を上げられるか、その為だけにしっかりと戦争の話に加わってくれている。

ありがたいと言えばありがたいが、邪な所があり手柄欲しさに暴走する可能性があるので危険とも言える。


「詰まる所、戦う場所も決められずただ王の首を取れば勝ちと言うことですな?」


「そうです、そしてもう一つ、勝者に与えられる領土や決めてよい法律も定められておりません」


「おお!なんと!」


貴族たちから驚きの声が上がる。

なにせそれは、国一つを手に入れる事が出来るという事と同じなのだから。

それはこの国に新たな発展をもたらすことだろう。

その事に誰もが感嘆を覚えるが、その時に気づかなかった、その逆もしかり、という事を。


「わかるかな?貴族諸君よ、君達の貢献次第により得られる土地が増えると考えて良い、あの国は立地もよく面積も広い、さらには女、子供、亜人も多く住んでおる......さあ、どれだけ出兵するかな?」


王の甘い誘惑の言葉に、貴族達は次々に手を挙げ、兵士を戦場に投与し始める。


「......わしの所からは私兵を5000人出しましょう!」


「私達からは7000人を!.....」


「私達からはー!」


などと卑しき貴族達から次々と出兵の声が上がる。

そんな中4代貴族の一人ナラヤワ卿が、わざとらしく大きな声で咳を吐くと、周りの貴族達が急に黙り込んだ。

やはり立場が上と言うのは凄く効果のあることであり、敬われることなのだろう。


「出兵など後で募れば良いこと、そのような事より戦術、指揮、立地など把握するべきでは?それにあの男、どのように対処するのですか?」


あの男、つまり敵である隣国の王の事だろう。

確かにあの強さは我が兵士2000分.....いや高く見積もって5000人程度はあるだろう、そうレイとキミヲが言っていた。


(確かレイ殿は我が兵隊を2000人抜き....キミヲ殿も確か同じような結果だった........合わせて4000、その二人を一人で倒した....5000が妥当な所だろうな)


「うむ、ナラヤワ卿の言うことも最もであるが、既に戦術等は決めてある」


王クノースは目配せをクライアルにすると、小さく頷き近くに置いてある地形図を円卓に広げた。


「これは最近作り上げた地形図です」


そこにはしっかりとキリア達が作り上げた国が載っている。

その中心地、そこに一つの駒を置いた。


「予測ですが、相手の国とニス=グリモアの中心地スモール平原での戦いになるでしょう、そこにはあえて他国から応援で呼んだ屈強なる兵士達と我が国の兵士5000人を置きます」


「なっ!?たったそれだけで良いのですか!?」


5000それはニス=グリモアの兵隊、10分の1にも満たない数、たったそれだけの数で相手の国の兵を抑えようというのか。


「いいんですこれで、はっきり言わせて貰えばあの化け物な王が前線を切ってくるとは考えにくい、いくら強くても王が死ねば負けですからね、なのでここには相手の国も兵士を置いてくると予想しています」


「だが相手の国は人民が多いのでしょう?5000人程度では勝てないと思いますが....」


「それは大丈夫です、流石に相手の国の全く鍛えていない出来たばかりの兵士と、私達の兵士では実力が違います、さらにはレイさん、キミヲさんにもここに加わって頂きますので大丈夫かと」


確かにレイとキミヲが着いてくれる=兵4000人、と考えていいのなら、とても良い提案だろう。


「では本体はどこへ?」


「皆さんは知っていますか?戦争中、実の所周りに山がある方が有利に思えるでしょうが、それはあくまで守りの最中のみ、山の上から攻められる場合は有利でもなんでも無くなるのです」


詰まる所山頂から見下ろしざまに魔法を撃ち続けられるのと、下から迎撃するのどちらが強いかと言う話だ。

当然山頂からの方が強い。


「しかしあの山を数時間で登るのは......」


「数時間で登る必要などありません、戦争の始まりは日の出、つまりそれまでは自由に動けます」


「なるほど!今すぐに兵を出むかせ山の上に潜伏させると言うことですな!」


確かに山頂から山の麓の国に向けて魔法を射ち放つのは確かに優位だ、だがそう簡単に行くものだろうか?


「ですが見つかる可能性もあるのでは?」


「安心してください、南側のスナフ川を大幅に迂回して山に入ります、これならば近くの山が邪魔で見つかる心配もないでしょう、そしてこの山には魔導兵器と魔法兵を1万人」


見つからなければ......どうなんだろうかこの作戦は。

いまいち決定打に欠けているような気がしてならない、最終的にはあの化け物の対処も数でどうにかなる、と言った感じだ。


「残りの兵はどうするのですか?」


そんなヤナサ卿の心配事も知らず、話は着々と進んで行く。


「前と後ろを囲みましたが、横がガラ空き、なので横から攻めてくることを考えて、出兵していただいた兵を半数に分け、レイ、キミヲ部隊の両側を剃るように相手の国まで進行させます」


「そうすれば異常事態を発見してもすぐに報告、なおかつ抜けてきた兵を一方的に潰すことができるというわけか」


「念には念を押し、地雷魔法を至る所に設置いたします、そしてもし、万が一の場合は死霊魔法による死魔竜を前線に送り出します」


死魔竜、死した竜を強制的に蘇らせたゾンビのようなもの。

ただ通常の生きている竜より凶暴だ、代わりに防御力が皆無。

ただそれでも凶悪でAランク冒険者以上でなくては勝てない。


「な、なんと!これは完全勝利は決まったものではないか!!」


4代貴族の一人ワンサーがそう言えば周りの者もただ笑いあった。

これは勝った、余裕だ、我々に逆らうべきではないのだ、とまあ勝ったという雰囲気が場を包み込む。


「この作戦に異論がある者はおるか?」


「.........」


王の言葉に笑いを抑える。

特に何も無いようで、ただ貴族達は顔を見合わせるだけ、だがその中異論がある者がいた。


「異論ならばあります!父上!」


王の玉座の右隣、少し離れた位置にある玉座に座っているのは跳ねた癖毛が特徴の黒髪の少年だった。


「なんだロカ、申してみよ」


口を開く許可をいただいた第一王子ロカは、黙って王の前に立ち上がった。


「大変恐縮ながら、指揮を私にとらせてては貰えないでしょうか」


その発言に周囲がぞっと、ざわめき出す。

なにせ今回の戦争は勝ち戦、勝つと分かっている戦の指揮官など、皆喉から手が出るほどやりたいに決まっている。

その役を、王子自らが買って出たのだ、流石の貴族達も異論を唱えることはできない。


「何故だ?指揮をとるというのは戦争に赴くという事、たしかにロカは体を鍛え、剣術も学んでいる、だからと言ってその年で.....」


「行かせて下さい!父上!」


熱い熱意の含んだ瞳で王の瞳を真っ直ぐと見つめる。

すると、王子の玉座のさらに右隣、玉座に座っていた姫も立ち上がった。


「私からもお願いいたします!父上!」


「何故アンジュまで、兄上が戦争に行きたがっているのだぞ?」


妹アンジュは兄のことを慕っていたはず、それなのに万が一にも死ぬ可能性がある戦場に送り出す事を認めるわけがないのだが。


「兄は私と同じ想いがあります!それは一目惚れのようで......」


その発言にギョッとした王は、言葉を手で静止させ、自分の言葉を上乗せさせた。


「いきなり何を口走っておる、なんの事か知らぬが親としては許可はできない」


否定の言葉を口にすると、悔しげに歯嚙みをする。

それを見ても行かせる事は出来ない。


「それなら、俺が面倒を見よう」


そんな王子ロカに救いの手が伸ばされた。

それは、部屋の隅の黒い影に隠れたロン毛の青年だった。


「なっ、キミヲさん、いつからそこに?」


「ずっといた、貴様らが気づかなかっただけだ、それよりロカ様、本当に戦争に行く覚悟がありますか?」


「あります!」


「そうですか、なら私達代2部隊の指揮をお願いします」


そうやってロカの肩を持つ、すると王は怒りをあらわにし、玉座を思いきり殴りつけた。


「何を言っているキミヲ!貴様我が息子を最前線の過酷な場に送り出すというのか!?」


「何を言っていますか、貴方達が最も安全と言ったんだ、文句はありますまい」


そう、確かに言ってしまった、さすがに自分で言った発言を撤回などと恥ずかしい真似はできない。


「ぐっ、だがな」


それでも引き下がらず止めようとする意志、たしかに子供思いの親の行動に見えるが、ただ跡取りに困るという思いがキミヲの目にはすすけて見えていた。


「話はおしまいにしませんか?早く兵を出さなくては戦争日までに仕込みが間に合いませんよ?」


「ぐっ......分かった!だがなキミヲ!貴様いくら他国からの応援であるとしても、我が息子が殺されたとしたら貴様を極刑に処すからな!」


「ご勝手にどうぞ」


興味なさげに、一人闇にまみえるように暗い暗い明かりのついていない廊下を歩いていった。



「ふむふむ、なるほどな、つまりユウキをスモール平原に送り出し地獄を見せれば良いわけか」


タワー3階、その部屋の机の上に置かれている水晶玉には御前会議の様子と、声、がくっきりと映っていた。


「ふーむ、にしても盗聴され、覗かれているとは知らずに、なんとも馬鹿丸出しじゃな」


この盗聴器はユウキが呼ばれ城内に入った時につけてきたものだ。

まあ、つけたと言っても一つの部屋のみにだが、まさか本当に会議場所だとは思ってはいなかったが.....

まあ、これで楽に勝てるじゃろう。


「おい、竜部隊隊長さん、3日後あの山爆撃してこい」


「誰が隊長だぁ!?僕は君たちに加勢する気はないと言っているだろう!!」


後ろにいたのは紅竜の足に紐でぐるぐる巻きにされている金髪の男の姿。

この男はユウキとヒースミルに散々な目にあわされた、アビスナイツ第1席【栄光】のマトナだ。


「うるさいぞ奴隷、貴様散々今まで偉そうにしてきたんだ、国民様の為に頑張ってもよかろう?それともユウキとヒースミルに説得を頼んでも良いが?」


「ぐぅぅぅぅ......」


唸りならが思い出すのは強烈な悪意、あの歪んで嘲笑うようなユウキとヒースミルの顔が夢の中にまで出てくる始末。

今でも瞼を閉じれば浮かんでくる。

二度とあんな目にあうのはごめんだ。

憑き物が落ちたように、好青年の顔になると。

笑顔で隠してあったナイフを使い縄をほどき、立ち上がる。

そして手で顔を隠すと。


「ふふっ!僕が国民の為に動かないわけないじゃないか!」


驚異のドヤ顔、なんというか図太い精神をしている。


「最初からそうしておれば良いのだ.....さてその赤竜と貴様は今日からコンビを組んでもらう」


『なっ!?聞いてませんよ!リン様』


『うるさい奴じゃな、また調教されたいのか?』


『誠心誠意、真心こめて頑張らせて頂きます!』


忠犬のような格好で瞳をギラつかせている。

その隣にはドヤ顔のマトナ、なんだかんだ言っていいコンビかも知れない。


「てかさ、リンさん、聞きたいんだけど.....僕何するの?」


「言ったじゃろう?竜部隊隊長だって」


「いや、だからまずその事すらなんなのか分かってないんだけどね」


「ほれ、見てみろ」


リンが親指で指したのは窓、なんのことやらさっぱりなマトナは窓の外を覗いて、心が浮ついた。

そこでは冒険者たちが赤竜になり自由自在に飛び回っているではないか。

しかも赤竜にのり飛行している状態での多銃身回転式機関砲(ガトリング)の練習、さらには空爆の練習まで.......てか、何処だこの平原。

この窓の位置からは作り中の国が見えるはずなのに、何故こんな平原が見えて?


「ここはな、私が作り上げた異空間じゃよ」


隣に赤竜を連れてリンが歩いてきた。

っては?異空間?嘘だろ、いやおかしいだろ。


「なっ!?なんですかそれ!魔王だからってなんでもありじゃないんですよ!?」


「出来たんだから仕方ないだろう?」


「そういう問題じゃ......もういいや....」


もうこの時点でマトナはこの規格外ばかりな集団に突っ込むのをやめた。


「でだ、この化け物竜騎士団の指揮官をマトナ!貴様に任命する!因みに拒否権はない」


横暴だ、普段のマトナなら言えた言葉、だがあんな素晴らしい力の景色を見せられて、断る方がおこがましい。

そんな感情がマトナの中に埋め込まれていた。


「へ、へへへ、願っても無い申し出だね」


その言葉はつまり、この時点でマトナはこの国の序列に組み込まれた。

そして目の前の幼女は上司へと変わる。


「そうかじゃあ、早速命令じゃ」


「はっ!」


「3日後朝日が昇った瞬間に、あの山空爆してこい」


悪辣な笑みを浮かべた上司に、こちらも答えるように笑みを浮かべた。


「竜騎士団指揮官マトナ!この命に代えても成功させてみせます!」



何時間戦っただろうか、もう既に空は暗く染まっている。

獣人の国が復興されいくら暇だからといってもバルザにも多少の予定があった、だがそれでもこの異様な戦いから目を離すことができなかった。


「これで、何体.......ッ!!」


全く傷ついていないが正義は疲れきった体に鞭を打ち咄嗟に飛び上がった、すぐ足元を爆炎、氷輪が吹き荒れる。

燃え尽き、凍りついた地面に足を下ろすと、すぐに呼吸を始めた。


「あー、ったくよ、これで何円くらい失った?」


霧の中から、忽然と勇者は現れると首を回す。


「日本円で300万くらいかしら」


隣では魔力回復ポーションを飲みながら告げるマーリンがいた。


「うげっ、しかもこの服の代金も入ってるんだろ?」


「ええ、そうよ」


「くっそ、服いれないようにしようかな」


「そんな事したらあなた裸よ?」


「それもそうか.....」


そうやって談笑し余裕を見せている。

だが、傍目に見てたバルザには狂気としか感じられなかった。


(なんで?嘘だろ.....あいつ、既に10回は死んでるはずだぞ)


一度目は首を切り落とされて、二度目は灰にされ、三度目は真っ二つ、四度目は腹に穴、五度目..........

そう続いて何度も、何度も死んでいるはずなのにあの勇者はけろっと生き返る、何度も、何度も。


(まさかとは思うが....この勇者は不死....なのか?.....)


そう考えたが咄嗟に首を振った。

そんな生物もスキルも存在するわけがない。


(冷静に考えるんだ.....あいつはさっき"円"と言った....円ってなんだ?.....)


この異世界では金貨などの貨幣による枚数が値段であり、円という異世界の通貨の単位など分かるわけがない、だからこそ勇者はあえて円と言うのだ。


「さーて、どうかな?そろそろ殺せそう?」


「そろそろいいかもね、パラサイス解除」


その瞬間、正義の足元に広がる魔法陣が消えた。

この魔法陣は相手の行動を縛り、体力を蝕むそんな単純な魔法だが勇者、が延々に攻撃してくる中では最大の効果を発揮する。


「うぐっ.....」


正義弱ったように胸を押さえ膝をつく、額に浮かんだ玉のような汗が地面に流れ落ちる。


「どうだ?なあ、自分の無力さが分かったか?ーこれで終わりだな」


正義をゴミのように見て、邪険エクスカリバーを振り上げ、られなかった。

そこには自分の腕が無く、腕の先と邪険エクスカリバーが地面に落ちてしまっていた。


「馬鹿だな、こんなものすぐにもと通りになる」


「く、くく!この程度で僕を倒せると......?何度も言っているだろう?」


立ち上がった正義は額に汗を垂らしながらも言葉を紡ぐ。

疲れきった右腕をあげ顔に当たると、すっと手を下に滑らせた。


「不愉快だ」


するとそこには黒と白の仮面をつけ、白き衣を纏った正義がいた。

そこから感じられるのは、ただ威圧感、それと無関心という感情のみ。

この男からは先程のような絶対的な強さが感じられない。


「なんだよそ.....れ...」


そう紡ぎ、瞬きしたそのコンマ数秒、自分の全神経の感覚がなくなり、目を開ければそこに広がっていたのは夜空だった。


「ぐぅぅぅ、痛いなちくしょう!何度やってもおな.....!」


すぐに体を再構築され元に戻る、生えてきた足で立ち上がろうとすれば、また顔面を潰された。

何度も、何度も、何度も、何度も.....ただ繰り返される、作業のように永遠と顔が潰される。

その続く永遠の中、顔から広がる血がただひたすらに草木を汚し続けた。


(やばいわね.....今回は諦めましょう)


今すぐに逃げ出そうと魔法陣を右の掌に発生させたその時、正義の仮面越しの目がマーリンを捉えていた。


「そう、簡単に魔法をつかわせない、よ!」


「がッぁぁあ!?」


一瞬で間合いを詰めた正義の足がマーリンの腹にめり込む、嫌な音がたち盛大に吹き飛んだ。

体がねじ切れんばかりの痛みがマーリンを襲う中、ようやく勇者から痛みが消え、元に戻ることが出来た。


「ペア=アポート!」


勇者が地面に手をつき、魔法陣を浮かべるとマーリンと勇者のみを包み込んだ。

冷静に正義が勇者に槍を投擲したが......

既にそこには何もなかった。


「逃げられたな......大丈夫か?」


バルザが慌てて駆け寄ると、そっと右手をバルザに向けた。


「僕をこの程度で心配するものじゃないよ、僕にとってあんなのただのゴミにも劣るチリ以下の存在だからね、ただ少し時間をかけ過ぎたようだ」


夜空を見上げ、仮面を外すと白く伸びる白衣が光の粒子となって消える。

仮面が取れたその顔からは感情が読み取れなかった。


「今日は一度帰らせてもらうよ、また今度出会おう同士よ」


ただ、それだけ告げ異形の翼をはためかせた正義は夜空に飛び上がっていった。

その後正義はしばらく顔を出すことはなかった、ただ言えるのは、俺はあの日の異常なほど長い戦いを忘れる事はないだろう。


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