仲間の実力
◇
「クレア、ですか?」
ノックに気付いた寝起きのルークが答える。「はい。こちらの方へ遊びに来させていただいたと思うんですけれど…」
「ええ、さっきまではここにいたんですけど…迷子かな?」
さすがに迷子なんてことはないだろう。だがそれ以外に何があるというのか。
「迷子じゃないとは思うんですけど……」
「なになに、何があったの?」
俺も起こされた。眠い。辛い。もっと寝たい…
「実はクレアがまだ帰ってきてなくて…」
「あー、なるほど。クレアならきっと帰ってきますよぉ、強い子ですよあの子は」
頭を右手でボリボリかきながら適当に答える。
「本当に帰ってきてないんです…村中を探したんですけど…」
その言葉に返事を返そうとしたその時だった。
「まって!誰かが窓の外から覗いてる!」
驚いたようなユウハの声に、一同はバッと窓の方を見た。
すると、黒い影のようなものが走って逃げていくのが見えた。
「追え!!」
ルークの声に、一斉に全員が外へ出て走り出す。黒い影は森の方へと走っていく。
そのまま追おうとした時だった。後ろから「待てい!!」という声が聞こえた。
「いいのか?そのまま追って。俺たちはこれから村を焼きに行こうと思ってたんだが」
そこには見知らぬ黒いマントを羽織った男が十数人立っていた。
「…誰だ?お前ら」
ルークが尋ねる。見知らぬ男達はニヤニヤと笑いながら答える。
「勇者討伐を頼まれた殺し屋軍団、って所かなぁ?…知ってるんだぜ?神速スキル、使えないんだろう?」
「な、なんでそれを!?」
これには流石に動揺する。俺たちと、あの盗人しか知らないはずなのだが…
「はっ、まあいい。ほら、早くいかねぇと子供の命が危ねぇんじゃねぇのかい?さぁどーするよ、『元』勇者さんたちよぉ!」
全くタチの悪い奴等だなぁ。はぁ、とため息をつく。
「…んじゃ、2人で頼んだわ」
「おーけー、任せとけ」
ルークが親指を立て、ユウハはこくりと頷く。
それを見て俺は森の中へと駆ける。
「おいおい〜、『元』勇者抜きのお二人さんだけで大丈夫なのぉ〜?」
ヒヒヒ、と十数人が笑いながら喋りかけてくる。
「はぁ…俺たちも落ちたものだな」
本当に落胆したような素振りを見せながら、ルークは背中にかけた弓をスッと取り出す。
「ーーー何秒もつかな?楽しみにしてるよ、黒マント軍団さん」