男の闘い
田端でバタバタ。最近気に入ってるダジャレです。
サーっと、2人の間に風が通る。ごくり、と唾を飲む間もない。
『決闘、スタートです』
天の声が聞こえたとともに、「てやぁぁぁ!!」と少年が突っ走ってくる。
俺は剣を抜かずにそのまま待ち受ける。そして少年の剣が正面からゆっくりと降り下ろされーーー
バシィ!
「うぁ痛ぇ!!」
え?
ルークとユウハが何があったの、とキョトンとしている。そして一撃を入れた少年本人もキョトン、としていた。
「…おいおい!思ってたより早えぇじゃねーかよ!!普通お前くらいの年齢だったらもっと遅せぇだろ!ったく、空気読めねぇな!」
シーン。ここまでの静寂は人生でそう経験できるものではないと思う。
…というか、誰が好き好んで決闘中に空気を読むのだろうか…
「まあいいや、もう分かった。次はもう大丈夫だ!」
よっしゃこーい!といった感じでドスリと構える。少年の眉がぴくりと動く。
「あんまり……なめてんじゃねー!!」
そう言いながら一撃目より斜めから降り下ろされた竹刀は、俺の頭をガツンと言わせる
ーーはずだった。
当たるはずだった竹刀は、パスッと床に落ちた。あまりにも一瞬の出来事だった。
竹刀が当たる直前、右足を180度回転させて体を回転させ、上から右手を少年の手首にストン、と落としたのだ。
「ほら、竹刀落としたぞ〜」
そういって俺はヒョイと竹刀を拾い上げ、少年に渡す。
「ほら、当ててみな。 次はここに」
俺は前髪をあげてトントン、と額を人差し指でつつく。
「…僕も舐められたものだね」
少年の目つきが変わる。何か来る、ということがすぐに分かった。
「今、僕ができる最高のスキルで相手させてもらうよ」
キィィィン、という音と共に竹刀が黄色に光り始める。
「僕のとっておき、食らえぇぇえ!!」
光る竹刀と共に走りこんできた少年に、思わず剣を抜いてしまう。
そして竹刀は、頭上から降りかかってくるーーと同時に、空中で2つに分裂した。
「なっ!?」
「これで…終わりだぁぁぁあ!!」
少年は分裂した竹刀を空いていた方の手で取り、迷いなく一気に振り下ろした。
ズドン、という鈍い音がした。この時少年は確かな感覚を得ていた。勝った、と。だが。
「『紫』スキルーーー“リフレクター”」
確かにあったはずの感覚が、スッと消える。
そして、少年の頭に剣をポン、と乗せた。
「はい、俺の勝ち!」
少年はその場にヘナヘナ、としゃがみ込んでしまった。勝負有りだ。
「いやー、危なかったよーまさかその年でスキルが使えるとはね」
「……最後のあれ、なに」
少年は下を向きながら質問する。
「あぁ、あれはリフレクターってスキルさ。ある程度予測できていて、ある程度の衝撃なら吸収しちまうのさ」
そんなのチートじゃん、と少年は少し笑いながら言った。そして少年は大の字にバタンと倒れこむ。
「やっぱ、勇者は勇者なんだなぁ」
ボソッと、少年は呟いた。