新天地
宿を出た「元」勇者一行は、ひと気のない村を探して歩き始める。
ーー説明をしておくと、この世界では、モンスターなどは存在しない。相手はただ「人」のみ。戦う時は「決闘」として勝負をどちらかが申し込んで始まる。負けても死ぬということは無い。定期的に色々な場所で大会などもやっており、優勝者には賞金やアイテムが贈呈される。
決闘をせずに戦うこともできるが、ほぼ行われることは無い。決闘をせずに戦い、殺された方はーーこの世界での「死」が待っている。
ここは現実世界と同じようだ。たまに通り魔などの事件も起こる。
そういう犯罪者たちを次々と撃退したことから、いつのまにかアラン達は「勇者パーティー」と呼ばれるようになっていた。
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「お、あの村なんていいんじゃないのか?」
ルークがあっち、と指をさした。
そこには滝が流れており、木造の家が滝を囲むように並んでいる。ここは森の中なので通行人が通るということも少ないだろう。
「いい感じだね。とりあえず寄ってみる?」
そういってユウハは先頭に立ち、早歩きでずんずんと進んでいく。
村に着くと、和やかな雰囲気の村だった。時間がゆっくりと進んでいる感じだ。
「おぉ…いいじゃん」
俺はぽそっと呟いた。
「とりあえず住民の人に余った家がないか聞いてみよう」
ユウハはそう言うと向こうに歩いて行き、早速女の人に話しかけた。
ユウハがこちらを振り向いてokマークを腕で作ると、俺たちはユウハの所へ向かった。
ーーここから新たなスタートが始まるんだ。
そう考えると、スキルを盗られ悔しいはずの俺はゾクゾクと心から湧き出てくる期待から高揚感を抑えきれなくなっていた。