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リリシーナ王女殿下おっぱい爆発事件  作者: 粟生木 志伸
第五章 おっぱい暴走編
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第4話 王との謁見 その4

 何が聞きたい、か……。謁見を取り消しても、あの襲撃があった。だから、私が色々聞いてくると踏んで、この場を改めて設けたようだ。その内容は、もちろんシカルアヒダについてだろう。あと、それに伴って、今後の対応についての指示。これも、話の後にあるのかもしれない。


 やれやれ。呑気にと思ったが、そうではなかったかもね。なら、その呑気と言うのも、指示もあれば訂正しようじゃないか。それを出すためには、対策なりその方向性なりを、粗方であっても決めていなければしない。父様たちだったら、そのはずだからね。


 しかし、私に対して説明をする気だったというのは有り難い。この言い方じゃあ、色々と答えてくれそうだ。ああ、そうか。初めからそうつもりだから、ステライと爺だけしかいないのか。


 機密に関する事、特種と禁種に触れても、黙っていれば問題ない立場の者、それに限っている。先生と同様。その先生も、だから何も言われず、簡単に同席を許されたっぽいね。


 ただ、国王の父様の親友で、王女である私の先生。そして、救国の英雄たるこの人と、あの二人は事情が違う。ステライのジョーテッペ家、爺のサイリ家は、母様のヴァイン家と同じくこの国の建国時から続く名家。勿論、王家しか知らない秘密はある。だけど、それとは別に色々と秘密を共有している間柄なのだ。よって、こういう立場になっている。


 私の事情を知らない父様が、シビアナに同席を認めたのも、そうなるからかな? こいつは元ヴァイン家だ。立場的にはステライ達と似たようなもの。まあ、あくまで似たようなものだけど。ちょっとややこしいんだよね、その立場が。貴族の出じゃないが、母様の養女だったりするから。私は全然気にならないんだけどさ。 


 しかし、どうであれ今回の襲撃の件。シビアナには詳しい事情を、絶対に知っておいてもらう。同席は不可欠。間違いなく必須事項だ。だから、先生が言って駄目なら、私からも言って頼んでいた。


 まあ、それはそれとして。元々の謁見が、やっぱりちょっと気になる。一体、何が理由でササレクタに私を呼んでくるよう頼んだんだろうね? しかも、早朝だよ? 今にして思えば、それは急ぎの用だったからじゃなかろうか。


 大体にして、何故ササレクタ? 本来なら、あいつではなく、私の侍従官であるシトエスカ達に伝えるべきだったろうに。うーん。まあでも……。あいつの言い様だと、直接言われたっぽい。偶然会って、それでついでに頼まれたって感じだったのかねえ。多分、もう起きてただろうし。


 父様って、どんなに寝るのが遅くなっても、酔っていても、決まった時間に目が覚める。それがあのくらいのはずだから。殆ど寝てなくても、それで良いんだと。全く、年なんて関係なしで元気な人だよ。


 まあ、この年代の人間は、父様に限らずそういうのが多い。先生は勿論、ステライや父様の側近たち。それから、ヒミンツ。他にも色々。ある種、化け物染みた者たちばかりだ。


 そして、更にその上に老獪なのがいる。クロウガル爺とミストランテのお婆だ。この二人が、その頂点に君臨しているといった感じか。


「どうした? 早く言ってみろ」


 父様が急かす。


「あ、はい。分かりました」


 さて、何を聞くか。まあ、それは決まっているが。


「父様。先生から聞いたものもあるのですが、改めて聞きます」


 一応、牽制。こっちも予め情報を得ていると伝えた。すると、父様の視線が隣にずれる。


「む……。話したのか、シドー?」

「機密に抵触せん程度でな」

「そうか……」


 呟く父様に、これといった変化はないように見受けられる。効いてないかな? どうだろ? 妙な言い逃れとかされたくないんだけど。まあ、話を続けよう。


「父様。私が聞きたい事は、一言で済みます」


 移った視線が戻る。それを見据えて言った。


「全てです。全てを知りたいのです。どんな機密に関わろうが、関係ありません」


 無論、聞きたいのはこの国にある情報全部だ。一つも漏らさず知っておきたい。しかし、王女としての立場には限界がある。見れるものは、間違いなく少なくなるだろう。けれど、これは承知済み。それでも、全てと言っておいた。少しでも多くの情報が得られるように、大きく出る。


「ですから、父様が話してくれるものだけではなく。月鏡院の『封印殿』にある、該当機密文書の全閲覧許可を、私は要請します」


 爺、ステライ、先生、シビアナ。同席者を絞っても限度があるだろう。特種、禁種が関係しているんだ。ここで話せないものは絶対にある。多分、トゥアール王国とシカルアヒダ王国の秘密とかね。


 だから、元々このつもり。ただ、こんな形で聞く事になるとは思ってなかった。執務室ではなく、謁見の間で行われると思ってたから。そうなると、他にも父様の側近がいたはずだ。聞けることはあるが、もっと限定されていただろう。だったら、手っ取り早く封印殿で読んだ方が良い。そう考えていた。


 この封印殿は、月鏡院内にある機密の保管庫だ。関係のない人間に知られぬよう厳重に隠されている。その中には書物だけでなく、それに類するもの、例えば石版や石碑等もある。


 まあ、これも父様の許可が出なければ、そもそも無理な話だけど。だが、雰囲気は悪くない。何点かは読ませてもらえると見た。


「それから、奴らの情報は、可能な限り関係各署へ開示することを進言します」


 これは、私から言うまでもなく、なんだろうだけど。でも、ちゃんと伝えておかないとね。


「…………」


 腕を組んだ父様が、無言で睨んでくる。さあ、どう答える? 閲覧はどこまで許す? そう思っていると、再び父様の視線が横にずれる。


「シドー。リリシーナには何を話した?」

「あいつらの身体的特徴――、あとは、その能力。潜水の事や水弾きのあれだ」

「ああ、あれか」

「これは、研究所に来たシヴァルイネ、オウサ、キルサ。後はイージャンもだな」

「そうか」

「うむ。ああ、それから、あいつらは襲撃の状況も知っているからな」


 これを聞いて、父様の眉間に少し皺が寄った。


「口止めは?」

「している」

「分かった。なら、良い」


 そう言うと、湯呑みを手に取り、ゆっくりとお茶を飲み始める。おい、何してんだ。早くしろ。父様は、一口だけ飲むと、湯呑を卓の上に置いた。そして、ようやく視線が私に戻る。


「リリシーナ」

「はい」

「面倒くさいわ。閲覧許可は出さぬ。ここで聞くだけにしろ」

「えええー……」


 面倒くさいって、あんた……。溜めた挙句に、出る言葉がそれ? まあ確かに、色々とその要素はありますけど……。


 まず、月鏡院の長であるミストランテへ、事前に話を通す。それで日程を決めたりする。あと、知りたい情報は、王族しか入れない所にある。だから、父様が一人で、その該当する機密を選別しなけれなばならない。


 あそこに保管されている文書って多分相当あるはず。その中から見つけるだけも、結構時間が掛かるとは思う。でも、だからと言ってさあ。そんな理由はなくない? こっちは真面目に話をしているんだよ? 生死にだって関わる事だ。


「父様……」


 不平不満がたっぷり籠った、非難の目を向ける。


「何も、教えんとは言っていない。ここで聞けと言っているだろう? それで、問題なければ教えてやる」

「でも、禁種や特種が関わっているんでしょう? だったら、ここで話せないものもあるんじゃないですか? 私は、全部、知りたいんです」


 だから、封・印・殿! 封・印・殿!


「ふん。別に、お前が全てを知る必要はないであろうが」


 む。何その言い方? 確かにその通りだけど、若干イラッとするな。


「リリシーナ」

「何ですか?」

「今回の件。何処までやるべきだと考える? まあ、落としどころだな」

「え? 落としどころ?」

「そうだ」


 何だよ、いきなり。まあいい、答えようか。父様たちが、どうするつもりか分かる。ふーむ……。やる事は絶対にやるから、妥協点はそれより先……。となると、まず――。


「そうですね……。喧嘩を売ってきたんです。取り敢えず、シカルアヒダには、それ相応の報いを受けさせるって事じゃないですか?」


 これは、絶対にやる。


「その報いは?」

「え? えーと――」


 元を断てば、いいのだろうから――。


「襲われたユーノ王女も理由にして、この襲撃を企んだ首謀者を叩き潰す。ですか?」

「そうだ」


 父様が頷いて肯定する。やっぱり、そういう感じにするつもりか。しかし、何とも一方的な落としどころですこと。


 ただ、この先どう転ぶか分からないが、事が上手く終わった場合。ユーノ王女と相談して、今後の事を色々と決めるはず。だから、真の落としどころは、その時決まるんだろうけどね。


「首謀者を叩き潰す。トゥアール王国の王女として、やるべき事も当然これになる。国として動くわけだからな。お前は、そのために必要な情報だけ、知っておれば良い。違うか?」


 うーん……。


「まあ、そうですけどお……」


 何だか、やばくないか? 雲行きが怪しい。色々と聞ける気配じゃなくなってきたような。逆に、物凄く限定された話しか、聞けそうにない雰囲気さえある。


 シカルアヒダとトゥアールの秘密とかは、まず無理じゃないの? 叩き潰すのに、直接的な関係がない気がする。


「その一つ目は、シカルアヒダの現在の内情だな。誰が襲ってきたのか。何故、襲ってきたのか。何故、この国に宣戦を布告するような真似をしたのか。調査中ではあるが、お前も知る必要がある」


 あれ? それはいいんだ。だったら、聞けそうかな? しかし、この言い様。襲撃の理由は、父様たちもまだ知らないようだ。宣戦布告については、あの状況で聞こえていたのか分からない。だが、聞こえてなくても、月鏡院から報告があっただろう。それで襲撃の状況も、大方把握しているか。


「まあ、その内情は直接聞けば良い。まだ未定だが、シカルアヒダを王宮に迎え、会談を執り行う事になる。お前も出席したければそうしろ」


 つまり、これは知っても良い情報だが、今ではなくその時にしろと。父様たちもよく知らないようだし、そうなるよね。


 ふむ……。案外この時に、うちとの関係とかも分かるのかな? もしかすると、そうかも。あと、どうしてあんな異形の人間がいるのか。その理由や首謀者も、判明するかもしれないよね。よし、ちゃんと出ようか。


「分かりました」


 頷いて答える。けど、首謀者ってホント誰なんだろうね? 彼の国の権力者である事は確かかな? 今回の件、向こうの騎士団が関わっていたようだから。


 つまり、彼女は権力闘争でもしているんだろう。しかし、形勢は不利。だから、旧知であった先生に助力を求め、この国に来た。と、まあこう考えたいのだが――。


 色々と不可解な点があって、素直にそう考えられない。何故、ユーノ王女だけを狙わず、この国も敵に回すような真似をしたのか、とかさ。先生を巻き込み、正式にではないけど宣戦布告までしている。


 しかも、その宣戦布告は、襲撃が失敗した後。それにも拘らずしてるからね。隠そうともしない。つまり、以前から、うちとやる気だったって事だ。その用意をしてきたのだろう。


 しかし、そこまでする意味ってあったんだろうか? ないと思うんだけどなあ。敵を無駄に増やしていっているよね? やり方なら他にもあっただろうに。


 怨恨だとしても、ユーノ王女と私たち、別々でやった方が良い気がする。でも、あの白い仮面の雰囲気は、むしろ――。


「二つ目は、あいつらの戦力やその能力だ」


 言われて自問から戻る。うん、当然だね。じゃあ、三つ目は何だろう?


「そして、余が、お前に教えてやるのは、これになる」


 は? 私は、今のを聞いて気付いた。おい……。まさか……。


「えっと……。もしかして、それだけですか?」

「そうだ。さあ、聞け」


 父様は、そう言うと、腕を組んでふんぞり返る。


「…………」


 何で、そんなに偉そうなんだ? 呆れて言葉も出ない。何が聞きたいとか言ってさ。もう話すの決まってんじゃん。これしか教える気なかったんだろ? どうやら、改めて謁見の場を設けたのは、色々と教えてくれるためではなく、予め決めていたものを伝えるだけだった模様。アホか。だったら、初めからそう言えっての。


 私は、そのまま黙ってステライとクロウガルを順番に見た。二人ともお茶を飲みながら、すまし顔ですっとぼけ。視線も、一向に合わせようとしない。おい、こっち見ろ。――ちっ。これは、ぐるだな。間違いないわ。三人で相談して決めたんだ。


 はあ、もう最悪。結局、閲覧許可も出ず、聞けることも先生のと被る。新しい情報はあっても、知りたい情報は殆ど期待できそうもない。一番嫌な形となってしまった。


 しかも、こっちからの質問形式だ。これじゃあ、詳細も分からない。口頭では、説明が不足となりがちになる。これもあるから、開示の要請をしたのに。ったく……。ホントに自分で調べたろかい。


 こうなってしまうと、頼みの綱はシビアナなんだが――。話す事を決めているのなら、それ以外を聞ける可能性は薄い。誰であろうともね。まあ、それでもってのがある。後で、こいつに振ってみようか。色々と聞き出してくれることを願おう。


 さて、じゃあどうするか? 珊瑚頭の能力は、一応先生に聞いたからな。取り敢えず、別の事を――。あ、そうだ。戦力の意味合いからは、外れるがどうかな? 聞いてみようじゃないか。


「父様。先生が、どうしてあいつ等の事を知っているとか、そう言うのを聞いちゃ駄目ですか?」 


 経緯や素性。これも気になるんだよね。


「駄目だな」


 素気無すげなく即答で返される。こ、このおお~! ムカついてきた。口の中で歯を食いしばる。しかし、こうなると、もう珊瑚頭について聞ける事は思い付けなかった。範囲外だ。ならば、もうあれを聞くしかない。これも駄目とか言ったら、怒るからな。


「じゃあ、あの黒い煙と白い仮面について教えて下さい。何か知ってるんでしょう?」


 先生は両方とも知っている様子だった。なら、父様も知っているはず。トゥアールとシカルアヒダ、両王家の秘密に関わる事なんだろうが、知ったこっちゃない。もし、教えないなら、実力行使も辞さない構えでいく。


「仮面の方は、ササレクタが見てキレかけてましたし。あの反応からすると、過去に間違いなく遭遇しています。だったら、機密として、上げられているはずですよね? なら、その時の詳細をお願いします」


 ここら辺の関係性もよく分からんから、これも知りたい。あいつが出遭ったのは、シカルアヒダの連中なんだろうけど、珊瑚頭とは別らしいからね。初めて見たって言ってたし。だから、しれっと混ぜて言ってみた。


 でも、あいつから聞いた事を、そのままで言うのは止めておく。情報漏洩による追加処分でもされたら堪らん。そうなったら、「姫ちゃんは、本っ当に気が利かないですわね!」とか言って怒られる。まあ、その追加は、まずないだろうけどね。むしろ、その逆。謹慎も、かなり早期で解かれるはず。


 シカルアヒダは、あいつが治める西都に一番近い。色々と対処しなければいけないだろう。ただ、今の西都は、将軍であるササレクタなしでも機能している。だから、父様が指示を出せば、対応は出来るはずだ。無論、あいつが早く帰るのに越した事はない。機能しているとはいえ、いるといないでは、やはり差が出る。


 なら、謹慎処分なんか後回しで、とっとと戻せばいいのだが、父様はそれよりも別の事を優先したのだろう。つまり、戦力の増強。イージャンの空震音叉の体得――至極天使いを増やすことだ。しかも、その考えは、私の話を聞いて更に強くしているはず。


 確かに、これが出来れば非常に大きい。例えば、山麓級重樹の上――山腹級重樹は、近衛騎士総出で囲み、一日掛けて潰す。それくらいの相手だ。しかし、至極天使いになれば、すぐには無理だが最終的には、その山腹級重樹でさえも一人で戦えてしまう。時間も一日掛からない。かなり違ってくる。


 そんなのが増えるんだ。必ず大きな戦力となるだろう。今回の件は流石に急過ぎて無理だろうけど、今後の事を考えれば確かに優先させて然るべき事だ。


「ああ、それから――」


 そうそう。忘れる所だった。白い仮面と黒い煙。これ以外にも不可思議な現象があるかもしれない。可能性はあるよね。これも、付け足しておかないと。


「教えて欲しい事は、他にもあります。白い仮面、黒い煙。これ以外にも、不可思議な事例があれば――」


 ここで不意に口が止まる。言葉にすることで、違和感のような、何か引っ掛かるものがあったからだ。不可思議な事例――。不可思議な事例? 


「どうした、リリシーナ?」


 先生が言う。その顔を見上げた。


「…………」

「おい?」

「…………」

「リリシーナ?」


 もう一度名を呼ばれて、無言で見つめていたと気付く。


「――ああ、いえ……。何でもありません……」


 父様に顔を向け直した。そうだよ……。何で今まで気付かなかった? いや、まあ……。自分の事が最優先だったし、そんな気も起きなかったからか。何より、知っている情報が少なすぎるもんねえ……。


「えーと。他にも不可思議な事例がありますよね? それも教えて下さい」


 気を取り直して伝える。ただ、これは証拠がない憶測だ。だから、あの名は伏せて何かしら情報を握っている風に装っておく。鎌を掛けた。これで、最初の牽制も、無駄にはならなかったな。


 とは言っても、これは元々教えるつもりだった情報の範囲内でのみ有効だ。範囲外なら、すぐに駄目だと言われるだろう。


 けど、こっちから質問しないと、結局何も教えてくれないからね。言っとかないと。ったく、この質問形式は――。もう、ぱぱっと順にそっちから教えてくれればいいのに。


 父様は、一旦先生に視線を移す。それから、その視線を戻して言った。


「ササレクタの分は、あいつの過去に関わる話だ。本人がいようがいまいが、それをべらべらと喋る気はない」


 そういうのは、私も聞く気はないの。その時対峙した連中の情報だけ、教えて欲しいの。


「故に、その詳細は駄目だな」


 ちっ。流石に通じない。いや、これは元々言う気なしか。


「だが、あの白い仮面と黒い煙については、教えてやる。他のも含めてな」


 よし。これは、鎌かけ成功かな? あーいや、これは元々言う気ありってだけか。しかし、やっぱりまだあったんだねえ。やれやれだな……。聞けるのは助かった。だが、それとやり合うかもしれないと思うと、げんなりする。


「まず始めに言っておくが、今から伝える事は、禁種だ。他言は許さぬ」

「はい」

 

 だろうね。


「ああ、それから分かっていると思うが――。イルにも伝えたように、お前が今朝見た事も同様だ。いいな?」

「はい」


 今、承知しました。頷いて返す。さあ、それでは教えてもらいましょうか。あの白い仮面、そして黒い煙の正体を。――ん? 父様が、湯呑に手を伸ばし始めた。


 まーた無駄な溜めをー。いいから、さっさと話せ。答えに一つ見当が付いたんだ。不可思議な事例なら、そうなるのではないか。この仮説が浮かんだ事でね。けど、半信半疑だから、合っているかどうか、早く確かめたいの。


 不可思議なもの全てが全て、そうだと結論付けるつもりはない。それは、些か短絡的過ぎる。自分が知らないだけで、ちゃんとした理屈があるものは、いくらでもあるのだ。


 後でそれを知って、「ああ、なるほどねー。そうなってるんだー」って感心したことは今まで何度もあったし。お風呂のお湯が、そんな感じかな? まあ、突き詰めるとまだ分からないが、どうしてあんな形をしたかまどになっているのかは分かったからね。お湯の動きを、利用できるようにしている。


 しかし、だからと言って、その可能性を全く考慮しないってのも駄目だろう。除外をするのには早過ぎる。情報をもっと集めて、否定できる根拠を得てそれからすべきだ。だが、現状ではそれが出来ない。そして、思えない。むしろ、肯定寄りだと思っている。


 私は、もう一度先生を仰ぎ見た。はあ……、道理で知っているわけだよ。いや、もちろん違う可能性もあるが……。


 あの白い仮面、そして黒い煙の正体――。あれは、神の悪戯の可能性がある。

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