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リリシーナ王女殿下おっぱい爆発事件  作者: 粟生木 志伸
第一章 おっぱい鳴動編
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第8話 神の悪戯

 アホ二人の脳天に鉄拳制裁を食らわせ正気に戻した後、私達は先生と一緒に研究室に移動した。




――まあ、正確には鉄拳制裁を食らわせられたのはイージャン一人で、シビアナはさっと避けた。 

 やっぱりあいつ私の話を無視してやがったよ。気付いてやがった。



 先生の研究所は、以前は貴族の屋敷だった。だから結構中は広い。

 それを先生が買い取って研究所にしたのだ。

 寝泊まりするのもここ。自宅兼研究所だね。 


 先生は自分の使い勝手が良いように色々と研究所に手を加えていた。

 二つの部屋を一つにしたり、一階と二階をぶち抜いたりして、必要に応じて改築しているみたいだ。


 研究室の手前の部屋なんて元々一つの部屋だったのに、最近では隣接していた五つの部屋の壁を壊して、一つの部屋にして使っていた。

 扉を開けるのが面倒くさいんだと。

 そこは、ちょっとした図書館になってしまっている。

 とにかく本が大量にある。


 ここにある本は、薬について直接関係のないと思えるような多種多様な分野の本だ。

 先生曰く、薬のこと研究するためには他の分野まで調べる必要があったとのこと。

 そして、それら別々の分野の知識を組み合わせて薬学に応用する。

 私の家庭教師をしているときに先生は、そんなことを繰り返していたら色んな知識が身についてしまったって笑ってた。


 まあ、今までの先生の研究が、如何に大変な労力を必要としたかを体験したかったらここにある本を全て理解すれば少しは分かるかもね。


 そんな先生は、私の家庭教師を辞めてから、よく旅行をしていた。

 場合によっては国外も。先生に国境は関係ない。

 様々な土地に赴き、その土地の文化や言い伝え、使われている薬などを調べながら、先生は旅を続けた。


 途中で追いはぎにあったり他国の軍なんかに追いかけられたらしいけど、そこは油断していたとはいえ我が国の最強騎士イージャンを瞬殺にする程の実力者だ。

 歴戦練磨という言葉を体現している先生らしく全て返り討ちにして問題はなかったらしい。


 追いはぎは兎も角として、他国の軍と揉めて大丈夫にするのが先生の凄いところだよ。

 先生は他国でも有名人で顔が結構知られている。

 だから、下手をすれば外交問題になりかねないのにね。そこを上手くやるのがこの人らしい。


 まあ、うちの武闘大祭で優勝したこともあるし、武芸に関しても非常に頼もしい人だ。

 この国最高の学者で武芸者という一風変わった組み合わせの職歴を持つ型破りな先生だよ。

 

 そして現在はそんな様々な土地で得た情報を、研究室に籠って実験をしながら整理中だそうだ。

 


 まあ、これが私の尊敬する偉大なる探究者シドー先生だ。


 女の子に対してはあれな中年のおっさんなんだけどね。

 





 先生はとりあえず着替えてくるというので、私たちは研究室で待つことになった。

 

 研究室は広かったが様々な物で溢れていた。

 本の類は勿論のこと、私が見たこともない作りの変な顔をしたお面や、古い剣や槍、宝石が埋まった杖、綺麗な色彩の大きな箱がこの部屋の雰囲気を作っていた。


 研究室の奥にある書斎机に行くとそこには私の知らない土地の本が何冊もあり、パラパラとめくると嗅いだことのない匂いと知らない文字が私の好奇心を刺激した。おお、なんて書いてるんだこれ。


 本当に色んな所いってるんだなあ、先生。

 ふふ、おかげでちょっとわくわくした。



「ここからでも中庭を見れるんだな」


 二階に位置するこの研究室の露台からはさっき私たちがいた大きな中庭が一望できた。

 空を見ると天気がさらにどんよりとして悪くなっていた。

 今夜は雨が降るな。


 しばらくすると先生が戻ってきた。


「待たせたな」


 先生は部屋の中央にある大きな机に並べられた椅子の一つに、ドンと腰かけると、立っていた私にも座るよう勧めてくれた。

 ああ、先生が座っている椅子は特注品だな。かなり大きい。

 イージャンとシビアナは私の後ろに立っていたが、先生が私の許可を取り、席につかせた。



「いまローリエにお茶の用意をしてもらっている」


 ローリエ?さっきの案内してくれた女の子のことかな?

 私が怪訝な様子で少し首を傾げると、先生はああそうかと言って話を続けた。


「ローリエはさっきお前たちを案内してくれた者だ」


 合ってたらしい。おでこの可愛い助手(仮)の女の子のことだ。

 

「あの子はちょっとそそっかしいところがあるからな。自分の名前を伝えるのを忘れていたのだろう?」


 まあね。私は笑って頷いた。

 でもこっちからも聞かなかったし、緊張してたみたいだからあまり関わろうとしなかったんだけどね。

 

 そうやって先生は笑っていたが少し渋い顔をして、


「――あの子は今私が研究をしている神の悪戯の被害者なのだ」


 そう教えてくれた。



 神の悪戯。

 先生が色んな場所へ旅行に行っている理由がこれだ。

 あと、私とシビアナが推測していた先生の研究対象でもある。


 数年に一度くらいの割合で報告がある不可思議な現象で、この国ではだいたいこう呼ばれている。


 報告では、何もないところにいきなり炎が現れたり、水の玉が空中に浮いたりするんだそうだ。

 中にはその現象に出くわしたものが気絶することもあって、神の力だと畏れられている。

 

 まあ現象の規模は基本的に小さくすぐに収まっているのですぐに騒ぎもなくなる。

 大きな怪我をする者もいないと聞いているしね。

 ただ、先生によると稀に大きな災害を招くこともあったみたいで、その時の被害は尋常ではなかったらしい。

 これは、伝説の類として教えられた。


 先生はこれを人の手で自由に使えないかを研究している。

 


「元々両親を事故で亡くしていてな……。まあ現象の再現が出来るかもしれないので、無理言って連れてきたのだ!」  


 先生はなんとなく言葉を濁しているみたいに感じた。

 他国ではこの現象に関わった人間は、その畏れからか疎外され下手すると厳罰を受けるところもある。

 先生が被害者というからには、ローリエは恐らくそういった国の人間なんだろう。

 それで助けたんじゃないかな。


「まあ、わしはこんな性格だしな!色々気が利くので助かっておるよ。がはははは!」


 先生らしいね。 






 先生が豪快に笑っていると、扉を叩く音がして先生は中に入るよう声をかけた。


「お、お待たせしました。お茶の用意ができましたのでお持ちいたしました!」


 ローリエがお茶とお菓子を持って入ってくる。まだちょっと緊張しているみたいだ。


「うむ、ありがとうローリエ」


 先生は笑顔で答えた。






 ローリエが私たちにお茶とお菓子を並べてくれる。

 やったー!

 さっきのお菓子はシビアナのアホに全部食べらてしまったからな。これは嬉しい。


 お茶とお菓子が私たちに行き渡ると、先生が私たちを見ながら、


「ちなみこの菓子はローリエが作ってくれたものだ。私の好物でもある。よって悪口は許さん。残さず食えよ? がはははは!」


 笑顔で警告してきた。ローリエは俯いて顔真っ赤だな。――まあ、恥ずかしいよね。


 しかし、冗談を言っている様に見せてはいるんだが……。

 あの笑顔……本気っぽいな。

 食わなかったら本気で怒りそうだ。


 まあ、先生の味覚は普通だし、本当においしんだろう。

 とにかく頂きます!

 私はローリエが作ってくれたというお菓子を口に運んだ。


――うーんおいしい!

 顔がにやけますよ。ほんとにね。

 髪の色も喜びを示す黄色にすうっと変化していった。


 この味はお菓子ではよく使われている果物だな。それをふんだんに使用している。

 匂いも味も独特だけど、私は好きだな。

 へえ、先生もこういうの好物なんだな。知らなかった。


「どうだ?リリシーナ、うまいか?」


 私の髪の色が変化していくのに気付いた先生がニコニコしながら聞いてくる。


「はい、おいしいですね。ローリエは良い奥さんになりますよ」

「そうかそうか。がはははは!」

「あ、ありがとうございます!」


 先生すっげえ嬉しそうだな、おい。あ、ローリエが涙浮かべてるんですけど。

 うんうん王女様のお墨付きだからね。良い奥さんになるんだぞ?


「ええ、本当においしゅうございます」


 シビアナにも好評みたいだな。

 ていうかお前のお腹どうなってんの?あんだけ食っても問題ないんかい。



 最近だとテレルと一緒にお茶会をしたときにも食べたこともあるな。

 これは食が進むわ。 

 私は残りもぺロっと平らげた。

 ふふ、またテレルとお茶会しよっと。


 お茶を飲みつつ私はそんなことを考えていた。




――テレル?


 私はふと、この前のお茶会での様子を思い出した。


 あ、これテレルに聞いたことあるわ。

 私は思い出したことを確認するためにイージャンをちらりと横見した。


――固まっているな。間違いない。


 これイージャンの苦手な果物だよ……。

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