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リリシーナ王女殿下おっぱい爆発事件  作者: 粟生木 志伸
第四章 おっぱい慟哭編
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第7話 研究の成果

「今から見せるのは、神の悪戯の研究途中で、偶然発見した現象でな。中々面白いぞ」


 そう言いながら、先生が箱の中身を持って、こっちに戻ってくる。私は、それを渋々と見ていた。ええー、これからやるのー? 朝食を食べてから、しましょうよー。


 やるのは構わないが、だったら朝食の後でお願いしたい。何なら、これからすぐに行っても、多分大丈夫。作ってるなら、つまみ食いをすればいい。


 何たって、私は王女様なのだ。だから、そんな事をしても、許されるのである。先生に見つかったら、行儀が悪いと怒られそうだが……。ああ、シビアナもか。しかも、あいつが見張ってたら、食べるのに苦労しそうだな……。


 今はそんな事に、体力を使う気がしない。それに、そもそもつまみ食いしに行こうとすれば、ちゃんと料理が出来るまで待てって二人に止められるよね……。何だか、どんどん無理な気がしてきた。


 仕方ない。先生の言い方じゃあ、そんなに長くなりそうにないから、終わるまで待つとしますか……。私は、空腹を我慢して耐えることにした。はあ、でもお腹空いたな……。しかし、そんな気分も、机に置かれたものを見て、少し薄れる。


「何ですか、これ?」


 それは、一見、太鼓のように見えた。そんなに大きくない。先生が、片手で簡単に運べる程度。茶色い筒の胴は短く、円い上面に黒色の薄い膜。その膜は、頭が円い鋲を囲むようにして沢山使い、皺一つなく綺麗に張られている。


 薄いと分かるのは、ぼんやりと透けたように見えているからだ。それから、底には膜が張られていない。だから、只の太鼓じゃないとは分かる。それが二つ並べられた。


「ふっ。これはまあ、ちょっとした実験道具だな」


 先生が自慢げに、にやりと笑う。


「ほほう……」

「説明は無しだ。見た方が早いだろう」


 そう言うと、机の上にある瓶を一つ手にして、その蓋を取り外した。その瓶をゆっくりと傾け、とんとんと指で叩くと、ぱらぱらと銀色に輝くものが零れ落ちる。膜の張られた表面に、万遍なく振り撒かれたそれは、細かい砂か粉ように見える。


 それから、もう一方の道具の表面にも、同じように粉を撒いていった。何してんだろ、先生? 私には、全く意味が分からなかった。


 先生は、それが終わると瓶を机に置いて、近くにあった紙切れを手に取る。それを、くるくると巻き始めた。太さが棍棒くらいの筒が、すぐに出来上がる。


「シビアナ、一語だけで良い。これを口に当てて、銀粉を撒いたその表面に向け、何か言ってみよ。但し、息が続くまでな」


 そう言って、手に持った筒を渡す。ああ、あれって拡声器の代わりか?


「では――」


 シビアナが、受け取った紙の筒を口元に当てた。筒先を、銀色の粉が撒かれた道具の表面に近づける。


「出来るだけ、真上からやると良い」

「分かりました。やってみます」


 先生に頷いて返すと、筒先の位置を真上へと調整しつつ、息を吸い込んだ。

 

「あーーーーー……!」


 透き通った声が、筒を伝って銀色の表面へと降り注でいるようだった。銀の粉が小刻みに震えてる。すると――。


「おお――!」


 驚いて自然と声が出ていた。嘘!? 何これ!?


「これは……」


 筒から口を離したシビアナも、まじまじとその表面を見る。声が伸びていくつれ、膜の張られた黒い表面が、変化を起こしていた。銀色の粉が勝手に動き出し、花に似た模様となって現れていたのだ。

 

「声が当たると、この薄い表面が細かく震える。すると、当然その上にある粉も、同じように震え出す。そして一緒になって振動し続けると、その結果このような形を作るのだ」

「はあああー……」


 先生の説明に感嘆の息が漏れる。


「さしずめ、水の波紋ならぬ音の波紋――音紋といったところだな」

「はあー……」


 ビックリだよ……。こんなの初めて見た……。


「リリシーナも、その隣のやつでやってみよ。ああ、シビアナと同じ言葉でな」

 

 お。今度は私の出番か。ふふん、任せて下さい。


「分かりました!」

「どうぞ、殿下」

「ん、ありがと」


 シビアナから受け取った紙の筒に、私も口を当てる。そして、もう一つの道具の方へ、彼女と同じように筒先を向けた。


「あーーーーーー!!」


 叫びながら、表面を見てみる。おお! 動いてく、動いてく! 一面の銀色が、シビアナの時みたいにどんどん模様を作っていくのが分かって、嬉しくなった。ん? でも、あれ――?


「同じ言葉なのに、全然違いますね」


 シビアナの言う通りだ。それは見比べれば一目瞭然。花のようであるのは同じだが、形が違う。全くの別物だった。そして、その模様を描く銀色の線は、より粉が集まり鮮明になっている。


「違う言葉でやると、模様は変わる。だが、どうやらそれだけではなく、人によってもこの様に変わってくるようなのだ。ローリエにも同様にやって貰ったが、お前たちや儂のとは、また異なる形だったしな」


 おお、ローリエもやってたか……。まあ、あの子って先生の婚約者だけど、助手でもあるもんね。


「声って、大体皆違いますし、それが関係してるって事でしょうか?」


 低い声。高い声。渋い声。可愛い声。色々あるよね。そもそも、まず男女で全然違うし。


「そうだ。お前が言うように、声のその質が関係している。中には、同じような声を持つ者たちもおるだろう? その者たちが作る模様は、よく似ておったからな」


 声質が、模様を作り変える原因なら、それが同質であった場合、同じ模様を描くはず。流石、先生。検証済みか。


「それと、声が大きいほど、よりくっきりと細い模様が浮かび上がる。これは、その声に呼応して、表面がより激しい振動をしよるから、その上にある銀粉も動きやすいのだろう」

「なるほど……」


 ああ、だから私の方が、そうなっているのか。結構、大きな声で叫んだもんね。シビアナよりは大きかったはず。


「ま、このように、声で模様を作ることができる。そして、それは多種多様にあるというわけだ」

「はー……」


 さっきから、溜息が出っ放しだ。いや、溜息ぐらいでるって。これ凄いよ。


「ありがとうございます、先生! すっごく面白かったです!」

「ふっ。そうか。なら良かったな」

「はい!」


 久しぶりに先生と実験をしたが、やっぱり面白い。しっかし、声で模様なんて出来るんだねえ……。


「実は、これに気付けたのは、レイセインのおかげでな」

「え? レイセイン?」

「うむ」


 いきなり自分の侍従官の名前が出てきて、ちょっとビックリ。


「レイセインは、音を見る――からですか?」

「ふっ。その通りだ」

「あ、そっか」


 シビアナに言われて思い出す。あいつ、音が見えるんだったな。へえ、こんな形してんのか。


「あやつの見る音色は、このような形をしておるものが、あるらしいのだ。随分と前になるが、それを聞いたのが、きっかけとなった」

「そうでしたか……」

「うむ。実際、他にある模様の一つを見せた時は、驚いておったよ。同じだとな」


 先生は、シビアナに頷いてそう返した。


「まあ、他にも偶然が重なり、この道具を作れたのだがな」

「へえー。何があったんです?」


 興味があったので聞いてみる。


「ふむ。レイセインにきっかけを貰い、何とか再現できないものかと考えておったのだが……。ロック教団の知り合いの所へ、会いに行くことがあってな。その時、太鼓の振動の仕方を、じっくり観察する機会があったのだ」

「ああ、だからこの道具って、太鼓みたいな形をしてるんですね」

「そうだ」


 道理でね。納得。


「で、色々とその構造を、見ておったり説明を聞いておった時だ。不意にその知り合いが、その太鼓の上に酒の入った湯呑を置いてな。そのまま叩くと、その湯呑の中に水紋が出来おったのだ。それで、ピンと来て試したみる事にした。これが、この道具の出来上がった経緯だ」


 ええー……。


「ピンと来たって……。それで、よく思い付いけましたね……」 


 こんなの思い付かなくない? どうしてそれだけで、粉を使って試そうなんて発想が出てくるんだろ? 水紋だって、特に変わったものでもない。桶に入った水とかで、日常的に見てるでしょうに。


「まあ、多少試行錯誤したがな。しかし、上手く作れて良かったわ。はっはっはっ!」


 豪快に笑う先生。いや、とっても簡単そうに、言っちゃってくれてるけどさ。これ、先生以外、無理だと思うよ? 思い付かないって。研究は、実験と失敗の繰り返しだと聞く。その回数は、百や千どころではない。万を軽く超えているそうだ。


 それでも、先生は諦める事なく、只管に研究を続けていってる。はあ、そんな中で蓄積されてきた経験が、あんな発想を導き出してるのかねえ……。シビアナと顔を合わせると、お互い苦笑い。どうやら思いは同じのようだ。うん、そうだね。そんな先生だから、出来たんだろうね。そして、私は、呆れながらも誇らしく、我が偉大なる先生を見上げた。


 いやー、でも楽しかったわ。知らなかった事が凄いと、ドキドキする度合いも違ってくる。今回のは、何だかその度合いも、大きかった気がするね。久しぶりの実験に、私はご満悦。いやいや、ご満悦で大満足だった。あ、先生が良いって言ったら、イルミネーニャ達にも見せてやろ。


 この時、私はこれで実験終了だと思っていた。しかし、先生が見せようとしたのは、これだけじゃない。それどころか、この実験は、実はここからが本番だったのである。

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