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リリシーナ王女殿下おっぱい爆発事件  作者: 粟生木 志伸
第二章 おっぱい前触れ編
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第13話 お風呂

「はああぁあー…………」


 浴槽のお湯に首まで浸かった私は、一日の疲れを押し出すように倦怠の声を浴場に響かせる。


 ここは私専用の浴場。

 宴会の用意を一通り終え夕食を済ませた私は、湯浴みをする為にこの浴場に来ていた。


 場内は広く、神秘的な印象を与える白を基調としている。

 浴槽は円形でその中心に。

 手足を伸ばしても十人くらいなら余裕で入れるだろう。


 周りを見れば、浴場の天井や床に使ってある石が、所々白く明るく光っている。

 暗くなると光り出す、日の光を溜め込むという玲瓏石れいろうせきをはめ込んでいるからだ。


 そして、荘厳さを感じさせる太くて白い石柱が、浴槽の周りを囲むようにぐるりと立ち並び、取り付けられた壁掛け用の燭台が蝋燭を幾つも乗せ、辺りをゆらゆらと照らす。


 もう日が暮れてそれなりの時間が経ったが、玲瓏石れいろうせきとこの蝋燭の火のお蔭で、昼間までとはいかずとも入浴するには充分な光となっている。


 雨はしとしとと降り続いていた。

 湯気は、壁の通気口からそんな雨が降っている外に向かって、ゆらゆらとのんびり立ち昇っていく。


 いつとはなしに天井に付いた水滴も、またいつとはなしに湯の中に落ち、このゆっくりとした静寂にどこか安寧を与えていた。


「ふはぁああ…」


 私は浴槽の後ろにもたれかかり、もう一度声を吐き出す。


 浴槽は床に埋まっている。

 私が座ると、丁度いい位置で首を床に置くことができた。


 はあ~。

 気持ちいいねえ……。

 何故か目を瞑むると、さらに気持ちがいいよねえ……。


 私は湯浴みが好きなんだ。毎日入っとります。

 長い時間を使ってゆっくりと湯を楽しむ――そんな趣をこよなく愛する長湯王女なのだ。


 とはいえ、今夜は喉がカラカラになるまでお湯に浸かるつもりはない。

 ササレクタが来ることだし、時間が遅くなってはいけないからね。

 程々にして上がるつもりだ。

 

 そして、湯浴みが終われば――。


「ふっふっふっふ」


 お待ちかねの宴会でござーい!

 

 ふはははは!


 爺の魔の手から取り戻した西黄のおつまみ!

 そして、先生から貰った異国のお酒! 


 くぅううう――!

 今夜は思う存分に食べ、そして飲み尽くそうじゃあないかー!


 お湯の中でこれから始まる宴を思い、私はもう既にルンルン気分であった。


 一度は諦めた宴会。

 今夜はお酒を掻っ攫らって来たら、それでも飲んで不貞寝でもしようかと思っていた。

 しかし天は私を見捨てはしなかったのだ。

 

 足りないお酒は、シトエスカに。

 足りないおつまみは、ゼニシエンタに頼んで調達済みだ。

 この私に抜かりはなくってよ。おほほほ。


 ちなみにこの人選、適当に決めたように見えるが、実はちゃんとした理由がある。


 お酒の調達をお願いしたシトエスカ。

 彼女は経験が浅いとはいえ、侍従官の仕事を熟知している。


 つまり王宮内の様々な内情に詳しい。

 案外、この王宮に住んでいる私よりも、よく知っているんじゃないのかな。


 だから、どのお酒が貯蔵庫の何処にあるかなんてのは、彼女にとっては朝飯前なのだ。

 きっと今夜のおつまみに合った美味しいお酒を見つけてくれだろう。


 そして、ゼニシエンタ。


 あの子はねえ……。

 あの子は――、私より厨房に顔が利くんだよね……。 


 今日みたいに急な時でもゼニシエンタが頼めば、結構手間のかかるものでも作ってくれる。

 料理長自らが率先してね。

 すんごく仲が良いの。


 気に入られちゃってるんだよ……。

 彼女の食いっぷりが彼の心を鷲掴みにしてしまったのだ。


 以前、料理長が試作の料理が出来たから毒見がてら味見してくれってなった時。

 ゼニシエンタが料理を食べるのを満面の笑みで見てるもんだから、偶然居合わせた私は驚愕した。


 うちの料理長って結構気難しいんだよ。私は笑っている所なんかあんまり見たことがなかった。

 いっつも、むすっとした顔してたのに。


 そんな料理長が笑顔を見せていれば、そりゃあビックリもするさ。


 シビアナに聞いたら、ゼニシエンタがここで働くようになった時からだそうだ。

「ころっといきましたね」だって。

 

 きっと味見もゼニシエンタに食べさすための口実だったんだろうな。

 

 まあ……。

 あの食いっぷりはね。分からんでもないかな。

 今日の夕食の時も凄かったもんね。


 王宮内では私や父様といった王族は勿論の事、クロウガルやササレクタといった国の上層部の連中。

 その者達に出される食事は、法によって毒見をすることが義務付けられている。


 王宮内での毒見は、まず食材を管理している『豊穣院ほうじょういん』が検査を行う。

 この豊穣院ってのはトゥアール王国の農業に関わること全般、まあつまり食を司るところだ。

 

 ここには、色んな薬草から薬を作ったり研究したりする薬師がいる。

 だから、彼らが主になって検査、管理を行っているんだ。


 シドー先生の研究成果もここに収められることが多いね。

 そのお蔭で最近では木や草だけでなく、動物や鉱石から採れる成分にも注目がいっているとか。


 そんな先生とも所縁が深い豊穣院。

 そこで問題なしと認定された食材が、それからまた色んな所を通って検査されて、やっと料理を作ることが許可されているのだ。


 それから料理が作られ、いざ食事を厨房から持って行こうってなる前に、即効性の毒を憂慮して少しずつ切り別けたものを毒見するってのがあるんだけど……。


 ゼニシエンタが侍従官としてこの王宮に来てからは、その役目を彼女が引き受けているんだよ。

 ほぼ一人で。


 彼女がいない頃は、各々の側付そばつき侍従官とか専任の毒見役がやっていたんだけどね。

 彼女が来てからは、その毒見を独占してしまったのだ。


 塵も積もれば山となる。

 少しずつ切り分けられた料理とはいえ、王宮内の食事量は多い。


 ゼニシエンタが食べる量は、私が普段食べる量の倍にはなるだろう。

 それなのに、あの子はその量をペロリなんだよ……。しかも朝昼晩の三食。

 自分が休日の時でも王宮に来るんだよ。食事目当てでね。


 凄くない?

 あの子の体どうなってんの?

 果物やお菓子は別腹だとか言うし……。


 今日も見たあの子の食いっぷりは、今まで何度か見学したことがあるけど変わらない。

 

 いくつもの大きなお皿へ毒見の為に切り分けされていた料理が、こんもりとお山の様になっていく。

 上手くすれば、切り分けられた料理を元の料理に戻せるかもしれない。

 

 そんなお山のようになる様を前にして、目をキラキラと輝かすゼニシエンタ。

 そして、料理が大きなお山になる頃、彼女の食事が始まるのだ。


 大きく口を開けてパクッ。

 モグモグと味を噛みしめたら、本当に幸せそうな顔してさあ……。

 もうニッコニコ。


 彼女の手は止まらない。

 口の中にどんどん料理が入っていく。流れるような動きだ。


 彼女が食事をしている間にも料理は追加される。

 それを笑顔でお出迎え。


 嬉しくてしょうがないらしい。

 これが料理が無くなるまで続くんだよ。


 だけど、そう――。

 料理は食べれば当然無くなってしまう。

 やがて、ご馳走様を言う時が訪れるのだ。


 そしたらあの子は、悲しげな表情するんだよ。

 そしてゼニシエンタの言う「ご馳走様でした」という言葉が、何故か悲哀に満ちている。

「さようなら」って言っているように聞こえる。


 まあ、あんなに食べてるのに物足りないってだけなんだけども。


 しかも、ゼニシエンタって可愛いから、そのもの憂げな表情が絵になるっていうね……。

 私としては、違和感が半端ない。


 ここじゃないだろう。

 その表情は違う場所でこそ発揮されるべきだろう――って感じ。


「姫様ー。お湯加減いかがですかあー?」


 ゼニシエンタの声が隣の湯焚き室から聞こえ、私がいる浴場内にその声が響いた。

 彼女には、おつまみを調達してもらった後に湯焚き番をお願いしている。


「うーん。いい感じだよー」

「はーい。じゃあこのままで……。あ! お湯がぬるくなったら教えてくださあーい」

「分かったよー」


 私はそう言って、両手で顔にパシャパシャとお湯をかけた。


 あの子がこの毒見をしている事について、シビアナは何も言わない。

 父様やクロウガルからも特に何もない。その側付侍従官達からも。

 だから問題はないんでしょうけどもねえ。


 厳正な検査を以って作られた料理。

 その料理で毒殺しようとするなら、その毒見役が黒とか、後は食事の際に一緒に出される食器とか味付け用の香辛料に混ぜるとかになるだろう。


 だから、ゼニシエンタが危険な目に会うことはないだろうって私は思っている。

 料理長だって味見しながら料理作っているわけだし。

 絶対にとは言わないけどさ。


 まあ、シビアナが注意したり問題が起きない限りは、私も何も言わないでおくつもりだ。

 あの子も食べるのが大好きだしね。


 私もゼニシエンタとまではいかないけど、食べるのは大好きだ。


 後に宴会が待ち構えていようとも、夕食はいつも通りきちんと摂った。

 でも今日は体を動かしているから、腹五、六分目といったところかな。

 ふふふ。計算通り。


 では、本日ゼニシエンタや私が食べたその夕食の献立をご紹介しておこう。


 ご飯、牛肉の切り身焼き大、鶏の手羽元焼き、三色野菜のお汁物、林檎のみつまめ。

 以上。


 お肉がさあ……。

 料理長ご自慢のとろっとした正油タレが程よく口の中で絡み、お肉の味をさらに引き立ててねえ。

 お腹が空いていたのもあって、ご飯が進むこと進むこと。


 いつもは二杯しかご飯食べないのに、更にもう一杯おかわりしちゃったよ。

 美味しかったわー。

 でも後の事を考えて、ここでおかわりを止めておいた。


 野菜のお汁物も、黄瓜きうり赤茄子あかなす白根しろねの三色野菜と出汁の相性が抜群。

 これ美味しいし、食べたら口の中にある油っこさが消えるから、お肉を食べる時にはピッタリだね。

 

 お肉。ご飯。お肉。ご飯。お汁物。お肉。おかわり! お肉――。

 こんな感じで、瞬く間に平らげさせて頂きました。


 最後に出た林檎のみつまめも、美味しかったなあ。

 さっぱりとした甘さが私好みだったんだよー。


 いやいや、ご馳走様でした。


 しかし、私のお腹にはまだまだ相当の余裕がございます。

 宴会のおつまみちゃんは美味しくいただける事でしょう。ぐふふふ。


 でも美味しかったなあ……。もう少し食べたかったかも。

 

 夕食の事を思い出しているとなんだか小腹がすいてきた。


 まあ、今夜は西黄のおつまみがある事だし、そちらを優先しよう。

 お酒を飲むまで我慢だな。


 私達王都の人間が、今日の夕食みたいな美味しい料理にありつけているのは、東都の存在が大きい。

 東都はトゥアール王国の食糧庫。


 東都周辺には肥沃な大地が広がる。

 そこでは農耕や放牧が盛んに行われているんだ。


 小麦、米、豆といった穀物類は勿論として野菜や果樹園なんかもある。

 放牧されているのは牛や豚や羊かな。あと鶏もね。


 今でも更に東に向かって開拓が進んでいる。

 その指揮を執っているのが開墾大好きヘックタールだ。


 東方将軍は至極天を持ってない。


 その代わりにといっては何だが、このヘックタールが至極天を使ってガンガン開拓してくれている。

 有事の際は武器として使われる至極天も、平時には立派な農具に早変わりという訳だ。


 私も鍛錬がてら先生一緒に、東都の開拓を手伝ったこともあるんだよ。

 重樹程とは言えないが、それなりに大きな猛獣が出てくることもあったから、いい修行になったね。


 今でも開墾具合を確認するために東都には行っている。

 お目当ては勿論料理だ。


 視察の時期が近付くと、その話題が侍従官達と話す雑談なんかに上がり始める。

 あそこの料理は、とれたての食材を出してくれるから嬉しいんだよなあ。うふふふ。


 今年も楽しみしているぞ、ヘックタールよ!

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