第8話 時間は加速する
男は創造魔法で《あれ》を創れたことにより、アイデアの実現を疑わなくなった。
一部の実験も残っているが、それの結果はもはや絶対ではない。
それは期待通りの作用か否か、という違いであり、問題は発生しない。
男は、残りのDPを確認して、一気に作業を進めた。
まず、陽灯玉を購入し、地下の階層に設置した。
次に、一階層の二つ目のエリアと地下のエリアに、時間属性を付与した。
前者は停止、後者は促進である。
男は、創造した《あれ》を持って、地下に移動した。
そして、エリアの一角で、魔法を使って、土をふわふわもこもこにした。
その中に、《あれ》を埋めた。
「楽しみだ♪」
そう口ずさんで、上の階層に上がっていった。
最初のフロアに戻ってきた男は、全体を見渡して、レイアウトを考え始めた。
「あそこに壁を作って…… あとは等間隔に配置していくか」
頭の中でイメージを高めて、土魔法で形にしていく。
壁を作ったときに、男は何かに気が付いた。
「あれ? 水とか与えて…… ない!?」
男は慌てて地下の階層に走って行った。
水が必要だと口走ったにも関わらず、水も持たずに。
* * *
男があの一冊を手にしてから、二か月が経過した。
あの時を境に、男は寝る間を惜しんで活動をした。
実際、ダンジョンマスターは睡眠を取る必要はないが。
そして、ついにダンジョンを開放するときが来た。
「ダンジョンに名前を付ける必要があるのか。ん? 《ダンジョン》の文字は消せないのか……」
ダンジョンの名前には、《****ダンジョン》という命名規則があった。
それに倣って、男はダンジョンの名前をつけた。
最後に、木の板に何かを書いた。
「これで完璧だ」
男のダンジョンがこの世界に出現した。