第6話 実験開始
イメージを文章にするのは難しいですね。
作者のイメージがこの文章で伝われば良いのですが……
男は、最初のエリアに戻ってきた。
そのエリアの一角で実験を開始することにした。
まず、長さ三十センチほどの細長い四角の突起を作り出した。
その先端に二センチ角の空洞を付け、下側の土を取り除いた。
空洞をエリアに見立てて、水属性を付与した。
・水属性付与
エリアの任意の場所に、水を出すことができる。
「水よ、出ろ」
そう口に出して念じると、突起から水が出てきた。
水を止めるように念じると、水は止まった。
男は、上手くいったことで、喜色満面になった。
男は、次の実験に移ることにした。
しかし、一つ目の実験が上手くいったことで、次の実験の成功は確信していた。
先ほどの突起から少し横に移動し、高さは腰程度、上面は一辺四十センチの四角い箱のような土の塊を作り出した。
その上部に、直径二十センチ、高さ五センチほどの空洞を作った。
先ほどとは異なり、今度は上面の土を取り除いた。
そこまでの作業を行ったとき、男に異変が現れた。
体がふらっと傾いたかと思うと、そのまま倒れた。
数時間経過したのに、男が目を覚ました。
「あれ? 何故ここで寝ているのだ?」
男は、何故このような状況になったのか全く把握できていなかった。
しばらく思案した後、一つの結論に辿り着いた。
「MP切れかな」
男の結論は正しい。
男は、初めて魔法を使った。
二つのエリアを繋げ、地下への階段を作り、さらに土の突起と箱を作り、細かな成形を施した。
現代の日本人が、いくらイメージすることに優れていても、初めて魔法を使う者にとって、容易ではない。
MP回復というスキルを持っていても、消費MPの無駄も多く、MP切れで昏倒したのである。
「これからはMP管理に気を付けよう」
しかし、二つ目の実験で必要なものは完成していた。
先ほど作った土の箱の空洞に火属性を付与した。
それから、念じると、空洞から火が噴きだした。
「よし、両方とも成功だ」
男は実験の結果に満足した。
しかし、ここまでは成功すると予想していた。
ただ、これから行おうとしている実験は、成功するという確信はない。
だが、それらの実験が成功しなければ、男のアイデアを形にすることはできない。
「よし、次の実験に取り掛かろう」
ここで、男が作成した二つのものについて少し触れよう。
一つは水が出て、一つは火が出る。
ただそれだけではあるが、見る人が見れば何か気づくだろう。
それは、地球に住む多くの人の身近にある《あれ》に似ているのである。