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第20話 進化

その日は、いつもより店の中は騒がしかった。


店の前には、『本日より従業員を雇いました。ご不便をお掛けすることがあるかと思いますが、どうぞご理解のほど、よろしくお願いいたします。』という看板が置かれていた。

その看板の内容に、一抹の不安と何か変化に対する期待が入り混じった客たちは、店に入ると驚きに目を見開いた。

今までと違って女性が出迎えに来たことで、テンションが上がる男性客、それを冷ややかな目で見つつもその女性が来ている服に興味津々になる女性客、それぞれ異なる反応であるが、出だしとしては好調と言ってよいだろう。


さらに、席に着くと、狼人族の少女が、どうぞ、と水を運んできてくれる。

女性客はクーの可愛さに骨抜きにされてしまっているようだ。


カナは、見た目の活発的な印象通りに、お客と積極的に話して、男性客たちといつの間にか仲良くなっていた。

そして、よく話し掛けられる姿を見るようになった。

マイナは、狼人族特有の耳と柔らかい物腰で、男性客だけでなく、女性客に人気になっていた。

一部の女性客に、お姉様と呼ばれて、本人はニコニコと嬉しそうにしている。


シェフは、現在の状況に感心していた。

女性の従業員がいるだけで、店の雰囲気は明るくなった。

また、カナもマイナも料理の名前をよく覚えて、自分の作業量も大分減った。




「お疲れ様でした」


店を閉めた後、みんなの労をねぎらう。

そして、夕食は好きなものを食べていいと伝える。

その間に、彼女らの寝床を用意する。


戻ってくると、既に食事を終えて、三人は満足そうにしている。

しかし、クーはシェフを目にすると、


「シェフさま、わたしも料理したい」

「「クー (ちゃん)!?」」

「そうですか…… では、お菓子から作ってみましょうか」


クーの申し出を受けて、シェフは分量をしっかり計測すれば作れるお菓子を一緒に作ることを提案した。

それを聞いて、カナもマイナも付き合うことにした。


シェフは道具と材料を用意した。


「三人なので、二種類作りましょう。マイナさんはクーちゃんのお手伝いをお願いします」

「「「はい」」」

「最初に、バター、砂糖、卵を混ぜます。クーちゃんの方には、バニラエッセンスも一緒に混ぜます」


カナとクーちゃんが混ぜている間に、小麦粉をふるいにかけることにした。

いつも料理の手伝いをしてもらっているドールを呼び、作業をしてもらう。

少しドールの様子がいつもと違う気がしたが、料理に集中することにした。


「次に、ふるいにかけた小麦を混ぜます。カナのほうには、ココアパウダーも一緒に混ぜます。ここは少し力が要りますので、クーちゃん、頑張ってください」


クーが大変そうに混ぜているところを、マイナがサポートしている。

その様子を見て、シェフは親子を一緒にしてよかったと思った。

混ぜ終わった後、形を整えて、冷凍庫で一時間寝かせる。


一時間後、寝かせた生地をそれぞれ切り、二種類の生地を組み合わせる。

それを、薄くスライスをして、鉄板に乗せ、オーブンに入れて十五分から二十分焼く。


「完成しました」


オープンから取り出したクッキーを三人の前に置いた。


「あったかい状態も触感が違っておいしいですよ」


すこし冷まして、皆で口に運び、おいしい、おいしいと食べていく。

その間に、二回目を焼き始める。


「クーちゃん、どうでしたか?」

「たのしかったぁ」


満足そうなクーを見て、残りの三人も満足そうにした。

残りのクッキーは、保存しておくことにした。




三人と一緒に二階に上がり、寝る場所の説明をする。


「こちらがベッドです。寝る場所は皆さんで決めてください。あと、あちらがお風呂です」

「ありがとうございます」

「おふとん、ふわふわ~」

「おお、これはすご…… お風呂もあるの!?」

「では、私はこれで」


シェフはそう言って去って行った。

そのときに三人は気付いていなかったが、着替えやタオルも部屋に積んであった。




三人と別れた後、シェフは気になっていることを調べることにした。

先ほど料理を手伝ったドールを呼び寄せる。

やはり以前とは異なっているような気がする。


・モンスター《コックドール》

土で構成された人型のモンスター。

能力は料理に特化しており、非常に希少なモンスターである。

ドールの進化形で、マスターの指令を忠実に実行することができる。


ステータスを確認すると、どうやら進化したようである。

他のドールたちも、様々な種類に進化していた。

《ソードドール》や《ランスドール》など武器に特化したもの、《ファイアドール》や《アースドール》など魔法に特化したものなど、異なる進化していた。

ちなみに、踊っていたダンスを踊っていたドールは《ダンシングドール》というモンスターに進化していた。

それを見たとき、不思議なダンスでMPでも減らすのか、とシェフは疑問に思った。



 *   *   *


「私、もう我慢できませんわ」

「あらあら」

「あの店ができてから、私たちの収入は減りましたわ」

「そうねぇ、困ったわねぇ」

「お姉様! 文句を言ってきますわ!」


そう言って飛び出していった。

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