第11話 ダンジョン出現!? Another Side 前編
前話のダンジョンマスターの男視点の話です。
内容は重複しないように気を付けたつもり……です!
「誰も来ない」
ダンジョンを開放して一日が経過した。
しかし、全く人が来る気配がなかった。
男は、ずっと待っていても仕方がないので、いつも通り地下の階層へ、食材を収穫しに行った。
* * *
初めて創造魔法を使った日。
あの後水をやり忘れたと思って、急いで地下に向かった男の目に飛び込んできたのは、驚くべき光景だった。
とても長く伸びた蔦、たくさんの葉、そして青と赤が鮮やかな花であった。
男が創った《あれ》から成長した立派な《朝顔》がそこに存在していた。
《あれ》とは、朝顔の種だったのだ。
「数時間しか経過してないのに、あっという間に成長したな」
時間促進の効果を目の当たりにした瞬間だった。
しかし、栄養と水分を与えなくて育つのは一体どういうことなのか……
ダンジョンの不思議の一つである。
* * *
あのときから、男は地下の階層を《農耕の間》と名付け、多種の作物を地下の階層で育てている。
栄養も水も与えず、数時間で育つため、食材はあっという間に貯まっていった。
しかし、問題もある。
作物を上の階層に運ぶ必要があるため、階段の上り降りが大変なのである。
この作業をモンスターにやらせたいと思うが、そこにかけるDPはない。
ただ、この作業を繰り返しやっていると、筋力がついたのか、ステータスがアップしていたのは少し嬉しかった。
ダンジョンを開放して三日目。
いつも通り作物を運んでいると、警報が鳴り始めた。
そして、目の前に映像が表示された。
「お、初めて侵にゅ…… お客さんだ」
映像に表示された人数は五人、うち戦士系が二人、魔法系が二人、他一人という構成のようだ。
とても警戒しているようにダンジョン内を進んでいる。
「つ、強そうだ。 ……いや、男は度胸! 営業マンの底力を見せてやる」
ちなみに、男の前世が営業マンだったかは定かではない。
男は覚悟を決めて、侵にゅ、いやお客さんのところへ向かった。
「いらっしゃいませ」
警戒をしている冒険者たちに対して、明るい声で話しかけた。
しかし、冒険者たちとの距離が、普通の店員と客のものより数倍離れている。
男の腰が引けている様子が明らかである。
だが、ここまで来たら、もう引けない。
冒険者が出してくる質問に対して、はっきりと答える。
店がこんな場所にあるわけないので、冒険者からしたら怪しいのである。
だから、はっきりと答えて、有無を言わせないようにしなければいけない。
しばらくすると、冒険者たちが相談を始めた。
男は、内心ドキドキが止まらない状態であったが、なるべく表に出さないように気を付ける。
すると、戦士系の一人が豪快な発言をした。
その発言によって、冒険者たちは《めしや ダンジョン》の初めてのお客さんになった。
豪快な発言を聞いたとき、男の口から危うく「脳筋だ」と出そうになったのは秘密である。




