よくわかる現代社会
HRも終わり、一時限目の授業が始まろうとしていた。
終「一時限目の授業ってなんだっけ?」
桜「現代社会だよ。」
俺の言葉に素早く返す桜。
だが俺はそれを聞いてやる気が大きく削がれる。
終「初っぱなから現社かよ……萎えるわ。」
別に現代社会が嫌いだとかわからない訳では無い、けど今の授業の範囲が苦手なだけで……。
「ほら、お前ら席に着け~授業を始めるぞ。」
そうこうしている内に現代社会担当の先生が教室に来た。
はぁ……今日は寝てよ。
起立と礼を適当に済ませ、席に着き寝る準備をする。
噂の睡眠学習ってことで先生も納得してくれる筈。
「今日は2年前に起きた戦争……神魔大戦の所からな。」
神魔大戦、それは神と呼ばれる存在達と人間達が起こした大規模な戦争。
4年前、神という人を遥かに超越した存在と戦争が始まった。
それ以前より神と人と争いは起きていたが戦争と呼べる程に大きな戦いでは無かった。
神なんて存在はそうそうこの世界に顕現しないし、そもそも神と人では持っている力が違い過ぎている。例え一国の総力を持ってしても勝負にすらならない。人は神に勝てない……一部の奴等を除いて。
それに神は自分勝手な奴等ばかりで決して群れない、けれどあの戦争では神達は手を結んだ。人間を…いや全ての存在を無に還す為に。
「神魔大戦では主に魔術統制局が中心となり数多くの敵を倒し戦争を勝利へと導いた。中でも初代魔術統制局の局長はたった一人で3億近くの神とその神達を束ねていた最強の神を……『創造神』を殺したとされている。」
終「…………。」
創造神…世界が存在する以前から存在したとされ、この世界を創った正真正銘本物の神様。
人間の神話から生まれた神とは比べるのもおこがましい程の力を持っていた。
最強の存在にして……最も悲しい存在。
「その創造神を超えた存在が魔術統制局初代局長…又の名を『紅王』だ。」
先生が黒板にでかでかと紅王と書く、更に赤丸で括り重要と書き足す。
終「グフゥッ!?」
「どうした、浅義?変な声を出して。」
終「いえ…何でも…ありません。」
くそぅ!人の傷口抉りやがって。
これが精神攻撃は基本!ってやつか!?
「まぁいい、この紅王って言う二つ名は紅王が持つ特徴的な紅い魔眼から付いたそうだ。」
終「グハッ!!?」
二つ名!?魔眼!?厨二病みたいに言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
「何でもたった十二歳で魔術統制局の局長になった超天才らしい、強さも能力も人を惹き付けるカリスマも併せ持つ完璧超人だったと言われている。」
終「……いや、ねぇよ。」
誰だよ、そんなこと吹聴した奴。
「決め台詞は「終わりの時だ!」らしい。」
希羅・偉空・愛華「「「ぶふぅ!!」」」
幼馴染み三人が遂に笑いを我慢しきれず吹き出す。
てゆーか決め台詞!?そんなのねぇよっ!!そもそもこれ絶対に授業に関係無いよな!?
「創造神との戦いの後は生死不明の行方不明と噂されているが魔術統制局の公式発表では死亡とされている、生きていればお前等と同い年だな。」
……そっすね。
「ここら辺はテストに出るぞ、よく覚えておけ。」
ヤメテー!!モウ、ヤメテー!!
もう俺のライフはゼロよっ!!
終「もう……一思いに殺せ!」
桜「終くん!?しっかりして、キズは浅いよ!」
机に突っ伏してただ授業が終わるのをまった。
………
……
…
キーンコーン……。
授業の終りを告げる鐘がなる。
…やっと終わった
偉空「やっと…終わりの時だな。ブフッ!!」
偉空がそんなことを言いつつ振り返って来る、その顔は憎たらしい笑顔が満開だった。
だが、今の俺はコイツを殴るだけの元気も無かった。
終「桜……悪いんだけど、そこのゴミを片付けておいて……。」
なので、桜にお願いすることにする。
桜「うん!わかった。」
桜が笑顔で頷くと偉空の制服の首根っこを掴み廊下まで引きずって行く。
偉空「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?許してぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!た、助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
クラスの奴等は誰も見向きもしない。最早この程度のことは慣れっこである。
偉空「ちょっ!?…やめっ!?…えっ?マジで!?死ぬってこれ!ギヤァァァァァァァァァッ!!?」
バキッ!グシャ!メリメリッ!!ゴキッ!
廊下からおよそ人体から出てはいけない音が響き渡る。
暫くして偉空の悲鳴も不快な音も止み、桜が廊下から何事も無かったかのように戻ってくる。
偉空は戻って来ない……。
無言で隣に座る桜を見れば笑顔を返される……可愛い。
桜が可愛いのでもう何もかもどうでも良くなって来た。
可愛いは正義。