第九章 「Night Heat」
ノドコール国内基準表示時刻12月27日 午前2時32分 ノドコール中北部
冷気を伴った霞が、緩やかな谷間に広がる藁葺きの平屋の点在する一帯を呑みこもうとしていた。ただし霞は完全に併呑するには至らず、それ故に村落は星明りの下で幻想的な風景を作り上げている。
十時間に及ぶ踏破の末に彼がそれを見出した時から、谷からは一切の生気が消えていた……否、それを感じ取るのに必要な距離に、彼らが達していなかったためであった。つまりは一目見た瞬間に、住民の気配が感じ取れないという意味では眼前の光景は異常にすら彼――二等陸曹 高良 俊二には見えた。むしろそれが、これまでノドコール中北部の過半を占める鬱蒼たる森林に同化すべく、只管埋没させて来た自我を覚醒させる切欠になったことは確かだ。
『――シュンジ、接近する。遅れるなよ』
聴覚を直に打つ骨伝導式イヤホンに、俊二はその行動の動機を得て立ち上がる。声の質は若く、その響きは時として幼さすら感じられる。既に起き上がり、闇一色の林間を駆け出した影の背後を掛け足で追いつつ、俊二は戦闘服とタクティカルベストに覆われた背を屈め、64式小銃改のグリップをしっかと握り直す。ごく平均的な特殊作戦群の野戦装備、だがそこに違和感があるとすれば、頭頂から顔、そして上半身の半ばまでを覆い包む布切れであろうか……ノドコール先住民の伝統衣装の一つというそれは、傍目から見れば奇異であり、一方で日本から持ち出して来た最新装備との組み合わせは、外目には独特の野趣すら醸し出していた。
「…………」
理由は判らないが、やけに張り切っている――俊二は彼の相棒たる「ケンシン」こと三等陸曹 伏見 憲伸の挙動がそのように見えた。自分が彼の後を追うのは当然の流れだ。なにせ特戦では年齢的に未だ20を出ていない彼の方が自分よりも「先任」なのだから。
再びスロリア――厳密に言えば初めてノドコールに足を踏み入れてから三日も経たない内に、俊二と彼の属する分隊を取り巻く情勢は一変した。初日の武器弾薬集積所破壊などは、その建設と隠匿自体が日本、ローリダ双方の同意なき武器集積の禁止を謳ったノイテラーネ条約違反であることから事実上有耶無耶になったが、むしろそれを契機として、ノドコール国内のローリダ側武装勢力の蠢動は一層烈しさを増すことになったと言える。それを掣肘するべき植民地総督府は、先々月の密輸船制圧任務の際に収集した物証を突き付けてもなお、事実関係の確認を理由に具体的な事態収拾の動きすら見せず、むしろ「反動勢力」の暴挙を黙認せんとするかのような節があった。その後に、真の波乱が訪れた。
『――これより開拓者たちは、彼ら自身の意思によって、彼らが後世の賞賛を浴びるに相応しい行動を取るであろう。そして何人たりとも、現在から後世に至るまでこれを批判する権利は持たないであろう……すなはち、独立! 分離独立である』
簡易衛星通信システムで傍受したローリダの外交使節の発言と、その直後に東京より命ぜられた情報収集任務は、これまで敵味方の帰趨すら判然としない、終わりの見えない蠢動のみの目立つ処であったスロリアの諸情勢に、新たな局面を与えるのに相応しい衝撃を以て俊二には感じられた。それはまた、二等陸尉 鷲津 克己をはじめ俊二の属する陸上自衛隊特殊作戦群 第2小隊D分隊のメンバーもまた軌を一にするところだ。
独立?……どういう意味だ? ノドコールにローリダ人の国家を打立てるということか?……もしそうだとして、ナードラというローリダ人の使節は、そのようなことが出来ると本気で信じているのか?――思考を巡らせつつも、呼吸も歩調も乱れることは無く、その上に周辺に対する警戒も忘れない。木々の生い茂る間を縫って走り、上下にうねる傾斜を上り、駆け降りる……駆ける内に木々の広がりが疎らになり、そして向かうべき先が開けている。朧ながら光さえも見えた……電気やガスの類では無い、純粋なる火から成る、自然の恩恵としての灯だ――それが、俊二とケンシンが目指す村落の一角に辿り着くまでの経緯。
『――止まれ』
拳を上げ、ケンシンが停止を促した。ケンシンと距離を置き、俊二は手近な木陰に身を顰める。測遠器付き双眼鏡を構えて村落の偵察に取り掛かる俊二を離れて凝視するのも一瞬、ケンシンは滑るように俊二へと近寄り、そしてすぐ隣を占めた。
「……?」
「……」
双眼鏡から目を離した俊二を、躾の悪い獣のような、不機嫌な眼差しが迎える。直後に不承々々という風にケンシンは得物の89式カービンを構える……困惑する俊二の脳裏で、出発前に鷲津二尉が告げた言葉が蘇る――
「おまえらは仲良さそうだから、バディを組ませてやる」
「……!?」
「ハァ!?」
あのとき、大仰に声を上げたケンシンは、やはり先程と同じ眼をして自分を見返して来た様な気がする。それから現在までを、二人は殆ど無言で過ごして来た。それ程親密では無い同僚同士のような関係……というよりは何かしらの理由でしっくりいかない恋人同士のような感覚――これまでの軍歴ではなく、純粋な人生経験から俊二はそれを思い、思わず相好が緩んだ。ただしそれが彼個人の嗜好に合わない、生物学的に不自然な感覚である事を俊二は知っていた。
「フフッ……」
『なっ、何が可笑しい?』
「別に……」
惚けた様に応じ、俊二は双眼鏡を構え直す。円形の狭い空間の向こうには靄に拠る視界の不明瞭こそあっても、そこに在るべき一切の生命の見出せない不自然な空気が流れていることは判った。思い出したように俊二は双眼鏡から眼を離し、傍らのケンシンを見遣る。
「時間だ」
「わかってるって」
ぼやきつつ、ケンシンもまた腕時計を嵌めた手を翻した。プロトレックのデジタル表示が、事前に決めておいた次のフェーズへの移行時間へと差し掛かる――
『――此方アルファ、配置に付いた。各隊どうか? おくれ』
『――ブラヴォ、アウト』
「チャーリー、アウト」
喉頭式マイクを抓みつつ応じたのはケンシンだった。短い交信を終え、構えた89式カービンの銃口を前方に向けつつ小走りに進む。彼の進路はそれまで二人が潜んでいた場所と村の境界に跨る黄土色の草地を指向している。草地?……違う。それが収穫のされないままの陸稲であることに俊二が気付いたのは、完全にその茂みの中に入ってからのことであった。鈴なりに実を孕んだまま頭を垂れる作物の織り成す、金色の絨毯を縫うように二人は進む。敵地への浸透という意味では、ケンシンの判断に問題は無い様に思われた。
『――ブラヴォ、援護頼む』
『――ブラヴォ了解』
『――未だ村に入るな。接近するだけだ』
稲穂の海を搔き分けつつ、本隊と別働隊の交信を聞く。村落を取巻く谷の何処かに潜むトウジこと二等陸曹 賀上 冬二と、ブレイドこと同じく二等陸曹 柳 斗夢からなるブラヴォチームを俊二は思い浮かべる。ケンシンと組めと鷲津隊長に言われたとき、トウジは大仰なまでに悔しがって暫しの別れを惜しんでくれたっけ……そのトウジは今、遠距離狙撃用のM82対物ライフルを構えるブレイドの傍らに在って、観測手の役割を上手く勤めてくれる筈だ。
陸稲畑の切れ間に達したところでケンシンは身を伏せ、俊二もそれに続いた。そこからは匍匐でケンシンの隣に付く。二脚を立てた64式小銃改を伏射で構え、ピカディニーレールに繋がれた四倍率ブースター付きダットサイトを覗く。ケンシンはといえば同じく伏せた姿勢から双眼鏡を覗き周辺の監視、そして俊二の獲物の物色に掛かっていた。
『――西側だ。焚火が見える……戦闘員と思しき影が三……いや五』
ケンシンの見立てを聞きつつ、俊二は64式改の銃身をその告げるがままに巡らせた。照準鏡の導く先に焚火の揺らぎ、それを囲むように佇む複数の影を見出した時、俊二の手は止まった。
『――こちらチャーリー、村人の生き残りと思しき人影を六名視認。全員後ろ手に縛られ座らされている……戦闘員が近付いてくる。やつは拳銃を持っている……いま一人引き出された……!』
「……」
サイトを睨みつつ、俊二は溜めていた息を吐き出した。現地人の服装をした男、しかし背中に自動小銃を背負った男がひとり、彼が引き出された虜囚の一人に烈しい言葉を浴びせかけ、あるいは彼の胴と言わず足と言わず蹴り続ける――それがケンシンの独白にも似た報告の後に続いた光景だった。そして男は、一方的な暴力の末に微動だにしなくなった虜囚に、手にした拳銃を躊躇いもなく向ける――銃声が一発。
『―― 一人撃たれた。コブラ、どうすればいい? 指示をくれ』
報告を続けるケンシンの口調からは、余裕が無くなりつつある。
『――チャーリー、おまえの位置から制圧できるか?』
「こちら高良、自分にやらせて下さい」
『――よし、やれ』
反射的に声が出た。俊二には絶対の自信があった。64式を構え直す俊二に身を寄せ、ケンシンが囁く様に言った。
「……ばか、六人もいるんだぞ。撤回するなら今の内だ」
「ケンシン、観測手を頼む」
それだけを言い、俊二は照準鏡越しに目標の位置を測ろうと試みる。俊二の挙動に合わせて双眼鏡を握る辺り、ケンシンは俊二の言葉には従順であった。照準鏡の丸い視界の中で、それまで散々虜囚を虐げ、嬲っていた戦闘員らが、虜囚に興味を無くしたように焚火から離れて各々に話し込み、あるいは廃屋の傍で煙草を燻らせている者もいる。紙巻き煙草――俊二は敵の素性を察する。ノドコール人に、紙巻き煙草を吸う習慣は無い。
「俊二、一人離れていく……右だ」
「……」
銃身を巡らせた先で、半ば潰れかけた廃屋に佇む人影を捉える。自動小銃を背負ったそいつは此方に背を向け、足を開いて股間を弄り始めた……
「……小便か。いいぞ、あいつから片付けよう」
「……」
赤い照準点が男の後頭部、そこからやや下がって脳幹の位置に重なる。同時に俊二は息を止め、引鉄に触れる指に力を篭める――
「――!」
放たれた一発は戦闘員の脳幹を過たずに貫き、顎を砕いて外へと抜けた。恐らく彼は自分でも知らない内に、さらには彼の仲間の関知しない内に死んだ。消音器に抑制された発射音と炎は、靄と寒風の唸りの中に融け、誰にも感取られなかった。
「グッキル……!」
小声でケンシンが叫んだ。殺した相手にはもう眼もくれず、俊二は次の獲物を探る――虜囚たちと焚火を挟んで座り込み、彼らに背を向けて話し込む戦闘員がふたり。彼ら以外の誰もがふたりから距離を置いて背を向け、何かを待っているように佇んでいた……そのひとりの横顔に、照準点が重なる――
「――!」
左のこめかみから右のこめかみへと抜けた一発。ただしそれは同一人物のこめかみではなく、焚火を前にしたふたりのそれであった。糸の切れた人形のように重なり斃れるふたり。それまで彼らに背を向け、周囲を警戒していた男が、咥え煙草もそのままに背後を顧みたとき――
「あ……!?」
「――!」
更なる一発は男の胸板を貫いた。それは心臓の位置だった。口から咥えていた紙巻き煙草を溢し、同時に足許から崩れ落ちる様に斃れる男――同じく外へと気を取られていた五人目が事態の急変に気付き、手にした携帯無線機に顔を近付けようとしたそのとき、俊二の放ったもう一発は男の眼球から脳天へと抜け、彼をも昏倒させた。
「敵襲っ!!」
その声は近く、そして大きかった。照準鏡から顔を上げた先、何時の間にか此方に迫った六人目の姿を俊二は見出す。伏せた姿勢のまま、銃を手榴弾に持ち替えた男が一人。怒りと弑虐に眩んだその眼と、俊二の眼が合った。
「――!」
連射音!――その後には全身を貫かれ、生気を失った眼もそのままに伏せて動かない敵戦闘員がひとり。それに向けられたままの89式カービンライフルの銃口からは、白い硝煙が上がっていた。それを構えるケンシンの眼は、夜の冷気に劣らず醒め切っている。
「……?」
「脅威排除。行くぞ!」
俊二の肩を叩き、ケンシンは89式カービンを構えて走り出した。俊二も彼の後に続く。後方と左右を警戒しつつ走り、火勢の衰えた焚火の傍に達する。縄に繋がれていた男たちは、呆然とした表情もそのままに俊二たちを迎えた。焚火を取巻く闇と霧の中で、次々と叫び声も上げずに斃れていく殺戮者たち……それが、彼らがこの夜目の当たりにした全てだったのだから。
「解放戦線の者か?」
「おれは違う。こいつとこいつがそうだ」
縄を解きながら問う俊二に、虜囚の中で最年長と思しき男が応じる。自由を取り戻した男たちのひとりに、ケンシンが戦闘員の銃を放った。
「銃は使えるな?」
頷いた虜囚に、ケンシンは死体へ向け顎をしゃくる。ノドコールの男たちが銃を得るべく死体に取り付いているのを見遣りつつ、ケンシンは喉頭式マイクを抑えた。
「こちらチャーリー、西の敵は処理した。ノドコール人を五名保護。このまま前進したい。送れ」
『――こちらアルファ。東側にいる。中心部に敵戦闘員を視認中。中心の道路へ向かって進め。終わり』
ノドコール人に武器を渡す中、俊二は敵戦闘員の死体に違和感を覚えた。空虚な眼差しを覗かせたままの死体の頭、顔に至るまでそれ全体を覆う布切れに手が延び、布を掃った俊二の眼が、軽い驚愕に引き攣る……金髪。鼻筋の通った、堀の深い顔。何時しか傍に立ったケンシンを見上げ、俊二は言った。
「見ろ、ローリダ人だ」
「こっちは違う……異国人だ」
背後の死体を指差し、ケンシンも頷く。俊二の手が再び死体に延びる。上半身を占めるマガジンパウチに繋がれた黒い物体を取り上げ、俊二はそれを凝視した。
「日本製の携帯無線機だ。軍用じゃない」
日本では街のホームセンターや家電量販店ならば何処にでも置いてある小型無線機であった。俊二としては機器そのものに対してではなく、むしろこのような場所でこれを使っている敵の内情に対し興味が込み上げてくる。ノドコール人を解放戦線の人間に掌握させ、俊二とケンシンは前進を急ぐこととなった。
「ケンシン、さっきは助かったよ。有難う」
「気を付けろ……ばか」
返事は素っ気なかったが、その声には何故か聞き慣れぬ戸惑いが感じられた。支道の隅、農道の方向へ歩を速めるにつれ、自分たちの身が星明りからも遠のいていく様に感じられた。期せずして二人は同時に暗視装置を起動させる。頭部全体を覆う布の上に重なる電子の眼……傍目から見ればそれは凡そ人間の姿では無い、まるでハードSF小説に出てくる機械の兵士か異星人のような出で立ちだった。寄る辺ない暗夜にあっても眼前の全てを明瞭にする薄緑色の視界……だが、その中に飛び込んで来たものに、俊二は進みながらに息を呑む。
『――やつら、相当殺してやがる』
先を行くケンシンの声には明らかな嫌悪があった。側溝を埋め尽くす老若男女の死体、その何れもが裸体だった。視点を転じれば道端に佇む木、その枝にはやはり縛られた人体が二、三体、その何れも首から吊るされている。暗夜ゆえ遣り過ごせなかったノドコール人がそれに触れ、驚愕の悲鳴が俊二とケンシンの背中を震わせた。
「止まれ」
小声で話すと同時に拳を上げて隊を掌握する。ケンシンが道端に広がる陸稲畑を指し、ノドコール人に付いてくるよう促した。俊二は隊列の最後尾を占め、後背を守ると同時に脱落者を防ぐ予防策を講じる。
『――ブラヴォ、村を南北に縦断する農道が見えるか? おくれ』
『――視認しています』
『――農道の真ん中に居座っている馬鹿でかい装甲車は見えるか?』
『――見えますが、狙うには少し遠いですね。接近してもいいですか?』
『――許可する。配置に付いたら報せろ。終わり』
『――ブラヴォ了解』
交信を聞きつつ、丈の高い稲穂の海を泳ぐように進む。暗視装置の自動光量調節機能が機能し、前方に垣間見える光の連なりを抑制するのを見る。同時に村道上に鎮座する見慣れない車列、その端々を行き交う人影も……
『――止まれ』
ケンシンと俊二は列を散開させた。此方が撃つまで撃たないよう念を押すのも忘れなかった。俊二はケンシンの傍まで寄り、双眼鏡で路上を覗く。
『――アルファ、チャーリー配置に付いた。前方に装甲車が二台。トラックが三台見える。送れ』
『――外見はノドコール人だが、中身はれっきとしたローリダのサイコ野郎だ。何時でも殺せるが命令するまで撃つな』
『――チャーリー了解。終わり』
交信を打ち切ると、ケンシンは俊二に言った。
「シュンジ、二人連れてやつらの後方に回れ」
散開していた五名の内二名の肩を叩いて追従を促し、車列を後方から見通せる位置にまで進む。配置に付くのと同時に、鷲津二尉の指示がイヤホンに入って来た。
『――アルファ攻撃用意。カウントダウン……』
「……」
64式改の照準を、車列の最後尾に在って戦闘員の掌握に当たる男の脳天に合わせる。
『――5、4、3、2……』
「――」
引鉄に指を充て、息を止める。
『――ゼロ!』
「――!」
俊二が放った一弾は男の脳天を砕き、そして斃した。同時に背景のトラックが黄色く輝き、次には紅蓮の炎と熱風とが稲穂の犇めく野に襲って来た。漣のように広がる銃声と弾幕の交差。それを掻い潜る様に俊二たちは距離を詰め、俊二は炎を背景に動く者を手当たり次第に撃ち斃した。付き従う二人も彼に続いた。延びる曳光弾の線が炎上するトラックの荷台を掠め、火花が生まれる。先頭車の更なる爆発が周囲で応戦する戦闘員を呑み込み、後方へ逃れようとする戦闘員が俊二らの射撃に捉われ、さらに撃ち斃された。地上車の上に装甲板を張り巡らせただけの簡易装甲車の砲塔が回り、直後に止まった。砲塔のハッチが開き、外へ這い出ようとする戦闘員の影――直後にそれは高速で飛来する光弾に真っ二つに引き裂かれ、更なる一撃は装甲を貫き炎上させる。ブレイドが撃った対物ライフルだと直感する。
「ついて来い!」
64式改のダットサイトを等倍に切換える。フォアグリップを握り、俊二は二人を伴って走り出した。尚も応戦しようとする戦闘員を連続で、それも近距離から撃ち斃す。空になった弾倉に新しい弾倉を引掛けて落とし、迅速に装填し撃つ、撃つ、撃つ!――全てが俊二の疾走の合間に為され、それ故に俊二の前進を止める何者も彼の前には存在しなかった。火達磨になり何処へともなく駆け回るかつての敵兵であった誰かの人影が、数歩歩いて力尽きるか、やがては苦悶の内に彷徨した末に闇と靄に融け込んで消えた。俊二が反対側から迫って来る鷲津二尉らの姿を見出したのは、そのときだった。生きた人間の気配も、路上から完全に消えていた。
「シュンジか!?」
開口一番、鷲津は俊二を屈ませ、自らも身を屈めた。
「よくやってくれた! 南から敵の大部隊が迫っている。撤収だ」
「はいっ……!」
ケンシンを始め、分隊の仲間たちと合流を果たす。その中でもグレネードランチャー付89式カービンを片手に提げ、悠然と歩み寄って来るハットリくんに、俊二とケンシンは眼を奪われた。車両を舐め尽す炎のオレンジ色に照らし出された仮初の顔。その無表情の下に宿る真の感情を、恐らくは誰もが量れずにいた。
『――こちらレンジャーワン、デルタ各隊へ。トラックを奪取した。北の外れで待つ』
「…………」
鷲津隊とは別に、北面からの浸透を果たした「導師」壱岐 護三佐率いる義勇兵部隊のことを俊二は思い返した。鷲津二尉が俊二の後に続いたノドコール人の姿を認め、眼を細めた。
「生存者はこれだけか?」
「はい……残念ながら」
苦渋の表情もそのままに頷き、鷲津は立ち上がった。
「全員離脱! このまま北へ向かう」
鷲津隊長、ヤクローらが掃討した一帯の、藁束の積み上がった一角を部隊は進んだ。その過程でも俊二は死体を幾つも見出す。だがそれはノドコール人ではなく、ノドコール人の姿をした武装した誰かであった。進むにつれてその数は増え、俊二としては前を進む鷲津二尉に対し、戦慄にも似た感慨を抱かざるを得ない。たったふたり……いや三人で、これだけの敵を葬ったというのか?
『――伏せろ!』
鷲津二尉の怒声に、俊二は滑り込む様にして藁束の陰に潜んだ。野太い射撃音が至近から響く。それは暗夜を乱れ飛ぶ赤い弾幕となり俊二たちの居場所を飛び越える様にして遠方の平屋に弾着し、即座に炎上させた。藁束の陰から遠方を一瞥し俊二は息を呑む。ディーゼルの咆哮も高らかに、家屋の連なりを突き破るように飛び出して来た軍用の装甲車が二……いや三両。その何れもが車上に機関砲を装備しているのが判った。星明りに照らし出された黒い輪郭が、俊二に現在対峙している相手がローリダ軍の装甲兵員輸送車であることを認識させる。どうしてこんなところに!?……というよりどうしてこんなときに!――という怒り混じりの困惑は、文字通りの「晴天の霹靂」によって霧散してしまう。
そのとき――
雲間を貫き、地上に向かって刺さる光が一……いや二条。
「――!?」
最初は流星かと思った。
だが夜空を背景に黄色い尾を引くそれが、轟音と共に地表に着弾し装甲車を一掃する火柱となったとき、俊二は愕然として破壊の光景に眼を奪われる。
『――ボサっとするな! 進め!』
隊を励ます鷲津二尉の怒声に鞭打たれたかのように俊二は立ち、そして再び走り出す。
「C‐130……?」
ふと仰いだ夜空、灰色の雲間に機影が浮かんでいるのを俊二は見た。
ノドコール国内基準表示時刻12月27日 午前3時11分 ノドコール中北部 AC‐130J支援輸送機3号機 「ワルプルギス」
暗灰色の雲の森を、鵬翼は搔き分ける様にして飛び続けていた。プロペラの回転音とタービンの駆動音との、絶妙の配合で入り混じった鼓動が、鵬翼に異郷の夜空を踏破させるだけの勢いを与えていた。
『――機長より各員へ、間もなく作戦空域上空。配置に付け』
「――」
操縦桿を預かる抑揚に乏しい声が機内に響いた瞬間、スロリアの飛行場を離陸して既に三時間近くを赤い夜間照明に支配された狭隘な空間に、今更のように生気が戻ったかのような雰囲気が満ち始める。同時に機が僅かに左に傾き、それに気速すら加わって鵬翼の征路に一層の躍動感を与えていた。航空自衛隊 特殊作戦航空団所属のAC‐130J支援輸送機3号機 コールサイン「ワルプルギス」の鵬翼は夜空と雲海を背景とした孤影となり、そして戦場を俯瞰する高みを占めるに至る。マルチモード‐フェイズドアレイレーダーを収めた機首の一角に標された、逆さまの魔女のシルエットを象ったパーソナルマークの色は、胴体のロービジ塗装に融け込むように薄く、だが見る者の背を震わせる存在感を保ち続けている。
『――機長より各員へ、現在作戦空域上空』
特殊支援機3号機 通称「ワルプルギス」の機体下面、そこに繋がれて下界を睥睨する下方監視赤外線ポッドが、その操作を一手に預かる「ワルプルギス」のTVオペレーターに見せる世界には、温度の高低に基づく白黒ふたつの色しか無い。だがそれ故に、星明りすら届かない暗夜であっても、見る者に下界に存在する一切の明瞭な輪郭を把握させることが出来る。TVオペレーターの預かる広角端末の中で、下界の温度の高低はそのまま物体の形状、そして躍動すら造型し、「ワルプルギス」の浸透を知らぬ地上に対する絶対の優位を確保させるに至っていた。比高4000から5000メートルの作戦空域の上空を、「ワルプルギス」は暗黒の大地を睥睨するように左旋回に入り、それは半径を変えつつ繰り返されるに至る。何故ならAC-130Jはその搭載する兵装の全てが機の左半身に集中している。プロペラ推進機の特性上、AC-130Jは良好な旋回を維持可能な左旋回を作戦空域で反復させ、広範囲にわたり地上の特殊部隊に対する支援火力を提供することを求められているからだ。
やがてDLIRはTVオペレーターの操作によりその指向する方向と倍率を換え、やがては眼下に広がる村落の只中で北へ向かって農道の両端を走る一団を捉える。
『――こちらTV、特戦を視認した。北へ向かっている』
DLIR画像端末の中で、銃を構えて暗中を躍動する真白い影が複数。その中には背中や肩に、肉眼では捉えられない赤外線の光を瞬かせている者もいる。その瞬きこそが、機上の面々にとって眼下の人影の素性を把握する唯一の標であった。一方「ワルプルギス」コックピット、TVオペレーターの操作する端末と連動する多目的表示端末の画像を根拠に、機長は新たな指示を下すことになる。
『――機長より各員へ、IRストロボを焚いているのは味方だ。誤射に注意せよ』
TVオペレーターの報告は続いた。
『――村の西端より中心部へ向け移動中の車両を発見……数二両……装甲兵員輸送車と思われる。周辺に人員の散開を確認』
何度目かの左旋回に差し掛かる頃に報告が終わり、新たな報告が生じる。報告の度に、戦闘配置を表す赤色灯の下で張り詰めた空気が醸成されていく。
『――南の森から人間の移動を視認。多数散開し村の北側へ向かっている』
『――TV、やつらは武装しているか?』
DLIRの倍率を拡大し、TVオペレーターは所属不明の一群を凝視するようにした。経験と訓練に基づく各種の情報が彼の眼前の光景と合致し、よって彼が結論を出すのは早かった。
『――こちらTV、武器の所持を確認……あっ、装甲車が発砲。移動中の味方が捕捉された模様』
TVオペレーターが見たのは、味方の進路を遮るように家屋を潰しつつ出現したスカラベのような車体が、その上部から機関砲の弾幕を展開する姿であった。弾幕は真白い粒の連なりとなって散開する味方の周囲に飛び散る様に着弾し、黒い大地の只中に火花の白を咲かせていた。事態が切迫していることを、機上の誰もが悟った。
『――ジャブローよりワルプルギスへ、移動中の車両及び敵戦闘員との交戦を許可する』
『機長より各員へ、交戦許可が出た。地上の味方の位置に留意し火器を使用せよ。火器管制幹部、兵装選択は任せる』
地上の状況は、データリンクにより後方の作戦司令部も共有するところとなっている。司令部からのゴーサインは、「ワルプルギス」がその真価を発揮するに必要な垣根をひとつ越えた瞬間であった。機長の指示を受け、兵装の使用に関する一切を管轄する火器管制幹部が、戦術情報表示端末に向かい声を張り上げた。
『――FCO了解、目標敵装甲兵員輸送車、使用火器は105ミリ。弾種榴弾、用意!』
『こちら105ミリ、準備完了!』
「ワルプルギス」の最後部、機でも最大の威力を有する105ミリ軽量砲の専属装填手が声を弾ませた。本来近接戦闘車用の軽量砲を流用した装備であり、砲弾は旧型の74式戦車の主砲専用弾を使用する。この世界に存在するあらゆる装甲車両を撃破可能である事は勿論のこと、発射角度によっては戦車すら破壊することが可能だった。目標自動追尾モードに転じたDLIRの画像表示端末の中で、照準カーソルが弾幕を巻き続ける装甲車の一台に重なる。
『――TV、照準よし』
『発射!』
機長が操縦桿の発射ボタンを押し込む。AC‐130Jにおいては発射に至る全ての過程は乗員の職掌だが、火器の投射は如何なる場合でも機長のみに与えられた権限であった。左旋回姿勢の「ワルプルギス」から放たれた鋼の矢、それは黄色い流星となって星空を割き、数秒の時差を以て寸分違わぬ照準で敵装甲車をその上面から貫いた。対装甲用の徹甲弾では無かったが、加速を付けて叩き込まれたそれは装甲の薄い兵員輸送車を四散させるのに十分な破壊力を発揮する。爆発の光芒が真白い光と高熱の発露となってDLIR端末に生まれ、着弾の衝撃波は周囲の家屋と散開していた敵戦闘員を弾き飛ばし、かつ呑み込みつつ拡大していく。
『――命中! 再度撃て!』
駄目押しの二発目は、友軍の前に出現した脅威を、生残りの装甲車諸共消滅させるに過分なまでの威力を持っていた。
『二両撃破! 脅威の消失を確認』
戦果を告げるTVオペレーターの眼前で、再び前進を開始した友軍の一行。農道を進みきったところで彼らは、敵のトラックを確保した別働隊と合流する。
『――デルタよりワルプルギスへ、解放戦線と合流し車両を確保。これより幹線道路に出、回収地点まで移動する』
『――了解、援護する』
地上の友軍指揮官と機長との交信を聞く頃には、「ワルプルギス」は地上の味方と距離を取るコースに入っている。敵味方識別のため屋根にIRストロボを取り付けたトラックが土煙を上げて動き出し、「ワルプルギス」は左旋回から再びそれに接近する態勢となった。
『――発射角の補正完了、何時でも撃てます』
『――彼我の交戦距離が近過ぎる。敵戦闘員の捜索を徹底させよ』
火器管制幹部の報告を聞きつつ、TVオペレーターの操作するDLIRはトラックの向かう先たる幹線道路へとその電子の眼を注ぐ。幹線道路脇の耕地に進出し、トラックを伏撃するべく散開する敵戦闘員の白い影が、TVオペレーターに更なる緊張をもたらすのだった。
『――幹線道路脇に敵戦闘員多数。味方への接近を図る模様』
『――使用火器40ミリ、連射。奴らを近付けるな』
「ワルプルギス」のもうひとつの兵装――40ミリテレスコープ弾機関砲もまた、やはり近接戦闘車用に開発されたものであり、薬莢の中に弾丸を埋め込む構造を採用して弾丸の小型軽量化を達成したことにより、機関砲自体の小型軽量化をも達成している。発射速度も200発/分と高く、これを「ワルプルギス」に当て嵌めれば、敵地上部隊に対し瞬間的に制圧用の弾幕を投射し得ることを意味していた。
『――TV、照準よし』
『――発射!』
けたたましい駆動音を発し、40ミリ機関砲が夜空の中を咆哮する。弾幕の鞭は「ワルプルギス」と地上を赤い光の数珠で繋ぎ、僅かな時差を経て照準点に重なった狭隘な空間に、それも短時間の内に豪雨の如く注がれた曳光弾と徹甲弾、そして炸裂弾が幹線道路に面した地上を舐める様に乱打する。そこに居合わせた全ての人間が蹂躙され、粉砕されていく。彼らの中には突然の攻撃に銃を棄て、逃げ惑う者もいたが、彼らですら結局は逃れ切れずに弾幕の織り成す白い嵐の中に取り込まれ、そして分子レベルにまでその身体を抹消されていった――掃射が一段落したその後には、かつて人間だった何かが、未だ熱を持った白い痕跡となって、DLIR制御端末の映し出す下界の所々に点々と散るばかりであった……生きているもの全てが消え去った幹線道路を、IRストロボを瞬かせつつ独り走るトラック。
『――命中! 敵戦闘員の撃破を確認!』
トラックに先行する形で「ワルプルギス」の援護は続いた。伏撃地点を確保すべく家屋の隅を蠢く一隊に向けて40ミリ機関砲を撃ち、支道に潜み攻撃の機会を伺う装甲車とその随伴歩兵に向け105ミリ軽量砲を撃つ。着弾の真白い瞬きがTVオペレーターの網膜を灼き、それは戦慄と共に彼の脳裏にも焼き付けられていく。不意にトラックが止まり、乗込んでいた男たちが散開して狭隘な山道を走り始めた。トラックの大きさではゴールまで辿りつけないのだ。
『――デルタよりワルプルギスへ、これより車両を降り徒歩で回収地点まで移動する』
『――了解、機長より各員へ、味方は車両を降り徒歩で回収地点に向かう。ストロボに注意しこれを支援せよ。重ねて言う。ストロボを焚いているのは味方だ。ストロボを焚いていないものは全て敵だ。見付け次第地上から駆逐せよ』
『――味方の進路上に敵戦闘員多数! 家屋の屋根の上にいる!……ロケットランチャーを視認』
藁葺きと思しき広大な平屋、その屋根に上りデルタ隊を伺う戦闘員の影が複数。その内二名が携帯ロケットランチャーを抱えているのをTVオペレーターは視認した。
『――使用火器20ミリ。照準急げ』
ロケットがデルタ隊に向けられ、放たれたロケット弾が白い軌道を描きデルタ隊の至近で炸裂する。デルタ隊は前進できず、只管彼らに対する応戦を続けている。
『――TV、照準よし』
『――発射!』
40ミリよりもきめ細かく、そして散布間隔の広い弾幕が平屋とその周辺に落着する。20ミリ回転銃身式機関砲は威力と有効射程こそ他の兵装に劣るが、破壊を拡大せずに制圧を完遂できるという点では有効な装備であった。
『命中! 命中!』
着弾に炎上し、崩れ落ちんとする家屋を避ける様にデルタ隊は山道を走り始めた。事前に設定された回収地点まで指呼の距離であった。しかし回収地点の西の森、敵の追撃隊の影はそこまでに迫っていた。荷台に機関銃を据え付けた小型トラック、立錐の余地もない程に戦闘員を満載した大型トラック……それらは回収地点を挟み友軍とは反対側の地点で停止すると同時に荷台より戦闘員を吐き出し、彼らは森の中を回収地点に向かい浸透せんと試みる。彼らの一部は回収地点の外縁にあって、迫撃砲の設置すら始めていた。地上の友軍もまた応戦を始めている。夜の森に生じる彼我の曳光弾の応酬。回収とは言っても到底ヘリの降りられる状況ではなかった。
『――デルタよりワルプルギスへ、回収地点に到達した。敵の攻撃が烈しい。援護をたのむ』
『――回収地点の北と西より大規模な戦闘員の展開を視認。使用火器の指示願います』
『――使用火器105ミリ。味方に近い敵から狙う』
『――目標西方からの敵戦闘員。照準よし』
『――発射!』
放たれた105ミリ軽量砲の砲弾は二発。その着弾はトラックとその周辺の戦闘員をことごとく吹き飛ばし、そして彼らの潜む森ごと消滅させた。
『――西方の敵消滅を確認。第二目標北側の敵戦闘員、照準よし』
『――発射!』
敵の所在に向かい軽量砲を撃つだけでも十分に効果はあった。生き残った敵兵の中には撤退を始めている者も見える。理性的な判断の為せる業か、それとも天から襲い来る死を前に気を狂わせんばかりの恐怖に突き動かされたのか、上空から一部始終を伺う身では、それ以上を推し量ることは出来なかった。そこに機長の駄目押しの指示が続いた。
『――西側から再度掃討する。使用火器40ミリ』
左旋回の半径が狭まり、回収地点を取巻く一帯に向け40ミリ機関砲の弾幕が降り注いだ。ベースソロモンより差し向けられた輸送ヘリが戦闘地域の上空に到達するまで、それは続いた。
『――こちらガンペリー、回収地点を視認。これより着陸し友軍の回収に入る!』
左旋回を続けるAC‐130Jの機上、DLIRの制御端末の中でCH‐47Jチヌーク大型輸送ヘリの重厚な機影が、赤外線灯を瞬かせつつ回収地点に向かい高度を落とし進入する。タンデムローターを構成する巨大な回転翼の先端が、乾燥した冷気と触れ合うことで静電気の滞留を生じ、何時しか前後に交差する光の環を作り上げていた。後部カーゴドアを開きつつ着陸するチヌーク。回転を落としたメインローターに掻き乱された気流が土埃を舞い上げ、その揺らぎはDLIR端末の画像にも明瞭に捉えることができた。チヌークの斜め後方から続々と駆け込み、キャビンへと足を踏み入れては消えていく真白い人影の列――
『――ガンペリー、地上部隊の収容を完了。離陸する!』
回転を速めたローターの光の環が再び浮遊し、チヌークの巨体を軽々と夜空へと持ち上げていく。それが一切の銃弾の届かない高度に達し、チヌークの機首が向かうべき南西を指向したのを見計らい、「ワルプルギス」機長の声が張り詰めたキャビンの空気に伝わる。
『――機長より各員へ、任務完了。「ワルプルギス」はこれより作戦空域を離脱する……各員御苦労だった』
左旋回の角度が緩み、完全な水平姿勢に復するのを乗員の誰もが悟った。戦いを終えた「ワルプルギス」はすでに東へとその機首を指向し、徐々に高度を上げ始める――