終わりに
数日後。村には、戦車が入り、家々を次々と焼き払った。
残った村人は、全員殺され、その大地は血で染め上げられた。
「ねぇ、アル」
「なんだ? エル」
「わたし、ずっとここにいて良い?」
それでも、森の中は静かだった。戦車が入ってくることも、銃撃戦が始まることもない。
「もう良いさ。ずっと、ここにいても」
アルは、穏やかな笑みを浮かべて、エルの頭を撫でた。
「構わないだろ? ヴァイス」
『我は、あのお方に従うだけだ』
狼は、そう言ってぷいとそっぽを向いた。
「ハハッ。きみは、変わらんな」
「あのお方って、金色の髪をした人?」
「そう。おれの師匠」
アルは笑顔を浮かべた。
「その人は、今どこに?」
「また眠ってるよ。こないだのは、叩き起されたようなもんだからな。また寝なおすって」
「また、いつか会えるのかな?」
エルは、首をかしげた。
「さあな。あの人は、ある意味、幽霊のようなもんだしな」
『本人に聞こえてると思うぞ』
「聞いてるの?」
エルはびっくりして、聞き返す。
「あの人は、すべてをわかってるって感じだしな。おれも、よくはしらねェんだ」
「不思議な人なんだね」
彼女は、くすりと笑った。
「今度会ったらお礼を言わないと。助けてくれてありがとって」
「その言葉も、聞こえてると思うぞ」
「本当?」
「ああ、本当さ」
二人の楽しげな会話が、森にこだました。
昔、昔のお話です。
それは、ある人たちが世界を支配していたころがありました。
その人たちは、力で、世界を支配していました。
あるとき、その人たちの支配から抜け、自由になろうとしたものが現れました。
その人たちは、世界中の人を仲間にして、とうとう自由を勝ち取りました。
世界を支配していた人たちは、自分たちの身が危なくなると思って、深い森の中に閉じこもってしまいました。
森には、凶暴な獣たちを放ち、誰も、自分たちに近づけさせないようにしました。
いつしか、その森は、呪いの森と呼ばれるようになりました。
いつからか、その森は、悪い悪魔を封じる、封印の森とされました。
森の周りに、悪魔たちが出てこないように、見張りを立てました。
悪魔たちが、入って来られないように、高い壁を築きました。
そして――




