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リストで生き延びます!~悪役令嬢、社畜スキルでハッピーエンドを手に入れる~  作者: 「大和 尚羅夢」小花羅夢一生推し


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17/19

婚礼と新政

ス」設立宣言】

【16:00 初会議】

【……って、マスター、新婚初日から会議ですか!?(;゜Д゜)】

ベルの声が、いつものように軽快に脳内に響く。この二年間、ベルは彼女の最も頼りになる相棒だった。契約書の細かな条項のチェックから、新政の計画立案まで、あらゆる場面で力を貸してくれた。

「これが私たちのやり方だもの、ベル」

アリシアは小さく微笑んだ。

二年前、アルベルトから契約書を渡された時から、彼女の人生は加速した。卒業後、正式に王国顧問官に就任。戦後復興計画の中心的役割を担い、数々の改革を成功させてきた。

学園祭でのプロジェクト管理。匿名での政策提言。戦時中の指揮。そして復興計画。

一つ一つが実績となり、彼女への信頼を積み重ねていった。

「アリシア様、お時間です」

ドアを開けて、リリアンが顔を出した。彼女は花嫁の介添え役を務めることになっていた。もう立派な宮廷魔法士となったリリアンは、かつての恥ずかしがり屋の面影はなく、自信に満ちた女性に成長していた。

「みんな、待っていますよ」

「ありがとう、リリアン。少し……緊張しているわ」

「大丈夫です。アルベルト殿下も、きっと同じように緊張していますから」

リリアンはいたずらっぽくウインクした。

「昨日、殿下がリハーサルで三回も誓いの言葉を間違えたんですから」

「本当?」

「はい。老執事が、『殿下、落ち着いてください』って何度も言ってました」

そのイメージに、アリシアは思わず笑みを浮かべた。あの冷静沈着なアルベルトが、緊張で言葉を間違えるなんて。

(私のせいで、そんなに……)

胸が温かくなった。

式典会場である大聖堂へ向かう馬車の中、アリシアは外の風景を眺めた。戦争の傷痕はまだ残っているが、街は確実に復興しつつあった。新しい舗道、修復された建物、活気ある市場。

すべてが、彼女とアルベルトがこの二年間かけて築き上げてきたものだ。

(私たちのプロジェクトが、形になっている)

馬車が大聖堂に到着した。赤い絨毯が敷かれ、その両側には大勢の市民が集まっている。祝福の声、拍手、花びらが舞う。

「頑張ってね、アリシア様!」

「王国の幸せを!」

「効率化オフィス、楽しみにしてます!」

市民たちの声に、アリシアは軽く手を振った。彼女はもう、単なる公爵令嬢ではない。王国顧問官として、人々から認められた存在だ。

大聖堂の入口で、父であるローレンベルク公爵が待っていた。彼の目には、複雑な感情が浮かんでいる。誇りと、寂しさと、そして少しの後悔。

「父上」

「アリシア……お前は、本当に立派になったな」

公爵の声には、本物の感動が込められていた。

「かつては、お前の将来を心配していた。しかし、今では……むしろ、お前に教わることの方が多い」

「父上……」

「さあ、行くがいい。あの王子が、待っている」

公爵はアリシアの腕を取り、大聖堂の中へと導いた。

パイプオルガンの音が響く。長い通路の先に、祭壇が見える。そこには、アルベルトが立っていた。

純白の軍服に身を包み、背筋をぴんと伸ばしている。銀髪はきちんと整えられ、金色の瞳は真剣そのもの。しかし、アリシアにはわかった。彼の手が、微かに震えているのが。

(緊張しているんだ……)

彼女の歩みに合わせ、アルベルトの目が少しずつ柔らかくなっていく。緊張が、安堵に変わる。

父から手を離され、アルベルトの前に立つ。二人の距離は、ほんの数十センチ。これまで何度もこの距離で仕事をしてきたが、今日は違う。

「お待たせしました、殿下」

「いや……ちょうどよい時だ」

アルベルトの声は、少しだけかすれていた。

式は粛々と進む。聖歌。祈り。説教。

そして、誓いの言葉。

「アリシア・フォン・ローゼンベルク」

アルベルトが、彼女の手を取る。その手は、確かに震えていた。

「私は、生涯をかけてあなたを支えることを誓う。あなたの夢を、あなたの才能を、最大限に尊重し、その発展を支援する」

彼の目は、アリシアをまっすぐ見つめている。

「また、あなたのティータイムを尊重し、無理な労働を強いないことを約束する。これは、契約書第三条第七項に基づく、正式な誓いである」

会場から、かすかな笑い声が漏れる。しかし、アリシアにはそれが聞こえなかった。彼女の目には、アルベルトの真剣な表情しか映っていない。

「アルベルト・リヒター殿下」

アリシアも、アルベルトの手を握り返した。

「私は、生涯をかけてあなたを補佐することを誓う。あなたの理想を、あなたの王国を、リストと計画で支え続ける」

彼女の声は、静かだが確かだった。

「また、あなたの健康を管理し、過労を防ぐことを約束する。これは、契約書第四条第二項に基づく、正式な誓いです」

今度は、はっきりと笑い声が上がった。しかし、二人には関係ない。これが、彼ららしい誓いの形だった。

指輪の交換。そして──

「新郎、新婦に祝福を!」

大聖堂中に、祝福の拍手が鳴り響いた。パイプオルガンが賛美歌を奏で、鐘の音が街に響き渡る。

アルベルトが、そっとヴェールを上げる。その下から現れたアリシアの顔は、涙で少し崩れていた。

「……馬鹿者。泣くんじゃない」

アルベルトが小声で言う。しかし、彼の目もわずかに潤んでいる。

「だって……嬉しくて」

「分かっている。私もだ」

二人は腕を組み、通路を歩き始める。外では、市民たちの祝福の声が待ち受けている。


祝宴は、王城内の大広間で開かれた。しかし、これは単なる祝宴ではなかった。

「皆様、ご静聴ください」

アルベルトが、杯を掲げて立ち上がった。広間は静かになる。

「本日は、二つの祝い事がある。一つは、私とアリシアの結婚。もう一つは……」

彼はアリシアを見た。

「新たな王国機関の設立だ」

広間にざわめきが走る。貴族たちが、訝しげに顔を見合わせる。

「これより、『王国効率化オフィス』を設立する。長官は、アリシア・フォン・ローゼンベルク・リヒターが務める」

アリシアが立ち上がる。彼女の目は、確かな自信に満ちていた。

「本オフィスの目的は、王国のあらゆる業務の効率化と、無駄の排除です。行政、財政、軍務、教育──すべての分野において、合理的な改善提案を行います」

彼女は、広間に集まった貴族たちを見渡した。

「具体的な第一弾として、来月から各部署の業務プロセスの見直しを開始します。不要な書類の削減、会議の効率化、予算の適正化……」

「待たれよ!」

一人の老貴族が立ち上がった。ヴァルケンシュタイン侯爵だ。二年前、アリシアを陥れようとした人物だ。

「そんなオフィスを作る必要性がわからん! 既存の部署で十分だろう!」

「では、お尋ねします」

アリシアの声は、冷たくはないが、鋭かった。

「侯爵閣下の領地では、昨年の税務報告書の提出に、平均してどれだけの時間がかかりましたか?」

「それは……三ヶ月ほどだな」

「では、なぜ三ヶ月もかかるのでしょう? 必要な情報は揃っているはずです」

「書類の審査に時間がかかるからだ! 役人たちが──」

「役人たちが、効率的に作業できないシステムになっているからです」

アリシアの言葉に、侯爵は言葉を失った。

「現在の税務報告システムには、三十七の審査段階があります。そのうち、実際に必要なのは十五段階だけです。残りの二十二段階は、単なる“慣例”によるものに過ぎません」

広間が静まり返る。貴族たちが、驚きの表情を浮かべている。

「本オフィスでは、まずこのような無駄なプロセスを洗い出し、改善提案を行います。目標は、行政処理時間の50%短縮です」

「では、お前は我々貴族の権限を奪おうというのか!」

別の貴族が叫んだ。

「違います。貴族の方々の時間と資源を、より重要なことに使っていただくためです」

アリシアは淡々と答えた。

「現在、多くの貴族の方々が、書類仕事に追われています。本来なら、領地経営や政策立案に使うべき時間が、書類の押印に費やされている。それは、王国全体の損失です」

彼女は、アルベルトを見た。彼は微かにうなずき、続けさせた。

「本オフィスは、各部署から二人ずつ代表者を招き、共同で改善案を作成します。上からの押しつけではありません。現場の声を聞き、実際に働く人たちとともに改革を進めます」

広間が静かになった。貴族たちの表情は、まだ懐疑的だが、少なくとも聞く耳は持っているようだ。

「では、具体的に何から始める?」

老練な宰相が尋ねた。

「まずは、自発的な希望者から。現在、既に五つの部署から協力の申し出をいただいています」

アリシアは名簿を示した。

「財務省、農務省、教育省、そして……軍務省と、宮内庁です」

最後の二つに、広間がざわつく。軍務省と宮内庁──最も保守的とされる部署が、いち早く手を挙げたのだ。

「軍務省は、兵站システムの効率化を希望しています。宮内庁は、王室行事の計画プロセスの改善を」

アリシアはほほえんだ。

「すでに、予備調査を開始しています。来週には、具体的な改善案の第一弾を提出する予定です」

アルベルトが再び立ち上がった。

「これが、新しい王国の形だ。古い慣習に縛られず、常に改善を続ける。効率化オフィスは、その先導役となる」

彼の目は、貴族たち一人一人を見つめていた。

「反対する者は、それなりの理由を示せ。ただ“今まで通り”では、もはや通用しない」

沈黙が流れる。そして、一人、また一人と、貴族たちがうなずき始めた。

「……よかろう」

ヴァルケンシュタイン侯爵が、苦渋に満ちた表情で言った。

「ただし、成果がなければ、即時廃止だ。わかったな」

「かしこまりました」

アリシアは深くお辞儀をした。内心では、ほっと胸を撫で下ろしていた。最初の関門は突破だ。

【お見事です、マスター! 貴族たちの賛同率、67%に上昇!( •̀ ω •́ )✧】

ベルの報告に、アリシアは内心で微笑んだ。

祝宴は再び賑やかさを取り戻した。アリシアとアルベルトは、賓客たちの祝福を受けながら、広間を回る。

「おめでとう、お二人とも」

「効率化オフィス、期待していますよ」

「うちの部署も、ぜひ協力させてください」

かつてはアリシアを冷ややかに見ていた貴族たちも、今では敬意を込めて接する。実績が、全てを変えたのだ。

「やったね、アリシア様!」

リリアンが駆け寄ってきた。彼女も、宮廷魔法士の正装に身を包んでいる。

「リリアンさん、ありがとう。あなたのサポートがなければ、ここまでこられなかった」

「とんでもありません! 私こそ、アリシア様に教えていただいたことがたくさん……」

「おいおい、新婚の二人から離れて、何を話してるんだい?」

クラウド第二王子が、からかいながら近づいてきた。彼は相変わらずの軽薄な笑みを浮かべているが、目は真剣だ。

「兄さん、とうとうやったな。契約書での求婚だなんて、あんたらしいっていうか……」

「文句があるか?」

アルベルトが冷たく言うが、その口元は緩んでいる。

「いやあ、感心してるよ。で、効率化オフィスって、具体的に何をするんだ? 俺の外交仕事も、楽にしてくれないか?」

「まずは、外交文書の標準化から始めましょうか」

アリシアが即答した。

「現在、各国への文書の形式が統一されていません。それだけで、作成時間が30%も無駄になっています」

「おお、それは助かる! さっそく頼むよ!」

宴は夜まで続いた。しかし、アリシアとアルベルトは、途中で静かに席を外した。

「疲れたか?」

屋上庭園で、アルベルトが尋ねた。眼下には、祝祭の灯りで輝く王都が広がっている。

「少し。でも、充実した疲れです」

「あの侯爵め、相変わらず頑固だな」

「大丈夫です。数字と実績で、説得してみせます」

アリシアはアルベルトの腕に軽く寄りかかった。

「それに、殿下がついているから」

「ああ」

二人はしばらく、街の灯りを眺めていた。

「効率化オフィスの場所、決めたぞ」

アルベルトが突然言った。

「中庭に面した、東の塔だ。明るく、静かで、お前の好みに合うと思う」

「東の塔……確か、書庫に近い場所ですね」

「ああ。必要な資料には、すぐにアクセスできる。それに、チームの部屋も確保した。十人は楽に収容できる」

アリシアの目が輝いた。

「チームメンバーは、もう選び始めています。リリアンさんはもちろん、かつて学園祭で一緒に働いた実行委員の子たちも、何人か手を挙げてくれました」

「よかろう。お前のやり方で、進めればいい」

アルベルトは彼女の肩に手を置いた。

「一つだけ、約束してくれ」

「はい?」

「オフィスのことは、明日からでいい。今夜は……ただ、私たちの時間にしよう」

その言葉に、アリシアの頬がほんのり赤くなった。

「……はい」

彼女は小さくうなずき、アルベルトの腕にしっかりと手を回した。

遠くで、祝宴の音楽が聞こえる。街では、市民たちが祝福の宴を続けている。

すべてが、彼らのこれまでの努力の結果だ。リストと計画と、時には感情任せの決断の積み重ねが、ここまでの道を築いた。

「殿下」

「何だ」

「これからも、よろしくお願いします。王様として、そして……夫として」

アルベルトは一瞬黙り、そっとアリシアの頭を自分の胸に引き寄せた。

「……ああ。ずっととな」

月が雲の間から顔を出し、二人を柔らかく照らした。

下の街では、まだ祝祭が続いている。しかし、屋上では静かな時間だけが流れていた。

新しいプロジェクトが、今日始まった。

タイトルは:『王国の未来、そして私たちの未来』

担当者は:アルベルト・リヒター&アリシア・フォン・ローゼンベルク・リヒター

期限は:一生

アリシアは目を閉じ、胸に聞こえるアルベルトの鼓動に耳を澄ませた。

リストは、これからも続く。問題は、次から次へと現れる。

でも、もう怖くない。隣に、彼がいるから。

二人でなら、どんな問題も解決できる。

彼女はそっと微笑んだ。

明日から、新しい仕事が始まる。

楽しみだ。

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