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少しずつ咲いていく日々

ブルーマラでの毎日は、

もう重苦しいものではなくなっていた。


それは、すべてが解決したからではなく――

もう“ひとり”で生きていなかったから。


リラと一緒に…


毎朝、食堂の入り口で彼女は待っていた。

手には、花の香りがするお茶のカップ。


「今日の味はね、“穏やかな希望”よ」

そう言って渡してくる。


本当にそういう味なのか、

それとも名前を毎回でっちあげてるのか――

結局わからなかったけれど、


飲むたびに心が落ち着いた。

そして彼女の笑顔も、それと同じくらい効いた。


アイリラと一緒に…


言葉は少なかったけれど、

訓練中、彼女は誰よりも厳しい魔法を僕に向けてくる。


「ちょっと手加減してくれない?」


「チームに入るなら、手加減なんて必要ないでしょ」


それが彼女なりの「信頼してる」というサインだった。


そして失敗した時には、

誰よりも早く近づいてきて、


「バカ。でも、悪くはなかったわよ」


って呟いてくれる。


セレネと一緒に…


ある日、彼女に無理やり連れていかれて、

部屋を飾るエネルギークリスタルを選ばされる羽目に。


「あなたにはもっと輝きが必要なの!」


「君にはその輝き、少し減らした方がいいと思うけど」


「だからバランスが取れるのよ!」


…思わず笑ってしまった。

認めないけど。


カエリスと一緒に…


図書館で、よく彼女と顔を合わせるようになった。


ときどき一緒に静かに本を読む。

でも静かなだけじゃない。


「その式、間違ってる」

「その段落、魔法理論に反してる」

「字がひどい。読む気なくす」


辛辣。でも…どこにも行かない。


最後には、そっとメモを置いていく。


「君のレベルにしては、よくできてる」


訳:気にしてるから導いてる。もう無関心じゃない。


ネイラと一緒に…


彼女はよく、ひとりで楽器の練習をしていた。


僕は近くに座り、ただ聴いていた。

ある時は、第二のフルートを手渡されて、

一音だけ真似する練習。


多くは語らない。


でも、うまく吹けたとき――

微笑んでくれる。


それが、どんな言葉よりも響いた。


そうして、気づかぬうちに――


「禁じられた花を持つ少年」だった僕は、

**“ハル”**になっていた。


お茶を分け合い、

訓練で汗を流し、

冗談を飛ばし合い、

知識を学び、

音を重ねる。


そんな日々の中で――


最初は恐れられたあの“水晶の花”が、

少しずつ、少しずつ…


誰かと一緒に咲き始めていた。

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