第九十八話:絶望の未来と一筋の光
俺たちの目の前に映し出される、世界の終焉。
そのあまりにも残酷で、鮮明なビジョンは、俺たちの心を、容赦なく絶望の淵へと叩き落とした。
「……なんだよ……これ……」
最初に声を絞り出したのは、バルガンだった。彼の顔からは、いつもの不敵な笑みは消え、ただただ愕然とした表情で、自らが絶望する未来の姿を見つめている。
「俺たちが、この旅の果てに……世界を、滅ぼすってのか……?」
「……嘘……です……」
リリアもまた、その場に崩れ落ちそうになるのを、かろうじてこらえていた。彼女の瞳は恐怖に見開かれ、せっかく取り戻した自信が、根底から覆されようとしている。
「わたしたちが、どんなに頑張っても……結末は、これなんですか……?」
俺もまた、言葉を失っていた。
手足の感覚がなくなり、心臓が、冷たい氷に握り潰されたかのようだ。
俺たちが信じてきた道。仲間との絆。人々を守るという誓い。その全てが、この絶望的な未来の前では、何の意味もなさないというのか。
俺たちが進めば進むほど、世界は破滅へと近づいていく。
俺たちの動揺に呼応するかのように、『星の記憶』が映し出すビジョンは、さらに加速していく。
大地が裂け、空が落ち、人々が悲鳴を上げて逃げ惑う。
そして、その全ての元凶であるかのように、俺たち三人が、なすすべもなく立ち尽くしている。
諦めろ、と。
お前たちの旅は、無意味だと。
旧神の遺産が、俺たちに、そう告げているようだった。
もう、やめようか。
このまま、旅をやめて、どこか世界の片隅で、静かに暮らそうか。
そうすれば、この未来は、訪れないのかもしれない。
そんな、弱音が、俺の心を支配しかけた、その瞬間だった。
「―――ふざけるなッ!!」
静寂を破ったのは、俺の魂の奥底から迸る、怒りの咆哮だった。
俺は、震える足で、一歩前に出る。そして、絶望の未来を映し出す水晶玉を、真っ直ぐに睨みつけた。
「誰が決めた未来だ! 俺たちの旅の結末を、お前なんかに決めさせてたまるか!」
俺の叫びに、リリアとバルガンが、はっと顔を上げる。
「もし、この未来が、俺たちが進んだ先に必ず待っている運命だというのなら―――」
俺は、アイテムボックスから、一本の『ブレイカー・ボルト』を、意識の中に呼び出す。
「―――その運命ごと、俺たちが、ぶっ壊してやる!!」
それは、ただの虚勢ではなかった。
絶望の淵から這い上がった、俺たち『ブレイカーズ』の、揺るぎない決意の表明。
俺の意志に応えるかのように、バルガンの瞳に、再び不屈の炎が宿る。リリアの震えは止まり、その杖を握る手に、力が戻っていた。
俺たちの決意を感じ取ったのか、『星の記憶』が映し出すビジョンが、ふっと消えた。
そして、その代わりに、水晶の中心に、一点の、小さな、しかし、どこまでも強く、温かい光が灯った。
それは、絶望の未来の中に残された、ただ一つの、『可能性』の光。
俺たちが、この運命に抗うための、最後の鍵。
その光は、ゆっくりと水晶から分離すると、ふわりと、俺たちの目の前に降りてきた。
俺たちは、その小さな光を、希望と呼ぶことにした。
未来は、まだ、俺たちの手の中にある。
俺たちは、その小さな希望を胸に、絶望への宣戦布告を、静かに行った。




