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第八話:頑固なドワーフ

冒険者ギルドから出て、俺が向かったのは街の南側に位置する職人街だ。

一歩足を踏み入れると、空気が変わるのが分かった。カン、カン、とリズミカルに響き渡る無数の槌音。石炭の燃える匂いと、熱せられた鉄の匂い。飛び散る火花が、屈強な男たちの汗を光らせている。


(すごい熱気だ……)


道沿いには、いかにも剛健といった風情の武具屋がずらりと並び、店先には磨き上げられた剣や鎧が飾られていた。そのどれもが、俺が腰に提げている量産品のショートソードとは比べ物にならない逸品だ。


俺は意を決し、その中の一軒に足を踏み入れた。


「いらっしゃい。何を探してる、兄ちゃん」

「ああ、ええと……武器を、頼みたいんだが」


店の奥から現れた、熊のような体躯の店主に、俺は自分の要望を伝えた。

曰く、投擲するための金属製の杭のようなものが欲しい。曰く、斬るための刃や、握るための柄は必要ない。曰く、とにかく硬く、重く、一点突破の威力だけを追求したものがいい。


しかし、店主の反応は芳しくなかった。


「あぁ? なんだそりゃ。ただの鉄の塊じゃねえか。そんなもんに高い金払うくらいなら、そこの槍でも買っていきな」


けんもほろろに追い返され、俺は別の店を訪ねた。だが、そこでも反応は同じだった。

「武器の基本を分かってねえな」

「そんなもん、何に使うんだ?」

「鉄の無駄だ。帰んな」


数軒の店を巡り、俺はすっかり途方に暮れていた。

やはり、俺の考えるような武器は、常識外れなのだろうか。諦めて、どこかの店で一番安い槍でも買って、それを射出するしかないのか……。


そう思いながら、路地裏でため息をついていた時だった。

近くの工房から出てきた職人たちの会話が、ふと耳に入る。


「おい、聞いたか? またバルガンの奴がやらかしたらしいぜ」

「ああ、ドワーフのバルガンか。『砕き屋』の異名は伊達じゃねえな」

「せっかく作った傑作のウォーハンマー、納品先の冒険者が試しに岩を殴ったら、一撃で砕け散ったんだとよ」

「あいつの武器はいつもそうだ。一撃の威力だけを追求しすぎて、耐久性ってものを完全に無視してる。まさに『使い捨て』の高級品だ」


その言葉に、俺は電撃に打たれたような衝撃を受けた。


――一撃の威力だけを追求。

――耐久性を無視。

――使い捨て。


他の誰かにとっては致命的な欠陥。だが、俺にとっては?

それは、俺が探し求めていた、最高の「弾丸」の条件そのものじゃないか。


俺は弾かれるように立ち上がり、職人たちに駆け寄った。


「すみません! そのバルガンさんというドワーフの工房は、どこにあるか教えてもらえませんか!」


突然話しかけられた職人たちは面食らっていたが、親切に場所を教えてくれた。

俺は礼もそこそこに、教えられた方角へと走り出す。


職人街の外れ、煤けて古びた一軒の工房。

その扉の前で、俺はごくりと唾を飲み込み、大きく息を吸った。

ここから、俺の本当の反撃が始まる。そんな確かな予感が、胸を焦がしていた。

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