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第七十七話:魂の証明

俺たちの前に立ちはだかる、絶対的な番人。

その問いかけは、もはや武力ではなく、俺たち自身の魂の在り方を問うていた。

最初に、その試練に立ち上がったのは、バルガンだった。


彼は、満身創痍の体を引きずるようにして立ち上がると、懐から一本の、何の変哲もない、魔法の込められていない『ブレイカー・ボルト』を取り出した。

そして、それを番人へと、誇らしげに掲げる。


「俺の、魂の一作……。それは、どんな鎧よりも硬い、完璧な矛じゃねえ」


バルガンの、しゃがれた声が、静寂に響く。


「こいつは、それだけじゃただの鉄屑だ。一撃を放てば、砕け散る。だがな、最高の仲間がいて、初めて完成する。仲間を信じ、全てを託し、己の身を砕いて道を拓く……! これこそが、俺の魂のありったけだッ!」


その叫びに応えるかのように、番人のルーン文字が、強く、一度だけ輝いた。


次に、リリアが、ふわりと立ち上がった。

彼女は、戦うためではなく、祈るために杖を構える。

その瞳は、もはや番人を見てはいなかった。傷つき、倒れている俺と、バルガンへと、ただひたすらに、優しい眼差しを向けていた。


彼女の体から、温かく、そして穏やかな、黄金色の光が溢れ出す。

その光は、俺たちの体をそっと包み込み、砕けた骨を繋ぎ、裂けた傷を癒していく。それは、これまで彼女が放ってきた、どんな強力な付与魔法よりも、神々しく、そして尊い光だった。


「わたしの力は、誰かを傷つけるためのものじゃありません」


彼女の、凛とした声が響く。


「大切な仲間を……みんなを、守り、癒すための力。これが、わたしの『祝福』です」


番人は、何も言わない。だが、この極寒の地を吹き荒れていた風が、その瞬間、ぴたりと止んだ。


最後に、俺の番だった。

リリアの魔法で、体は完全に癒えている。俺はゆっくりと立ち上がると、二人の仲間を見渡し、そして、番人へと向き直った。

俺が示すべき、『意志』。


俺は、アイテムを射出する時と同じように、空の右手を、天に掲げた。


「俺の意志は、俺自身のためじゃない」


俺は、宣言する。


「この、最高の仲間たちの力が、その想いが、道を踏み外すことなく、ただ真っ直ぐに、守るべき場所に届くように。俺は、そのための、ただの『器』でいい。いや、それがいい。それが、俺の意志だ!」


俺は、力を求める覇者ではない。

仲間たちの想いを、世界に届けるための、ただ純粋な器。

その覚悟こそが、俺の全てだった。


俺たち三人の、魂の証明は終わった。

長い、長い沈黙。


やがて、番人の、荘厳な声が響き渡った。


『……証明は、為された』


その言葉と共に、俺たちの目の前のクレバスに、地響きを立てて、巨大な岩の橋がせり上がってきた。

番人の軍勢が、まるで敬礼をするかのように、左右に分かれ、俺たちのための道を開けている。


『行け、小さき者たちよ。聖地の深淵で、汝らの意志が、歪んだ創造主に勝るか、その目で見届けよ』


俺たちは、互いの顔を見合わせ、強く頷いた。

そして、旧神の聖地へと続く、その一本道を、確かな足取りで、歩き始めた。

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