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第六十九話:極寒への旅立ち

俺たちの次なる目的地、『凍てつく荒野』。

そこは、王都の快適な気候とはわけが違う、死と隣合わせの極寒の地だ。生半可な準備で足を踏み入れれば、魔物に会う前に、寒さで凍え死ぬことになる。


俺たちの工房は、その日から、さながら巨大な探検基地と化した。


「――よし、まずは馬車の改造だ!」


バルガンの号令の下、俺たちの家の土台でもある工房馬車が、みるみるうちに姿を変えていく。

壁には、彼が特殊な合金で作った断熱材がびっしりと詰め込まれ、車輪は、雪道や氷の上を走るための、格納式のスパイク付き履帯クローラーに換装された。

彼の工房の心臓部である魔法炉も、少ない燃料で最大火力を維持できるよう、燃焼効率を極限まで高めた新型に置き換えられた。


そのバルガンの仕事に、リリアが完璧な魔法を付与していく。

俺たちの衣服には、常に体温を一定に保つ『保温の祝福』を。

大量に積み込む食料には、決して腐らず、凍りつかないように『保存の祝福』を。

そして、馬車の車体そのものには、吹雪の中でも道を見失わないための、微かな光を放つ『道標の祝福』を。


俺は、俺の【アイテムボックス】の無限の容量を使い、数ヶ月は余裕で暮らせるだけの食料、薪、そしてバルガンの炉にくべるための高品質な石炭を、街の商人たちが驚くほどの量、買い占めていった。


出発の前日、俺は一人で、ギルドと、そしてエレオノーラに挨拶へ向かった。

ギルドマスターは、俺たちの決意を知ると、何も言わずに一枚の推薦状を渡してくれた。北の辺境にあるギルド支部で、最大限の便宜を図ってくれるという。

エレオノーラは、「死ぬなよ」とだけ短く言うと、俺たちの無事を祈るように、固い握手を交わしてくれた。


そして、出発の日の朝。

俺たちの工房馬車は、もはやただの馬車ではなかった。

どんな過酷な環境でも生き延び、戦うことができる、移動要塞『ブレイカー・ベース』とでも呼ぶべき、頼もしい相棒へと生まれ変わっていた。


俺たち三人は、生まれ変わった相棒に乗り込み、王都の北門をくぐる。

後ろには、俺たちが英雄となった、暖かく、活気に満ちた都。

そして前には、どこまでも続く、未知なる北の道。


馬車が街道を進む中、リリアが、ずっと気になっていたことをバルガンに尋ねた。

「バルガンさん。あの……裏切り者のドワーフさんが向かっているという、古代文明の遺跡っていうのは、一体どういう場所なんですか?」


バルガンは、しばらくの間、窓の外の景色を眺めていたが、やがて、重々しく口を開いた。

その声には、畏敬と、そしてかすかな恐れが混じっていた。


「……嬢ちゃん。奴が向かっているのは、ただの遺跡じゃねえ」

「え……?」


「ありゃあ、『旧神の大工房(ザ・グレートフォージ・オブ・ジ・オールドゴッズ)』……俺たちドワーフの、禁断の聖地だ」

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