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第六十六話:英雄の証明

煙幕が、ゆっくりと晴れていく。

観客席の誰もが、息を呑んで、その光景を見守っていた。

やがて、闘技場の中央の様子が明らかになった時、割れんばかりの歓声と、信じられないといったどよめきが、コロッセオ全体を揺るがした。


そこに立っていたのは、悠然と構える俺とリリア。

そして、その数メートル先で、特級魔術師部隊の三人が、なすすべもなく呆然と立ち尽くしていた。

彼らを覆っていたはずの三重の結界は、見るも無残に砕け散り、その破片がキラキラと光を放ちながら消えていく。


学部長は、その顔から余裕の笑みを完全に消し去り、恐怖と屈辱に染まった顔で、こちらを睨みつけていた。


「ば、馬鹿な……! 我が学園の、絶対防御が……こんな、野蛮な力ごときに……!」


俺は、そんな彼に、最後通告を叩きつける。

アイテムボックスの中から、最後の『弾丸』――バルガンが魂を込めて鍛え上げた、必殺の『ブレイカー・ボルト』を、意識の中に呼び出した。


俺の右腕の前の空間が、黒く歪み始める。

それは、鋼鉄ゴーレムを砕いた、あの破壊の予兆。闘技場全体が、その凄まじい魔力の奔流に、びりびりと震えている。


「――降参しろ。これは模擬戦闘だ。あんたたちを、再起不能スクラップにするつもりはない」


その言葉は、俺たちからの、最後の情けだった。

結界を失った魔術師など、俺の『ブレイカー・ボルト』の前では、赤子同然だ。

元素魔法の魔術師と幻術師は、完全に戦意を喪失し、その場にへたり込んでいる。


だが、学部長だけは、プライドがそれを許さなかったらしい。


「ふ、ふざけるなッ! 小娘の、呪われた力に頼るだけの、まがい物どもがぁっ!」


彼は、残った最後の魔力を振り絞り、俺に向かって、巨大な炎の槍を放ってきた。

観客席から、悲鳴が上がる。


だが、その炎の槍が、俺に届くことはなかった。

俺の前に、リリアが、静かに一歩踏み出した。


彼女は、ただ、杖を構える。

そして、たった一言、呟いた。


「――消えなさい」


その瞬間、リリアの体から、これまで誰も見たことのない、純粋で、そして圧倒的な魔力の光が放たれた。

学部長の炎の槍は、その光に触れただけで、まるで陽炎のように、音もなく霧散していく。


リリアは、もはや森の奥で怯えていた、か弱い少女ではなかった。

自らの力を完全に制御し、仲間を守るために、その意志を世界に示す、気高き大魔術師。


その神々しいまでの姿を見て、学部長は、ついに膝から崩れ落ちた。

「……あり、えない……」


審判が、震える声で、高らかに宣言する。

「――勝者、『ブレイカーズ』!!」


一瞬の静寂の後、コロッセオは、地鳴りのような大歓声に包まれた。

国王陛下が、ロイヤルボックスから立ち上がり、俺たちに、惜しみない拍手を送っているのが見えた。


俺たちは、勝ったのだ。

学園の権威に。理不尽な烙印に。そして、リリアを縛り付けていた、過去の呪いに。


リリアの瞳から、一筋の涙が、喜びの光となってこぼれ落ちた。

俺は、そんな彼女の肩を、そして、場外でガッツポーズをするバルガンの姿を、誇らしい気持ちで見つめていた。


これが、俺たち『ブレイカーズ』の、英雄としての証明だった。

俺たちの伝説は、今日この瞬間、本物の神話となったのだ。

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