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第五十六話:脱出

「――総員、撤退! ここは崩れるぞ!」


エレオノーラの鋭い声が、崩壊を始めた地下工場に響き渡る。

天井からは火花と土砂が降り注ぎ、床は地震のように激しく揺れている。もはや、残りのゴーレムを殲滅している時間はない。


「出口はどこだ!?」とバルガンが叫ぶ。

裏切り者のドワーフが逃げ込んだ隠し通路は、すでに瓦礫で塞がれていた。俺たちが侵入してきた昇降機も、警報と共に完全にロックされている。


絶体絶命。

その時、俺の視界の端に、一つの可能性が映った。

それは、工場の最も奥、巨大な資材搬入用のリフト。おそらく、地上にあるヴァルクール鉱業社の倉庫一階へと繋がっているはずだ。


「あそこだ! あのリフトを使えば、地上に出られる!」


俺は、リフトへと続く道を指さした。だが、その進路上には、未だに稼働を続ける十数体のゴーレムが、最後の壁として立ちはだかっていた。


「道を開けろ! 俺たちに構うな、先に行け!」


エレオノーラと彼女のパーティーメンバーが、俺たちを先に行かせるため、決死の覚悟でゴーレムの群れに突っ込んでいく。彼らが聖なる光と魔法で敵の足止めをしている間に、俺たち三人はリフトへと全速力で走った。


だが、ゴーレムたちは執拗だった。

『グリフォンの誓い』の猛攻を耐え抜き、数体が俺たちへと狙いを定めてくる。


「――行かせません!」


リリアが、振り返りざまに杖を構える。

彼女は、地面に転がっていた鉄屑や瓦礫に、次々と即席の付与魔法を施していく。


「『粘着の呪い』! 『閃光の祝福』!」


俺は、リ-リアの魔法が込められたそれらのガラクタを、後方へと連続で射出した。

粘着弾はゴーレムの足元に絡みついて動きを鈍らせ、閃光弾はそのモノアイの前で炸裂して視界を眩ませる。完璧な足止めだった。


俺たちは、ついにリフトへとたどり着いた。

バルガンが、その頑丈な操作盤をこじ開け、配線を無理やり直結させる。


「動け、このポンコツがぁっ!」


ゴゴゴ…と、重い駆動音を立てて、リフトがゆっくりと上昇を始めた。

俺たちが上昇していくのを、エレオノーラたちが下で見届けているのが分かった。


「お前たちも早く!」

俺が叫ぶと、彼女は不敵に笑った。


「我々には、騎士団としての責務がある! この施設の完全な崩壊を見届け、全ての証拠を消し炭にするまで、ここを動くわけにはいかん! だが、心配は無用だ。我々には、我々なりの脱出方法がある!」


彼女の言葉には、絶対的な自信が満ち溢れていた。

俺は、彼女たちを信じることにした。


リフトが地上階、つまり倉庫の一階に到着する。

俺たちは、崩壊する地下の轟音を背に、夜の港湾地区へと転がり出た。

直後、俺たちの背後で、ヴァルクール鉱業社の倉庫が、凄まじい爆発音と共に、巨大な火柱を上げて崩れ落ちていく。


王都の闇に巣食っていた巨大な蜘蛛の巣が、紅蓮の炎に包まれて消滅していく。

俺たち三人は、その光景を、ただ呆然と見つめていた。


俺たちの、長く、そして静かな戦争が終わった。

夜空を焦がす炎の色だけが、その勝利の証だった。

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