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第五十四話:鉄の包囲網

警報音が鳴り響く中、俺たちの背後で昇降機の扉が、ゴウッと音を立てて閉ざされた。

退路は断たれた。

目の前では、数十体の鋼鉄の暗殺者たちが、ゆっくりと、しかし確実に、俺たちへと包囲の輪を狭めてくる。


「チッ、罠に気づくのが遅すぎたか!」

バルガンが、懐から戦闘用のハンマーを取り出し、忌々しそうに吐き捨てる。


「アルクさん、どうしますか……!?」

リリアの顔には、絶望と恐怖の色が浮かんでいた。無理もない。一体一体が鋼鉄ゴーレム級の強敵。それが、数十体。もはや、戦力差は絶望的という言葉ですら生ぬるい。


だが、俺の心は、不思議なほどに冷静だった。

死線は、これまで何度も越えてきた。敵の数が一体だろうが、百体だろうが、やることは同じだ。

俺は、アイテムボックスから、バルガンが作った最新型の『ブレイカー・ボルト』――貫通力をさらに高めた改良版を、意識の中に呼び出す。


「――突破する」


俺は、仲間たちに短く告げた。

「バルガンは左、リリアは右の敵を警戒しろ! 俺が正面に風穴を開ける! そこから一気に駆け抜けるぞ!」


俺の言葉に、二人の顔に覚悟が宿る。

俺は、包囲網の最も薄い一点に狙いを定め、深呼吸をした。

リリアが、俺の腕にそっと触れる。


「アルクさん、これを……! わたしの、全力の『振動付与ヴァイブレーション』です!」


彼女の全魔力が、アイテムボックス内のボルトへと注ぎ込まれていく。鋼鉄ゴーレムを砕いた、あの究極の一撃の再現だ。


「――いけぇぇぇぇっ!!」


俺の咆哮と共に、極限まで強化されたボルトが射出される。

黒い閃光が、地下工場を一直線に走り、正面にいた一体のゴーレムの胸部に深々と突き刺さった。


ドゴォォォンッ!

凄まじい轟音と共に、ゴーレムの胸部装甲が内側から爆散する。一体目を完璧に撃破し、その背後にいた二体目、三体目までもが、爆風に巻き込まれて大きく体勢を崩した。

まさに、風穴だ。


「今だ! 走れ!」


俺たちは、そのわずかな隙間を目がけて、全速力で駆け出した。

だが、敵の指揮官――あの裏切り者のドワーフが、それを許さない。


「――甘いぞ、小僧ども!」


ドワーフが腕を振ると、残りのゴーレムたちが、まるで一つの生き物のように、俺たちの進路上に回り込んできた。一体を倒したところで、すぐに別の機体がその穴を埋める。

鉄の壁が、再び俺たちの前に立ちはだかった。


「クソっ、キリがねえ!」


バルガンが、迫りくるゴーレムの腕をハンマーで弾く。リリアも、杖から放つ光で敵の動きを牽制するが、多勢に無勢だ。

俺も、連射性能に優れた『ブレイカー・ニードル』を撃ち込むが、装甲の薄い関節部分を狙っても、ゴーレムの動きをわずかに鈍らせることしかできない。


じりじりと、俺たちは再び壁際へと追い詰められていく。

万策尽きたか――


その時だった。

俺たちの頭上、遥か高くの天井部分が、突如として、轟音と共に崩れ始めた。

土砂や瓦礫と共に、何かが、凄まじい勢いでこの地下工場へと落下してくる。


それは、月明かりを背負った、白銀の鎧の騎士たち。

王都最強のAランクパーティー、『グリフォンの誓い』だった。


「――遅くなったな、『ブレイカーズ』! 王家の騎士団が、この国の反逆者を見過ごすとでも思ったか!」


先頭に立つ騎士団長が、その手に持つ聖剣を、眼下の鋼鉄の軍勢へと突きつけた。

絶望の闇の中に差し込んだ、予期せぬ、そして何よりも頼もしい光だった。

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