表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/109

第四十六話:王国の闇

ギルドマスターの問いかけに、執務室は静まり返っていた。

ただの冒険者に戻るか、それとも、この国の闇に挑むか。

その選択は、もはや俺一人のものではなかった。隣に立つリリア、そして工房で待つバルガン。『ブレイカーズ』として、どう進むべきか。


だが、迷いはなかった。

俺は、ギルドマスターの目を真っ直ぐに見据え、静かに、しかしはっきりと告げた。


「……逃げるのは、性に合わない。俺たちが関わってしまった事件なら、最後まで見届けさせてもらいたい」


その言葉は、俺個人の意志であると同時に、仲間たちの想いを代弁するものだと確信していた。リリアも、俺の隣で強く頷いている。


俺たちの答えを聞いたギルドマスターは、フッと、まるで試すような笑みを浮かべた。


「……そう言うと思った。ならば、話そう。君たちが足を踏み入れた、この王国の闇について」


彼は、重々しく語り始めた。

ここ数ヶ月、王都では、騎士団や王宮の要人が、不可解な状況で命を落とす事件が相次いでいるという。ある者は訓練中の事故で、ある者は原因不明の病で。そして何人かは、今回俺たちが見つけた騎士のように、任務中に消息を絶ち、無残な亡骸となって発見されている。


「公式には、全て事故か、あるいは魔物の仕業として処理されている。だが、我々は背後に、何者かの明確な『意志』を感じている。王国の秩序を、内側から破壊しようとする、見えざる敵の存在をな」


「その騎士は、何かを掴んでいた、と?」

「おそらくは。彼は、騎士団の中でも特に優秀な密偵だった。彼が命を賭して持ち帰ろうとしたこの密書には、その敵の尻尾を掴む、重要な手がかりが記されているに違いない」


ギルドマスターは、伝達ケースを厳重な箱に収めると、部下に命じて騎士団の本部へと運ばせた。


「この件は、本来ギルドが表立って介入できる問題ではない。だが、これ以上、王国の屋台骨を揺るがす事態を見過ごすわけにもいかん。――『ブレイカーズ』、君たちに、非公式の特命依頼を出す」

「特命依頼……」

「そうだ。騎士団も、見えざる敵に内通者がいる可能性があり、迂闊には動けん。だが、君たちのような、しがらみのない実力者ならば、奴らの警戒網をくぐり抜けられるかもしれん」


彼の依頼は、こうだった。

密書を解読し、騎士団が本格的に動き出すまでの間、俺たちはギルドの冒険者として、事件の周辺を独自に調査する。そして、もし敵の尻尾を掴んだなら、俺たちのやり方で、それを叩く。


「もちろん、危険な任務だ。相手は、王国の精鋭騎士を闇から葬るほどの連中だ。断るなら、今のうちだぞ?」


その言葉は、もはや俺たちの耳には届いていなかった。

見えざる敵。王都を蝕む陰謀。

それは、これまで俺たちが戦ってきたどんな魔物よりも、手強く、そして危険な相手に違いない。


だが、俺たちの胸には、恐怖よりも先に、武者震いのような闘志が込み上げていた。

工房に戻り、この一件をバルガンに話すと、彼はニヤリと歯を見せて笑った。


「面白い! ゴーレムだの化け物鳥だの、相手にするのは飽きてきたところだ! 正体不明の悪党を、俺たちの『弾丸』で白日の下に晒してやろうじゃねえか!」


こうして、俺たち『ブレイカーズ』の新たな戦いが始まった。

それは、もはや単なる冒険ではない。

この王国の運命を左右する、影との戦いの始まりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ