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第四十二話:王都ギルドの洗礼

俺たちがギルドの巨大な扉を押し開けると、そこには、熱気と喧騒が渦巻く、巨大な空間が広がっていた。

天井は教会のドームのように高く、壁一面には、ランクごとに分けられた巨大な依頼掲示板が設置されている。いくつも並んだ受付カウンターには常に行列ができており、武具屋、道具屋、情報屋といった店までもが、ギルドの建物の中に軒を連ねていた。


まるで、一つの街そのものが、この建物の中に凝縮されているかのようだ。


「……こりゃ、たまげたな」

バルガンが、呆気にとられたように呟く。リリアも、不安と興奮が入り混じった顔で、きょろきょろと周りを見渡していた。


俺たちはまず、自分たちのパーティー登録を王都の支部に移すため、受付カウンターの列に並んだ。

順番が来て、俺が銀色のBランクプレートを提示すると、受付の女性は慣れた手つきで手続きを始めた。だが、俺たちの情報を魔道具で読み取った彼女は、ほんの少しだけ眉をひそめた。


「……始まりの街支部からの、特例昇格、ですか。パーティーメンバーは、アルク様とリリア様。そして、冒険者登録のない、ドワーフのバルガン様……」


その口調は丁寧だったが、どこか値踏みをするような響きがあった。王都では、俺たちのようなイレギュラーな経歴を持つパーティーは、歓迎されるよりも先に、まず疑われるのだろう。


手続きを終え、俺たちは改めてホールを見渡す。

行き交う冒険者たちのレベルが、始まりの街とはまるで違った。その多くが、魔力を帯びた武具を当たり前のように装備している。彼らが交わす会話の中にも、「ワイバーンの巣の調査」「迷宮ラビリンスの中層攻略」といった、俺たちがこれまで縁のなかった言葉が飛び交っていた。


その時、ホールの一角が、すっと静かになった。

見ると、一糸乱れぬ動きで歩く、揃いの白銀の鎧をまとったパーティーが入場してくるところだった。彼らが通る道は、まるでモーゼの奇跡のように自然と開けていく。


「……あれが、王都最強と噂の、Aランクパーティー『グリフォンの誓い』……」


誰かの囁き声が聞こえる。

彼らは、俺たちとは対極の存在だった。誰もが認めるエリート。正攻法で、数多の伝説を打ち立ててきた、王道の英雄たち。彼らは、俺たちに一瞥もくれず、最上級ランク専用のカウンターへと消えていった。


俺は、自分たちの旅装と、彼らの輝く鎧を見比べ、ここがどういう場所なのかを改めて思い知らされた。


「おい、見ろよ。あいつら、田舎の支部から特例昇格で来たっていう『ブレイカーズ』とかいう連中だぜ」

「へえ。鋼鉄ゴーレムを倒したって噂の? あの装備でか? 胡散臭えな」

「どうせ、地方の弱いゴーレムだったんだろ。王都のBランク依頼は、レベルが違う。一月もすりゃ、泣いて田舎に帰るさ」


聞こえてきたのは、案の定、俺たちを侮る声だった。

始まりの街で得た名声など、この場所では何の意味もなさない。俺たちは、また振り出しに戻ったのだ。


俺は、Bランクの依頼が貼られた掲示板を見上げた。

「キマイラの討伐」「霊峰のドラゴンゾンビ調査」。どれも、鋼鉄ゴーレムに勝るとも劣らないであろう、本物の脅威ばかり。


だが、俺の心にあったのは、恐怖ではなかった。

隣を見ると、バルガンは「ケッ、こいつらの持ってる剣はナマクラばかりだ」と悪態をつき、リリアは「……負けません」と小さな拳を握りしめている。


いいだろう。

もう一度、俺たちの力を証明してやろうじゃないか。

俺は、この巨大な要塞で、新たな一歩を刻むべく、依頼書の一枚に手を伸ばした。

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