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第四十一話:王都

始まりの街を出て、数日が経った。

俺たちの旅は、バルガンが改造した工房馬車のおかげで、驚くほど快適だった。昼は俺が手綱を握り、夜は頑丈な馬車の中で、バルガンが打つ槌音と、リリアが静かにページをめくる音を聞きながら眠る。それは、まるで家族のような、穏やかで満たされた時間だった。


「見てください、アルクさん! あれが……!」


街道を抜けた丘の上で、リリアが馬車の窓から身を乗り出して、感嘆の声を上げた。

その指さす先、地平線の彼方まで広がる、巨大な都市。天を突くいくつもの尖塔、街を囲む純白の城壁、そしてその中央に鎮座する、壮麗な王城。

それが、この国の中心地、王都だ。


「……へっ、でけえじゃねえか」


バルガンも、感心したように唸る。俺もまた、その圧倒的なスケールに息を呑んでいた。俺たちが生まれ育った始まりの街が、まるで箱庭のように思える。


王都の正門には、長い行列ができていた。

様々な地方の訛りで話す商人たち。きらびやかな鎧をまとった騎士。そして、俺たちと同じ、一攫千金を夢見る冒険者たち。人種も、服装も、放つ雰囲気も、始まりの街とはまるで違う。世界の全てが、ここに集まっているかのようだった。


衛兵の検問を抜け、ついに王都の内部へと足を踏み入れる。

どこまでも続く石畳の大通り。ひしめき合うように建つ、煉瓦造りの高い建物。そして、耳を聾するほどの喧騒。その全てが、俺たちを圧倒していた。


「……まずは、拠点を確保しないとな。ギルドの場所も確認しておきたい」


俺たちは、ひとまず冒険者向けの地区にある、評判の良い宿に馬車を預けた。そして、この巨大な都市の心臓部ともいえる、冒険者ギルドへと向かう。


やがてたどり着いたその建物は、俺たちの想像を遥かに超えていた。

始まりの街のギルドが、ただの酒場併設の詰所だったとすれば、ここのギルドは、さながら要塞だ。複数の建物が連結し、城壁のような外壁に囲まれている。ひっきりなしに出入りする冒険者たちは、誰もが一流の風格を漂わせていた。


「…………」


俺たち三人は、その巨大な門の前で、ただ立ち尽くす。

鋼鉄ゴーレムを倒し、テンペスト・ロックを墜とした俺たちの自信が、この場所ではほんのちっぽけなものに感じられた。


始まりの街とは、何もかもが違う。

俺は、隣に立つ仲間たちの顔を見る。二人の瞳にも、俺と同じ、武者震いのような光が宿っていた。


ここが、俺たちの新しい戦場だ。

俺は、要塞の如きギルドの門へと、決意を込めて一歩を踏み出した。

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