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第四話:死の淵での覚醒

死。

その一文字が、やけに冷静に頭に浮かんだ。

目の前では、ミノタウロスがその巨大な戦斧を振りかぶっている。鈍く光る刃が、俺のちっぽけな人生の終着点に見えた。


(結局、何もできなかったな……)


戦うことを夢見て冒険者になった。

だが、与えられたのは荷物持ちという役割だけ。仲間からは役立たずと罵られ、最後は囮として捨てられた。俺の冒険は、憧れに手を伸ばすことすらできずに終わるのか。


ザーグたちの顔が脳裏をよぎる。俺を見下していたあの目が、嘲るような声が、蘇ってくる。

理不尽だ。悔しい。こんなところで、こんな死に方、冗談じゃない。


――邪魔だ。


ミノタウロスが。ザーグが。俺を縛り付けるこの運命が。

全部、全部、邪魔だ。


「――邪魔だッ!!」


声にならない叫びが、喉の奥から迸る。

ほとんど無意識だった。俺は、いつも通り【アイテムボックス】に意識を向けた。その中にある、そこらで拾ったただの石ころ。何の価値もない、ただの石。


それを、掴み出すのではなく、俺の全存在で拒絶するように、前へ――突き出した。


ヒュンッ!!


空気を切り裂くような、鋭い音が響いた。

次の瞬間、俺の手の中に現れるはずだった石ころは、どこにもなかった。


代わりに、目の前のミノタウロスの太い脚から、血飛沫が上がっていた。


「グ……ギィ!?」


巨体がよろめき、苦悶の声を上げる。その膝には、信じられないことに、あのただの石ころが深く突き刺さっていた。まるで、高速で射出された鉄の弾丸のように。


何が……起きた?


俺は自分でも理解が追いつかなかった。呆然と自分の右手を見つめる。

いつもは、取り出したいアイテムを「受け取る」ように意識する。だが、今は違った。「邪魔だ」という強い拒絶の意思と共に、アイテムを「押し出す」ように念じた。


ただそれだけで、こんなことが起きるというのか?


「グルォォォオオオ!!」


怒り狂ったミノタウロスが、負傷した脚を引きずりながらも、再び戦斧を振り上げる。

その恐ろしい形相を前に、俺の心臓はまだ恐怖に凍りついている。だが、さっきまでとは決定的に違うものが、胸の内で芽吹いていた。


それは、ほんの僅かな――可能性という名の、熱だった。

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