表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/109

第三十六話:墜ちた空の王者

「――終わりだッ!」


俺の咆哮が、谷間に響き渡る。

アイテムボックスから射出された、本来の威力を持つ『ブレイカー・ボルト』が、一直線に、落下していくテンペスト・ロックへと突き進む。


リリアの呪いによって神速を奪われた空の王者は、もはやただの的だった。

回避する術もなく、その胴体に、寸分の狂いもなく、黒い杭が深々と突き刺さる。


**グシャァッ!!**


鋼鉄の如き硬度を誇ったはずの羽が、いともたやすく砕け散る。

バルガンが鍛え上げた鉄塊は、その勢いを殺すことなく、巨獣の肉を抉り、骨を砕き、その体を内側から破壊した。


「ギィィィィィィィアアアアアアッッ!!」


テンペスト・ロックの、断末魔の絶叫が黒風谷に木霊した。

それは、これまで俺たちが聞いてきた威嚇の咆哮とは全く違う、純粋な苦痛と絶望に満ちた叫びだった。


翼を破壊され、飛行能力を完全に失った巨体は、なすすべもなく、重力に従って地面へと墜落していく。


**ドッッッッッッッッッシィィィィン!!!!**


凄まじい地響きと砂塵が巻き起こる。

谷を吹き荒れていた烈風が、その衝撃に一瞬だけ、ぴたりと止んだ。

そして、訪れる静寂。


砂塵がゆっくりと晴れていくと、そこには、翼を無残に折られ、巨体を横たえて完全に沈黙した、空の王者の亡骸があった。


「……やった……のか……?」


俺は、荒い呼吸を繰り返しながら、その場に膝をつきそうになるのを必死にこらえた。

岩陰から、リリアが駆け寄ってくる。彼女もまた、信じられないものを見る目で、墜落したテンペスト・ロックの姿を見つめていた。


「やりましたね……アルクさん!」

「ああ……やったな、リリア。お前の魔法がなければ、絶対に勝てなかった」


俺がそう言うと、リリアは力強く首を横に振った。

「ううん……アルクさんの、あの作戦と、正確な射撃があったからです。わたしは、ただ信じて魔法を込めただけですから」


俺たちは、互いの顔を見て、自然と笑みをこぼした。

一人では絶対に勝てない相手。だが、二人なら勝てる。

俺たちの絆が、また一つ、この勝利によって強く、固くなったのを感じた。


俺たちは、討伐の証拠として、テンペスト・ロックの金属質の羽や、鋭い爪、そして心臓にあった魔石を回収する。山のような戦利品も、俺のアイテムボックスの前では問題にならない。


かつて空の王者が支配した谷に、今は穏やかな風が吹いている。

俺たちは、また一つ大きな壁を乗り越えた達成感を胸に、ギルドのある街への帰路についた。

『ブレイカーズ』の伝説に、また新たな一ページが刻まれた瞬間だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ