表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/109

第三十五話:神速を討つ戦術

テンペスト・ロックは、絶対的な強者の余裕を持って、俺たちの上空を旋回している。時折、威嚇するように急降下を繰り返すが、その度に俺たちは岩陰に隠れることしかできない。


「どうしますか、アルクさん……! このままでは……!」

「落ち着け、リリア。策はある」


俺は荒い息を整えながら、思考を巡らせる。

やつは、俺の射撃を『見てから』避ける。ならば、答えは二つだ。見てから避けられないほどの『面』で攻撃するか、あるいは、避ける能力そのものを奪うか。


「……リリア。お前の『重圧の呪い(グラビティ・カース)』、準備はできてるか?」

「は、はい! いつでも!」

「よし。だが、ただ呪いを込めたニードルを撃っても、あれは避けるだろう。だから、こうする」


俺はリリアに、俺の考えた、無謀とも言える作戦を伝えた。

それは、俺のスキルの精密制御と、リリアの魔法、そして俺たちの信頼関係がなければ、絶対に成り立たない奇策だった。

リリアは一瞬目を見開いたが、すぐに強い意志を宿した瞳で、こくりと頷いた。


「――やります。アルクさんを、信じますから」


その言葉だけで、十分だった。

俺たちは、テンペスト・ロックが次の攻撃のために降下してくる、その一瞬を待った。

そして――来た!


「今だ!」


俺は岩陰から飛び出すと、天を仰ぐ。

そして、【アイテムボックス】に格納しているありったけのガラクタ――石ころ、鉄屑、合わせて数十個――を、リリアが呪いを込めた一本の『ブレイカー・ニードル』と**同時に**、広範囲に向けて射出した!


それは、まさしく散弾。

空中に、巨大な礫の網が形成される。

テンペスト・ロックは、さすがにこれには驚いたようだった。一つの弾丸を避けるのは容易いが、広範囲に迫りくる無数の障害物を、全て避けることはできない。


「グルァッ!」


やつは翼を巧みに動かし、飛来する石や鉄屑を弾き、あるいはその合間を縫うようにして突き進む。

だが、その回避機動に全神経を集中させていたやつは、気づかなかった。

無数のガラクタの中にたった一本だけ混じっていた、リリアの魔力が込められた、本命の存在に。


チクリ、と。

回避の最中、ニードルが、やつの巨大な翼の膜をわずかに掠めた。


「――かかったな!」


直後、テンペスト・ロックの体が、ぐらりと大きく傾いだ。


「グ、ギィ!?」


まるで、翼に鉛の重りをいくつも括り付けられたかのように、その動きが急激に鈍重になる。リリアの『重圧の呪い』が、確実に効果を発揮したのだ。

神速を誇った空の王者は、バランスを崩し、不格好に高度を下げていく。


もはや、神速の脅威はない。

ただの、巨大で頑丈な――的に変わった。


「もらった!」


俺は、アイテムボックスから選択する『弾丸』を、ガラクタから、バルガンが作った本来の『ブレイカー・ボルト』へと切り替える。

狙うは、落下していく巨獣の、大きくがら空きになった胴体。


これが、俺たち『ブレイカーズ』の戦術だ。

俺は勝利を確信し、必殺の一撃を放つべく、右腕を天に突き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ