第二十八話:一射に賭ける想い
ゴーレムの猛攻は、まさに嵐のようだった。
俺は、人生で経験したことのないほどの集中力で、死の拳打を避け続ける。ただ逃げるだけでは、いずれ捕まる。俺は回避の合間に、アイテムボックスから鉄屑や石ころを射出し、ゴーレムの足元や関節と思わしき箇所を狙った。
ダメージは与えられない。だが、着弾の衝撃が、巨人の体勢をほんのわずかに、コンマ数秒だけ崩す。そのコンマ数秒が、俺の生存確率を繋ぎとめていた。
ドゴォッ!
巨大な岩が、俺のすぐ横を通り過ぎたゴーレムの腕によって粉砕される。その風圧だけで、体がよろめいた。息が上がり、心臓が張り裂けそうだ。
(まだか……!)
その時、後方に下がっていたバルガンからの声が、戦場に響き渡った。
「アルク、聞こえるか! 狙うはヤツの胸の中心! モノアイの真下だ! そこがおそらくコアに一番近い!」
岩壁の上から、バルガンが必死に叫んでいる。彼の横では、リリアが杖を強く握りしめ、祈るように俺を見つめていた。
二人の顔を見て、俺の心に最後の闘志が燃え上がる。
(信じて、待ってくれている……!)
もう、限界だった。
だが、ここしかない。俺は、最後の賭けに出た。
「――お前の相手は、俺だろッ!!」
雄叫びを上げ、俺はこれまで逃げる一方だった足を止め、ゴーレムへと向き直る。
そして、アイテムボックスに格納していた、ありったけのガラクタ――壊れた盾、鉄鍋、予備の武具、石塊――その全てを、ゴーレムの赤いモノアイめがけて、連続で射出した。
ガガガガガッ!!
嵐のような礫が、巨人の顔面に叩きつけられる。
一つ一つに威力はない。だが、視界を塞がれ、連続で叩きつけられる衝撃に、さすがのゴーレムも一瞬だけ、その動きを止めた。
――今だ。
俺の背後で仲間が見守っている。
俺の手の中には、彼らの技術と魔法の粋が込められた、究極の一矢がある。
俺は、これまでの人生の全てを、仲間たちの想いの全てを、この一射に賭ける。
俺は大きく息を吸い込み、揺らぐことのない大地に、強く、強く足を踏ん張った。
そして、意識をアイテムボックス内の、最後の切り札へと接続する。
『破砕の震撃杭』。
今、この一瞬しかない――!
俺は、鋼鉄の巨人の胸の中心、ただ一点だけを見据え、右腕を突き出した。




