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第二十五話:対鋼鉄ゴーレム戦略

工房に戻った俺が依頼書をテーブルに叩きつけると、バルガンとリリアはゴクリと喉を鳴らした。


「……鋼鉄ゴーレム、か。そりゃまた、とんでもねえ大物だな」

バルガンが、唸るように言った。


「ザーグの奴らが、自慢の魔剣でも傷一つつけられなかった、と言っていた。普通の攻撃が全く通用しないのは間違いない」

俺の言葉に、今度はリリアが分析を始める。


「ゴーレムである以上、動力源となる『コア』が体のどこかにあるはずです。でも、鋼鉄の装甲に守られているなら、それを破壊しないとコアには届きません」

「その通りだ」とバルガンが頷く。「鋼鉄ゴーレムに使われるのは、おそらくアダマンタイトに近い魔法金属だろう。斬る、という発想では刃が立たん。必要なのは、一点集中の、圧倒的な『衝撃』と『貫通力』だ」


斬撃は無効。魔法耐性も高い可能性がある。そして、弱点は分厚い装甲の奥深く。

絶望的な条件が、逆に俺たちの頭を冴えさせ、進むべき道をはっきりと照らし出していた。


「つまり、俺たちの『ブレイカー・ボルト』の出番、ということか」

「ああ。だが」とバルガンは続けた。「ただのボルトじゃ、足りねえかもしれん」


彼は羊皮紙を取り出すと、猛烈な勢いで炭を走らせ始めた。


「これまでのボルトは、いわば榴弾だ。着弾の衝撃で広範囲にダメージを与えることを目的としていた。だが、今度の敵に必要なのは、一点を穿つ『徹甲弾』だ」


彼が描いたのは、先端が極端に鋭く、そして後部に推進力を最大化するための重量塊がついた、パイルバンカーのような形状の杭だった。


「有り金全部はたいて、最高の素材を仕入れてくる。この、一点突破型の特殊杭を、俺が魂込めて打ち上げてやる」


バルガンの言葉に、今度はリリアが続く。


「それなら、わたしも特別な付与を考えます。炎や雷のような属性魔法では、ゴーレムの魔法耐性に阻まれる可能性があります。ですが、物理的な破壊を補助する魔法なら……」

「どういうことだ?」

「『振動付与ヴァイブレーション』です。杭の先端に、超高速の振動を付与します。アルクさんの射出による物理的な衝撃が装甲に亀裂を生み、その瞬間に振動の魔法が、内側から亀裂を広げて装甲全体を砕け散らせる……という狙いです」


バルガンが、物理的な破壊力を極限まで高めた『杭』を作る。

リリアが、その破壊力を内側から増幅させる『魔法』を込める。

そして俺が、それを音速で叩きつける『砲台』となる。


これこそが、俺たち『ブレイカーズ』だけが成し得る、対鋼鉄ゴーレムの唯一無二の回答だった。


「……決まりだな」


俺たちの間には、もはや言葉は必要なかった。

バルガンは、報酬の金袋を掴むと、最高の素材を仕入れるために工房を飛び出していく。

リリアは、これまでにない高度で繊細な魔法を練り上げるため、瞳を閉じて精神集中を始めた。


そして俺は、来るべき決戦で、人生最高の一射を放つべく、己のスキルと向き合う。

全ては、この一撃のために。

俺たち三人の、静かで、しかし熱い戦いが始まっていた。

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