第二十話:パーティー「ブレイカーズ」結成
リリアは涙を拭うと、決意に満ちた瞳で俺の手元――地面に置かれた『ブレイカー・ボルト』を見つめた。
「どんな魔法を付与しますか? 炎ですか、氷ですか。それとも……」
「一番、あんたが得意で、一番強力なやつを頼む」
俺の答えに、リリアはこくりと頷いた。
彼女はボルトの前にしゃがみ込むと、そっと両手をかざす。今までとは比べ物にならない、膨大な魔力が彼女の体から溢れ出し、周囲の空気を震わせた。
「――万象を穿つ雷の槍よ、我が声に応えよ!」
詠唱と共に、激しい光が迸る。
ただの鉄の杭だった『ブレイカー・ボルト』が、バチバチと青白い火花を散らし、まばゆい雷光をその身に纏っていく。制御不能だったはずの強大な魔力が、リリアの完璧なコントロールの下、一点へと収束していくのが分かった。
やがて光が収まった時、そこに横たわっていたのは、もはやただの鉄塊ではなかった。
青白い雷のオーラを纏い、それ自体が意志を持つかのように微かに唸りを上げる、魔法兵器。俺たちの最初の『魔法弾』が完成した瞬間だった。
俺はそのボルトをアイテムボックスに格納すると、リリアに手を差し伸べた。
「行こう。俺たちの戦いが始まる」
「……はい!」
リリアは、長い間暮らした庵を一度だけ振り返ると、迷いのない足取りで俺についてきた。
街に戻り、バルガンの工房の扉を開ける。
俺の後ろにいるリリアの姿を認めると、バルガンは口に咥えていたキセルを落としそうになった。
「おいおい、アルク……本当に連れてきやがったのか、『呪いのエンチャンター』を」
「リリアだ。今日から俺たちの仲間になる」
「……リリア、です。よろしくお願いします」
リリアは深々と頭を下げる。バルガンは頭をガシガシと掻きながらも、どこか嬉しそうに口の端を吊り上げた。
こうして、俺、バルガン、リリアという、奇妙な三人組が初めて一堂に会した。
「さて、と」とバルガンが切り出した。「チームとして動くなら、名前が必要だな。どうする、アルク」
パーティー名か。考えたこともなかった。
俺たちが持つ、常識外れの力。
バルガンの『壊れる』武器。リリアの『暴走する』魔法。そして、それを撃ち出す俺のスキル。
「俺たちは、常識を『壊し』、敵の防御を『砕き』、そして『壊れる』武器を使う」
俺がそう言うと、バルガンがニヤリと笑った。
「決まりだな。俺たちのパーティー名は――**『ブレイカーズ』**だ」
ブレイカーズ。破壊者たち。
いかにも、俺たちらしい名前だった。リリアも、静かに頷いている。
役立たずの寄せ集め。社会から爪弾きにされた者たち。
だが、俺たちは、最強のパーティーになる。
俺たちの伝説は、まさにここから始まろうとしていた。




