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音楽創世記~音の開拓者たち~  作者: かつを
第1部:魂の源流編 ~ブルース、カントリー、そしてゴスペル~
7/15

フィールド・レコーディング創世記 第7話:あなたのプレイリストに眠る声(終)

作者のかつをです。

第一章の最終話です。

 

一人の偉大な開拓者の功績が、現代の私たちと、どう繋がっているのか。

この物語全体のテーマに立ち返りながら、彼の物語を締めくくりました。

読者の皆様の心に、何か少しでも、残るものがあれば幸いです。

 

※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

アラン・ローマックスは、生涯を、旅に捧げた。

アメリカ南部だけでなく、カリブ海、ヨーロッパ、アジア。

彼は、世界中の「 народ(ピープル)の声」を、その耳と、録音機で、記録し続けた。

 

彼が遺した録音は、数万時間に及ぶ。

それは、人類が共有すべき、声の遺産となった。

 

彼が守ろうとしたのは、単なる音楽ではなかった。

それは、機械化とグローバリゼーションの波の中で、急速に失われつつあった、人間の文化の多様性そのものだった。

 

それぞれの土地には、それぞれの歌があり、それぞれの魂の形がある。

世界が、一つの同じ色に塗りつぶされてはならない。

彼の旅は、その信念に貫かれていた。

 

 

……2025年、東京。

 

カフェで流れる古いブルースを聴きながら、若者が、イヤホンを耳に当てる。

彼のスマートフォンの中には、世界中の、ありとあらゆる音楽が詰まっている。

 

ヒップホップ、ロック、EDM、J-POP……

 

彼は知らない。

 

自分が聴いている、そのヒップホップのビートの源流に、レッドベリーが刑務所で歌ったワークソングのリズムが、生きているかもしれないということを。

 

自分が聴いている、そのロックバンドのギターリフが、ロバート・ジョンソンが悪魔に売り渡した魂の、遠いこだまであるかもしれないということを。

 

自分が、指一本で、世界中の音楽にアクセスできる、この奇跡のような日常。

その始まりに、泥まみれの車を走らせ、200キロの機材を担ぎ、消えゆく声を、必死に、未来から手繰り寄せようとした、一人の開拓者がいたということを。

 

歴史は、彼の名を忘れるかもしれない。

しかし、彼が救い出した声は、決して、消えることはない。

 

それは、あなたのプレイリストの片隅で、今も、静かに、次の世代に発見されるのを、待っているのだから。

 

(第一章:フィールド・レコーディング創世記 ~消えゆく声を記録した男~ 了)

第一章「フィールド・レコーディング創世記」を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

 

アラン・ローマックスの思想は「文化の公正(Cultural Equity)」と呼ばれ、全ての文化は等しく価値があり、保護されるべきだというものです。

彼の活動は、音楽の分野を超えて、今なお大きな影響を与え続けています。

 

さて、アメリカ南部の魂の歌が、記録されました。

次なる物語は、その音楽が、いかにして「商品」となり、巨大な産業へと変貌していくのか。

その光と影の物語です。

 

次回から、新章が始まります。

第二章:レース・レコード創世記 ~黒人音楽は“ビジネス”になるか?~

 

ブルースが、初めてレコードに刻まれた日。

そこには、人種差別と、商業主義、そして音楽への愛が渦巻く、知られざるドラマがありました。

 

引き続き、この壮大な音楽創世記の旅にお付き合いいただけると嬉しいです。

ブックマークや評価で応援していただけると、第二章の執筆も頑張れます!

 

それでは、また新たな物語でお会いしましょう。

ーーーーーーーーーーーーーー

この物語の公式サイトを立ち上げました。


公式サイトでは、各話の更新と同時に、少しだけ大きな文字サイズで物語を掲載しています。

「なろうの文字は少し小さいな」と感じる方は、こちらが読みやすいかもしれません。


▼公式サイトはこちら

https://www.yasashiisekai.net/

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