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音楽創世記~音の開拓者たち~  作者: かつを
第1部:魂の源流編 ~ブルース、カントリー、そしてゴスペル~
54/61

ロカビリーとサン・レコード 第7話:盗まれた音楽?

作者のかつをです。

第7話をお届けします。

 

今回は、エルヴィスと、ロックンロールを巡る、非常に、デリケートで、しかし、重要な、テーマに、踏み込んでみました。

「文化の盗用」という、現代にも、通じる、この、難しい問題を、皆さんは、どう、考えますか?

 

※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

エルヴィス・プレスリーが、王座に、君臨する一方で。

その、栄光の、影では、一つの、根深い、批判が、囁かれ続けていた。

 

「ロックンロールは、黒人から、盗まれた、音楽だ」と。

 

エルヴィスが、歌った、ヒット曲の、多く。

それは、元々、黒人の、ブルースや、R&Bの、アーティストたちが、先に、レコーディングしていたものだった。

 

「That's All Right, Mama」は、アーサー・クルーダップ。

「Hound Dog」は、ビッグ・ママ・ソーントン。

 

しかし、彼ら、オリジナルの、黒人アーティストたちが、正当な、名声や、報酬を、手にすることは、ほとんど、なかった。

 

同じ曲を、白人の、エルヴィスが、歌った途端、その曲は、何百万枚も、売れる、大ヒットとなる。

この、あまりにも、不公平な、現実。

 

多くの人々は、エルヴィスを、「文化の盗人」だと、非難した。

彼は、黒人音楽の、美味しいところだけを、盗み、それを、白人の、若者向けに、薄めて、売りさばいた、搾取者なのだ、と。

 

その、批判は、半分は、正しく、そして、半分は、間違っていた。

 

確かに、当時の、音楽産業には、構造的な、人種差別が、深く、根付いていた。

黒人アーティストが、正当な、対価を、得られなかったのは、紛れもない、事実だ。

 

しかし、エルヴィス自身は、黒人音楽への、深い、愛情と、敬意を、抱いていた。

 

彼は、子供の頃から、貧しい、黒人居住区の、すぐ隣で、育った。

教会の、ゴスペルを、聴き、ビール・ストリートの、ブルースに、心を、震わせた。

 

彼にとって、黒人音楽は、決して、盗むべき、対象ではなかった。

それは、彼自身の、血となり、肉となった、魂の、一部だったのだ。

 

彼は、テレビ番組で、こう、語っている。

 

「ロックンロールは、昔から、あったんだ。それは、基本的に、ゴスペルや、リズム&ブルースだ。黒人の、人々が、何年も、前から、歌っていたものなんだ」

 

彼は、自らの、ルーツを、隠そうとは、しなかった。

 

彼が、本当に、成し遂げたこと。

それは、「盗作」ではなかった。

 

それは、異文化の、偉大な「融合」だった。

 

黒人の、持つ、情熱的な、リズム。

白人の、持つ、感傷的な、メロディ。

 

その、二つの、偉大な、川の流れを、彼は、自らの、肉体という、器の中で、一つに、まとめ上げた。

 

そして、その、新しい、音楽の、奔流は、もはや、誰にも、止められない、巨大な、力となって、アメリカ社会を、分断していた、人種の壁を、なぎ倒していった。

 

エルヴィス・プレスリーは、聖人ではなかった。

しかし、彼は、ただの、盗人でもなかった。

 

彼は、時代の、矛盾を、その、一身に、背負った、偉大な、触媒だったのだ。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 

この、論争は、今なお、続いています。

しかし、多くの、黒人アーティストたちが、エルヴィスの、功績を、認めているのも、事実です。

B.B.キングは、「エルヴィスが、いなければ、我々の音楽が、あれほど、広く、聴かれることは、なかっただろう」と、語っています。

 

さて、サム・フィリップスの、夢の、物語。

いよいよ、最終章です。

 

次回、「ビール・ストリートの夢の跡(終)」。

第八章、感動の、最終話です。

 

ぜひ最後までお付き合いください。

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もし、この物語の「もっと深い話」に興味が湧いたら、ぜひnoteに遊びに来てください。IT、音楽、漫画、アニメ…全シリーズの創作秘話や、開発中の歴史散策アプリの話などを綴っています。


▼作者「かつを」の創作の舞台裏

https://note.com/katsuo_story

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