エレクトリック・ギター革命前夜 第5話:シングルノートの衝撃
作者のかつをです。
第5話をお届けします。
チャーリー・クリスチャンの登場が、いかに、音楽の世界に、革命的な、衝撃を与えたか。
その、功績の、大きさを、描きました。
まさに、彼以前と、彼以後で、ギターという楽器の、意味が、全く、変わってしまったのです。
※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
ベニー・グッドマン楽団に、正式に加入した、チャーリー・クリスチャン。
そのニュースは、ジャズ界に、大きな衝撃を、与えた。
「グッドマンが、エレキギターを?」
「あの、田舎者の、変な楽器を?」
誰もが、半信半疑だった。
しかし、彼らの演奏が、ラジオの電波に乗り、レコードとして、世に出ると、その疑念は、驚嘆へと、変わっていった。
人々は、耳を、疑った。
ギターが、歌っている。
それも、最高の、サックス奏者のように、自由に、滑らかに。
チャーリーの、シングルノート(単音弾き)のソロは、革命だった。
それまでの、ギタリストたちが、もがいていた、限界。
音量の、壁。
サステインの、壁。
彼は、エレクトリック・ギターという、新しい翼を、手に入れたことで、そのすべての壁を、軽々と、飛び越えてしまったのだ。
彼の、革新性は、それだけではなかった。
彼の、ハーモニーの感覚は、あまりにも、先進的だった。
彼は、後の、モダン・ジャズ(ビバップ)の時代を、予見するような、複雑で、スリリングな、コード進行を、次々と、生み出していった。
アメリカ中の、若いギタリストたちが、ラジオに、かじりついた。
そして、チャーリー・クリスチャンが、弾く、魔法のような、フレーズを、必死に、コピーしようと、試みた。
彼は、たった一人で、ギターという楽器の、役割を、永遠に、変えてしまったのだ。
ギターは、もはや、リズムセクションの、日陰者ではない。
サックスや、トランペットと、対等に、渡り合える、華やかな、ソロ楽器。
チャーリー・クリスチャンは、すべての、ギタリストにとっての、最初の「ギターヒーロー」となった。
彼の革命は、ジャズの世界だけに、とどまらなかった。
彼の、シングルノートの、ブルージーな、フレーズ。
それは、やがて、Tボーン・ウォーカーや、B.B.キングといった、ブルースの巨人たちに、受け継がれていく。
そして、彼らが、さらに、増幅させた、そのサウンドが、ロックンロールという、新しい時代の、扉を、こじ開けることになる。
現代の、ロックギタリストが、弾く、派手なギターソロ。
その、すべての、源流を、遡っていくと、必ず、一人の、夭逝の天才に、行き着く。
ベニー・グッドマンの、オーケストラの、片隅で、はにかみながら、しかし、誇らしげに、ギブソンの、ES-150を、構えていた、一人の、黒人青年。
チャーリー・クリスチャンに。
彼は、あまりにも、短い時間で、あまりにも、多くのものを、後世に、遺した。
彼の、ろうそくの火は、誰よりも、明るく、激しく、燃え上がっていた。
しかし、その火が、燃え尽きるのも、また、誰よりも、早かった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
チャーリー・クリスチャンが、ベニー・グッドマンのバンドに、在籍していた期間は、わずか、2年ほどしかありません。
しかし、その、あまりにも、短い期間に、彼は、歴史を、永遠に、変えてしまいました。
さて、時代の、寵児となった、チャーリー。
しかし、彼の、栄光の時間は、長くは、続きませんでした。
次回、「ミントンズ・プレイハウスの夜(終)」。
第六章、感動の、最終話です。
彼の、あまりにも、早すぎる、死の謎に、迫ります。
物語は佳境です。
ぜひ最後まで見届けてください。
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