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音楽創世記~音の開拓者たち~  作者: かつを
第1部:魂の源流編 ~ブルース、カントリー、そしてゴスペル~
39/60

エレクトリック・ギター革命前夜 第3話:ジャズの王様のオーディション

作者のかつをです。

第3話、お楽しみいただけましたでしょうか。

 

今回は、チャーリー・クリスチャンが、ジャズの王様、ベニー・グッドマンから受けた、屈辱的な仕打ちを描きました。

新しい才能は、常に、古い権威からの、嫉妬と、無理解に、直面する運命なのかもしれません。

 

※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

その、運命の電話は、突然、かかってきた。

電話の主は、ジョン・ハモンド。

 

彼は、レコード・プロデューサーであり、20世紀のポピュラー音楽における、最も重要な、才能発掘人タレント・スカウトだった。

ブルースの伝説、ロバート・ジョンソンのレコードを、世に送り出したのも、彼だ。

 

彼は、オクラホマの片田舎で、とんでもない才能が、燻っているという噂を、聞きつけていた。

そして、その才能を、彼がプロデュースする、当代きってのスターに、紹介しようと考えたのだ。

 

そのスターこそ、「キング・オブ・スウィング」と、呼ばれた男、ベニー・グッドマンだった。

 

グッドマンは、当時、アメリカで、最も人気のある、バンドリーダーだった。

彼のオーケストラは、常に、最高のプレイヤーたちで、固められていた。

彼のバンドに入ることは、すべてのジャズ・ミュージシャンにとって、最高の栄誉だった。

 

ハモンドの推薦を受け、チャーリー・クリスチャンは、大きな夢を抱いて、ロサンゼルスへと、向かった。

憧れの、ベニー・グッドマンのバンドで、演奏できるかもしれない。

 

しかし、オーディションの場で、彼を待っていたのは、冷たい、屈辱だった。

 

グッドマンは、最初から、チャーリーを、試す気など、なかった。

まず、彼の、田舎者まるだしの、派手な色のスーツと、先の尖った靴が、気に食わなかった。

 

そして、何よりも、彼が抱えてきた、奇妙な楽器。

アンプに繋がれた、エレクトリック・ギター。

 

グッドマンにとって、それは、音楽を奏でる、まともな楽器ではなかった。

ただの、下品な、雑音を出す、ガラクタにしか、見えなかったのだ。

 

「君か、ハモンドが言っていた、オクラホマの天才とやらは」

 

グッドマンは、冷ややかに、言った。

 

「まあ、いいだろう。一曲だけ、弾いてみろ」

 

そして、彼が、意地悪く、指定した曲。

それは、チャーリーが、一度も、聴いたことがない、複雑な曲だった。

 

チャーリーは、何も、弾けなかった。

彼は、ただ、呆然と、ステージの上に、立ち尽くすしかなかった。

 

オーディションは、わずか数分で、終わった。

チャーリーは、グッドマンから、一言も、言葉をかけられることなく、ステージから、降ろされた。

 

夢は、打ち砕かれた。

彼は、このまま、誰にも、その才能を、認められることなく、故郷のオクラホマに、帰るしかないのか。

 

しかし、ジョン・ハモンドは、諦めていなかった。

彼は、こんな形で、自分が信じた才能が、葬り去られるのを、黙って見ているような、男ではなかった。

 

彼は、グッドマンに対する、ささやかな、しかし、大胆な「復讐」を、計画していた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 

ベニー・グッドマンは、完璧主義者として知られ、自分のバンドのメンバーには、非常に厳しい要求をすることで、有名でした。

その厳しさが、彼のバンドを、最高水準に保っていたのですが、時には、新しい才能の芽を、摘んでしまうこともあったのです。

 

さて、このままでは終われない、プロデューサーのジョン・ハモンド。

彼は、常識破りの、ある奇策を、思いつきます。

 

次回、「ステージへの乱入者」。

歴史を動かす、伝説のジャム・セッションが、始まります。

 

よろしければ、応援の評価をお願いいたします!

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もし、この物語の「もっと深い話」に興味が湧いたら、ぜひnoteに遊びに来てください。IT、音楽、漫画、アニメ…全シリーズの創作秘話や、開発中の歴史散策アプリの話などを綴っています。


▼作者「かつを」の創作の舞台裏

https://note.com/katsuo_story

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