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音楽創世記~音の開拓者たち~  作者: かつを
第1部:魂の源流編 ~ブルース、カントリー、そしてゴスペル~
13/60

ブラックミュージック は“ビジネス”になるか? 第6話:すべての始まりの一枚(終)

作者のかつをです。

第二章の最終話です。

 

一人の開拓者の功績が、現代の私たちと、どう繋がっているのか。

この物語全体のテーマに立ち返りながら、彼の物語を締めくくりました。

読者の皆様の心に、何か少しでも、残るものがあれば幸いです。

 

※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

ペリー・ブラッドフォードの執念と、マミー・スミスの歌声。

その二つが生み出した「クレイジー・ブルース」という奇跡は、パンドラの箱を開けた。

 

オーケー・レコードの成功を目の当たりにした、他のレコード会社は、雪崩を打ったように、後に続いた。

 

パラマウント、コロムビア、ビクター。

彼らは、こぞって、黒人アーティストを探し始めた。

そして、「レース・レコード(人種別レコード)」という、新しい専門ジャンルを設立したのだ。

 

この奔流の中から、やがて、本物の巨人が、次々と姿を現すことになる。

 

ブルースの女帝、ベッシー・スミス。

ジャズという芸術を創造した、ルイ・アームストロング。

 

彼らの、歴史的な名演の数々が、レコード盤に刻まれ、後世に残されることになった。

もし、あの最初の一枚がなければ、その多くは、ライブハウスの喧騒の中に、永遠に消え去っていたかもしれない。

 

ペリー・ブラッドフォードは、その後も、音楽業界で活動を続けた。

しかし、彼が、再び「クレイジー・ブルース」ほどの成功を手にすることはなかった。

歴史は、彼を、最初の扉をこじ開けた、重要な開拓者としてよりも、マミー・スミスというスターの影にいる、一人の仕掛け人として、記憶することになる。

 

それで、よかったのかもしれない。

彼は、何よりも、結果を望んでいたのだから。

 

 

……現代。

 

音楽チャートの上位を、黒人アーティストのヒップホップやR&Bが、当たり前のように、独占している。

肌の色で、音楽が聴かれなくなる時代など、もはや、誰も想像できない。

 

その、あまりにも当たり前の日常。

その、巨大な川の流れの、その遥かな、遥かな水源。

 

そこに、たった一滴の、しかし決定的な滴を落とした男がいたことを、思い出してほしい。

 

「黒人の音楽は、売れない」

 

その、凝り固まった世界の常識に、たった一人で「ノー」を突きつけ、自らの執念だけで、歴史の扉をねじ開けた、一人の開拓者がいたことを。

 

すべての物語は、あの、一枚のレコードから始まったのだ。

 

(第二章:レース・レコード創世記 ~黒人音楽は“ビジネス”になるか?~ 了)

第二章「レース・レコード創世記」を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

 

「レース・レコード」という言葉自体は、人種差別的な響きを持っていますが、結果として、それまで記録されることのなかった、豊かな黒人音楽文化を、後世に残すという、非常に重要な役割を果たしました。

歴史の皮肉ですね。

 

さて、ブルースが、初めて「商品」となりました。

次なる物語は、教会の神聖な祈りの歌が、ブルースと出会い、全く新しい、魂を揺さぶる音楽へと変貌を遂げる物語です。

 

次回から、新章が始まります。

第三章:ゴスペル創世記 ~教会にブルースを持ち込んだ男~

 

「悪魔の音楽」と「神の音楽」。

その禁断の融合を成し遂げた、一人の男の、信仰と葛藤のドラマが始まります。

 

引き続き、この壮大な音楽創世記の旅にお付き合いいただけると嬉しいです。

ブックマークや評価で応援していただけると、第三章の執筆も頑張れます!

 

それでは、また新たな物語でお会いしましょう。

ーーーーーーーーーーーーーー

もし、この物語の「もっと深い話」に興味が湧いたら、ぜひnoteに遊びに来てください。IT、音楽、漫画、アニメ…全シリーズの創作秘話や、開発中の歴史散策アプリの話などを綴っています。


▼作者「かつを」の創作の舞台裏

https://note.com/katsuo_story

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