DAY 9 肉を求めてスキップで集合場所に行ったら着物美女に囲まれた日
「さて、至高の肉を求め、いざ──」
土曜日、十五時半。
俺はマンションを出て、集合場所の公園に向かう。
早朝マラソンのあと、和風美人の西崎さんが『夕飯はうちのお店で食べよう』と提案して下さった。
どんなお店か分からないが、無礼講パーティーで肉が食えるのは間違いないだろう。
昨日からクラスの三大美女とのダイエットに参加させられ、肉の摂取が禁止された。
禁止というのはキツイ表現か、栄養補給で少量取るのはいいが、過剰に取るのはダメってやつ。
だが問題ない。
そう、この夕食会で、一か月分の肉と油を補給すればいいだけのこと。
俺の住んでいるマンションから集合場所までは、歩いて十分。
身体が軽い……お肉たちが待っていると考えるだけで、天にも昇る気分だ。
「あー、ミャーマきたー! なんかスキップしてるー!」
「……どんだけ楽しみにしてんだ、あいつ。マジで全部十秒以内で返信しやがって」
「うわぁ、良い笑顔。美山君の期待に応えられるように、豪華にしないと」
十五時四十分、集合予定の二十分前だが、女性陣が全員集合していた。
「あれ、ご、ごめん、遅れてしまって……あれ? みんな服装が豪華……って着物?」
公園の出入口付近の、ストレッチや体操が出来るゴムチップが敷かれた場所、そこが集合場所なのだが、伊江里クロワさん、藤浪桃世さんに西崎華さん、全員が小奇麗な着物を着ている。
あれれ? 参加条件に『見栄えの良い服装備』なんてあったっけ?
俺、お肉でいくらお腹が膨れてもいいように、ぶかぶか赤ジャージで来たんだけど?
「うわわ、みんな綺麗だなぁ……。あ、ごめん、つい見惚れてしまった……」
伊江里クロワさんは紫系、藤浪桃世さんはピンク系、西崎華さんは黒系で統一された着物。
みなさん元からお綺麗だが、着飾ると、マジでモデルさんが何かの写真撮影で集まったのか、レベル。
そしてそこに現れた、浮かれスキップマシュマロボディ。
あれ、俺の立っている世界線、合ってる?
女性三人への、周囲の男性の視線がすごいぞ。
「……ちっ……そういうお店に行くんだから、当たり前だろ」
「あれれー? クロワ嬉しそうー。良かったねー、褒められて」
「あ、ドレスコードとか無いし、どんな服装でもいいの。これは私たちが勝手に着てきただけだから、気にしないでね」
そういうお店……?
ガチ着物が似合うお店……え、街の中華屋で肉祭りじゃあないの?
三人の着物美女のパーティーメンバーに、ぶかぶか赤ジャージマシュマロボディ男が参加したわけだけど……俺ってもしかして、イケメンヒーローに倒される怪人枠?
「え、ここ……? このタワーみたいな高級ホテル……?」
着物美女三人から数歩離れ、身体をなるべく小さくしながら移動開始。
俺と一緒と思われたら彼女たちに迷惑だろうし、と思ったが、逆に女性三人が俺を囲むようにフォーメーションを組んできた。
ちっ、美女に囲まれた……!
って、こんなセリフが言える状況が俺に訪れるとは……
そして目的の場所に到着したっぽいが、中華屋さんはまだ先の駅前とかじゃないのか?
集合場所横にある大型商業施設、そこの横のタワー型高級ホテル、その前で着物美女たちが止まる。
「あれれ? 言ってなかったっけー、華のお店って、ここの最上階の日本料理屋だよー」
藤浪さんが自慢気に言うが、え、ここの最上階……?
日本料理屋?
あれ? 街の中華屋で油たっぷり炒飯……お肉……
「うわわ……ここの中、初めて入った……」
高級タワー型ホテルに入ると、吹き抜けで開放感のあるロビーがお出迎え。
飾られている花とか、美術品っぽい壺とか絵画とか、絶対にお高いやつ。
なんだかガラス張りでキラキラなエレベーターに乗り込み、ホテル最上階へ。
「り、料亭西崎……え、ちょ、ここって高校生が入っていいお店……?」
エレベーターを降り、西崎さんのあとについて行くと、現れたのは格式のお高そうな日本料理屋。
どう見てもリーズナブルではなく、マジの日本料理屋さん。
「大丈夫だよ、美山君。今日は楽しんでいってね」
和風美人だった西崎さんが着物を装備したので、マジの着物美人となった西崎さんがニッコリ微笑む。
俺、街の中華屋予算の五千円しか持ってきてませんけど、生きて帰れますかね……
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影木とふ