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DAY 7 罰ゲームでお触りと夕飯は肉と油が期待できそうな日





「む、無理です……俺には百キロマラソンとか……無理ィ……」


「何が百キロマラソンだ。一キロ歩いただけだろうが」



 早朝マラソン。


 女性三人はすでにゴールしていて、マシュマロボディの俺が相当遅れてゴールイン。


 金髪ヤンキー女子、伊江里クロワさんに睨まれたが、無理、例え今俺が走った百キロが正確には一キロだろうと、こんなものを毎日早朝にするとか人間のやることじゃあない。


 だってこれが一日の始まりなんだぞ。


 こんな瀕死レベルの疲労を抱えて、爽やかな一日が始まるものか。



「ひぃ……ひぃ……少し歩いてから、止まる……」


「お、ミャーマがキチンと学習してるー。えらいぞー」


 ゴールしても、少し歩いて落ち着かせてから……公園のベストフレンド、ベンチにダイブ。


 周りを見ると、結構走っている人がいるんだな。


 よく出来るなこんなこと……って、走っている人がすっごいこっちをチラチラ見ているぞ。


 ああ、俺か、瀕死の肉がベンチで震えている光景は……まぁ面白いよな。


「……すっげぇ美人集団」


 ベンチで瀕死の俺の前を横切って行った男性ランナーが、俺の横で固まってきゃいきゃい言っている女性三人を見て言葉を漏らす。


 ああ、そっちか。


 ポニーテールがとても似合うスポーツ女子、藤浪桃世さん。


 ロングヘアーで和風美人、そしてとてもグラマラスボディをお持ちの西崎華さん。


 金髪ヤンキー女子だけど、黙っていたらとんでも美人の伊江里クロワさん。


 ……正直、昨日のお昼までは、ほぼ話したこともないただのクラスメイトだったってのが信じられないな。


 お美人さんやイケメンで構成されている、『クラスの一軍』の中心的人物の三人。


 三軍四軍レベルの、いてもいなくても問題ないモブチームの俺とは接触機会もなく、なんか向こうは華やかだなと、ただ眺めているだけの存在だった。


 それがどうして俺の家でお泊り会だの、一緒にご飯だの、早朝からマラソンだのをする状態になっているのか。


 もしかして俺、なんか騙されてる?


 この後、お友達代、とかいって、高額請求されるとか……?


 そういえばさっき、伊江里クロワさんがビリは罰ゲームとか言っていたが……まさかそれが『お友達代』の請求なのか?


 やば、早く逃げないと……でも無理ぃ……動こうにも、俺のマシュマロボディが完全に沈黙。


 エネルギーが足りない……これはゼリーなんて軟弱な飲み物では補給が追いつかない。


 早く、早く油滴る香ばしいお肉を体内に取り込まないと、俺の身体が形を保てず、崩れて溶けて地面に吸収されてしまう。



「じゃあビリだったミャーマには、お楽しみの罰ゲームタイムー!」


 ポニーテールを揺らし、藤浪さんがベンチでへばっている俺を指して楽し気に言う。


 まずい、俺の手持ちいくらあったっけ……千円とかしかない……まずいぞ、こんなお美しい美女三人とのお友達代として、千円はありえない。


「今回は一位だった私が決めていいんだよねー、クロワー?」


「ちっ、無限の体力女め。好きにしろよ」


「桃世、自分基準で決めちゃダメよ。あなたの身体能力とスタミナって、全国で通用するレベルのやつなんだからね」


 西崎さんが不安そうな顔で藤浪さんに注意勧告をしているが……俺、罰ゲームで何されるの──





「あああー、いい、いいよミャーマ! その感じで強めにぐいぐい来てー」


「え、もっとですか? じ、じゃあグイっと……!」


 公園の広場に移動。


 ここは地面にゴムチップが敷き詰められた状態になっているので、転がっても痛くない。


 なので、多くの人が体操をしたり、ストレッチをしている。


「おい、桃世ばっかやってんじゃねぇよ。こっちも押せ」


「美山君、私も。うん、そうそう、ゆっくり……ああ、伸びるー」


 俺に科された罰ゲーム。


 それは足を広げて座った女性三人の背中を押し、ストレッチに協力すること。


 なんかお美しい女性が三人、あー、とか声をあげているもんだから、周りからの注目度がすごい。


 背中とはいえ、クラスの三大美女と言われる女性三人の身体に触れるとか、これ罰ゲームじゃなくて、ご褒美だろ。


 押したらなんかエロい声出すし、ちょっと興奮してきた……!


 これが無料で体験出来るとか、俺、マシュマロボディやっててよかった!


 明日からも罰ゲーム目的でビリを目指すぞ!


「じゃあ帰って朝飯にすっか。つか桃世は甘ぇんだよ。私が一位だったら罰ゲームは腕立て腹筋五十回とかだからな」


 金髪ヤンキー女子、伊江里さんが嫌な笑みで俺を見てくる。


 ひぃ……腕立てなんて、俺は出来ても二回ですって。


 これはまずいぞ、明日からもトップは藤浪さんになってもらわないと、俺の全身の筋肉が弾け飛びそう。




「朝ごはんの野菜たっぷりサンドイッチ、完成。果物とヨーグルトもあるからね」


 俺が一人暮らしをしているマンションに帰り、和風美人の西崎さんが笑顔でサンドイッチを作ってくれた。


 ……くれたのは嬉しいのだが、薄いパンにサンドされている物が野菜野菜野菜……。

 

 あの、メインの人気キャラ、お肉さんたちの姿が見えないのですが、今日はお休みですか?


 野菜さんには一回ご退場してもらって、分厚いカツとかハンバーグを挟んだりしたら、すっごく美味しいですよ?


「おいしー! さっすが華、和風のソースがお店レベルー!」


「野菜だけで美味いな、これ。これなら肉は無くてもいけるな」


 藤浪さんと伊江里さんが絶賛しているが、お肉さんのいないサンドイッチなんて、空気を食っているのと同じですって。


 霞を食う仙人専用のやつ。


「……ん、あれ、これ美味い……本当に野菜だけなのに、お肉を食べたような満足感がある……! すごい、西崎さん、これすごいよ!」


 俺のマシュマロセンサーには無反応な食い物。


 しかし美女の手作り、食わない選択肢は無い。


 期待値ゼロで口に運ぶが、まず香りが和風ハンバーグ。あれ? と思い噛んでみると、野菜の間に入っているソースが口の中で弾け、まるでお肉の油が飛び散るような感覚になる。


 すごい美味いぞ、これ!


 野菜とソースだけなのに、モリモリ食える!


「…………」


 あれ、西崎さんの手料理を褒めたら、伊江里さんが不機嫌な顔で睨んできたぞ……え、何?



「ふふ、良かった。美山君がすっごい笑顔。これは作った甲斐があるかも。そうだ、今夜はウチのお店で食べない? 一か月苦楽を共にする仲間だし、みんなダイエットを頑張っているから、ご招待」


「え、いいのー? やった! 華のお店、すっごい美味しいんだよー!」


 西崎さんって、料理が上手いのか。


 え、お店にご招待……?


 藤浪さんが両手を上げて喜んでいるが、西崎さんって何かのお店をやっているのか。


 街の中華屋さんとか? おお、それならぜひ行きたい。


 油たっぷりチャーハンとか、ラーメンとか、味濃いめのかつ丼とか……ああああ、想像しただけでヨダレが止まらない……!


 もうお昼抜きとかでいいです!

 

 夜の中華屋フルメニューで、昨日から俺の身体に足りていないお肉と油を全て一気にズルンと吸収しますので……!



「華、いいのか?」


「うん、いいよ。だってなんだかこのメンバー楽しいし、私はもっとみんなと仲良くなりたいから。親からも、信頼出来るお友達を連れてきなさいって言われてるし。ふふ」



 肉、油、……何を頼もうか。


 よし、今から携帯端末で検索して、注文する肉ランキングを作るぞ!























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         影木とふ




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