DAY 6 朝起きたら金髪美女が俺のベッドにいた日
「……ぅ、あれ……俺なんで居間で寝て……ふぁあ」
朝の日差しが目に入り、俺起床。何時だ……朝五時か。
なぜか知らないが、俺は家の居間で寝ていたようだ。
はて、なんで自分の部屋じゃなくて、居間なんだ……?
なんか記憶がおぼろげだが……まぁいい。
今日は土曜日、朝から思う存分肉の仕込みが出来るぞ。
毛布をたたみ、ソファーに置く。
しかし何で居間で寝てたのか……なんか全身が痛いし……もしかして、ゲームやってて寝落ちでもしたのか?
でもテレビは消えてるし、ゲーム機も使った形跡は無い。
ん? このテーブルの上にある小瓶はなんだろう。
化粧品……? 俺こんな物持っていたっけ?
母さんのか? いや、家族は先月に東京に引っ越した。なんで今頃テーブルに?
うーん、とりあえず部屋で着替えるか。
「さて、肉用の服に着替え……」
居間から自部屋に移動、ドアを開け、油が飛んでも大丈夫な服に着替えようとするが、なんか俺の部屋が甘い香りに包まれている。
なんだ? この良い香りは。
あと見たことのない女性物の服が置いてあるし、カバンに化粧品……?
あれ、俺のベッドが膨らんで……って誰かいる……!
え、おい待て泥棒か?
俺はダッシュで部屋を出て廊下に避難。
「……ぅん……」
女性……?
俺のベッドで寝ている誰かが寝返りをし、かぶっていた布団が床に落ちる。
見ると、金髪の女性がとんでもない薄着で寝ている……ってあれ、どこかで見たような女性だぞ。
恐る恐る廊下から自部屋に入り、俺のベッドで寝ている人物を確認。
「あれ、伊江里さん……あ、思い出したぞ! そういえば昨日、ダイエットがどうので走ったり食事管理されたりしていたぞ! それで女性三人も俺の家に泊まって……あ、やばっ!」
顔を覗き込むと、どう見ても同じクラスの金髪ヤンキー女子、伊江里クロワさん。
彼女はぶっかぶかのTシャツを着ているので、大きなお胸様の谷間とかばっちり至近距離で見えてしまった。
俺は慌てて離れようとするが、床に落ちていた女性物の服を踏んでしまい、滑ってベッドに倒れ込んでしまった。
「うわっ、ごめん伊江里さん!」
「……ぅぅん……」
寝ている女性の上から覆いかぶさるような状況になってしまい、謝るが、伊江里さんが起きる気配は無い。
はて、俺の体重ってそこそこあるから、結構な衝撃だったと思うが……
しかし伊江里さん、綺麗だなぁ。小学校時代から知っているが、ずば抜けて可愛かったからなぁ。
中学からはヤンキー路線に行ってしまい、可愛いというよりは、いつも怖い顔をしている、トゲのありそうな美人さんになってしまった。
モデルクラスの見た目とプロポーションを持つ伊江里さんの側には自然とイケメン男子が集まり、常に美男美女の集まる『クラスの一軍』を形成。
中学時代、学内学外含め、すごい人数の男子に告白されていたけど、誰とも付き合ったりしている気配は無かったな。
友人止まりで特定の誰とも付き合わない、硬派なヤンキー、ってことなんだろうか。
……でも、寝顔は小学校のときの面影がある。
「伊江里さん、可愛いなぁ……」
「…………」
伊江里さんの大きなお胸様が目の前数センチにあるが、さすがのクラスのイケメンもこの景色は見たことがないだろう。
これは大迫力……じゃなくて、今目を覚まされたら俺犯罪者……って、うわっ!
寝ぼけているのか、伊江里さんが手を伸ばし、俺に抱きついてくる。
ちょ、この状態で起きられたら、マジで俺、人生終了する!
「ふぁー、おはよークロワー……ってあれ? 今度こそミャーマがクロワを襲ってるー!」
「朝から大きな声を出さないの、桃世。え? 美山君がクロワを? まさか、彼って結構紳士よ、ありえな……あら本当、真っ最中か事後? これはお邪魔しちゃったわね。行くわよ桃世」
「ええ? 見ていかないの? 今後の参考になるかもだよー?」
開けっ放しだったドアから女性の声が聞こえ、驚き振り返ると、そこにはうちのクラスの三大美女、藤浪桃世さんと西崎華さんが。
おお、寝起きの二人も可愛いなぁじゃなくて、ああああ……終わった……そういえばこの二人も俺の家に泊まっていたんだ……動かぬ証拠を目撃され、俺終了──
「……ちっ……つか重っ! いい加減どけ美山進太! 朝のマラソン行くから、早く準備をしろ!」
顔面蒼白で冷や汗を流していたら、真下から舌打ちが聞こえ、伊江里さんが俺をどかそうとしてくる。
あれ、起きていたのか?
「うわ、ごめん、ごめん伊江里さん! 三人がいるのを忘れてて、普通に自分の部屋に入ってしまったんだ!」
その後、全員が着替え、マンションを出て近くの公園へ。
道中、誰も俺のことを攻めてこないが……許されたのか? あれ。
「はーい、今朝の栄養補給はゼリー飲料ー!」
「またゼリー……あれ、美味しい」
公園横にあるコンビニで藤浪さんが何かを買ってきてくれ、全員に手渡す。
見ると、ビタミンたっぷり、と書かれたゼリー飲料。
昨日も寒天ゼリーとかだったが、もしかして藤浪さんってゼリー好きなのか?
肉のような噛み応えも無ければ、飛び散る油もない……なんでこうゼリーってリアクションが薄いのか。
まぁ味は美味いけど。
「うううう……キツイ……俺って走るの無理な生き物……」
「うっせぇな、グチャグチャ言うな。この私に襲いかかったことをバラされたくなかったら、走れ」
俺の横を並走している金髪ヤンキー女子、伊江里さんがギロリと睨んでくる。
ひぃ……! 滑っただけであって、襲ったわけじゃあないですって……。
「は、走ります! 俺って走れるマシュマロボディですから!」
ポニーテールを揺らし、数メートル先を元気に走っていた藤浪さんを追い抜き、俺は必死に走る。
「あれあれー、ミャーマが元気だー! いいよー、この私に勝負を挑むとか、身の程を知れー。あははははは!」
だがすぐに爆笑しながら走る藤浪さんに抜かれ、そのまま彼女が地平線の彼方へ──というぐらい、遠くまで走っていく。
朝から元気爆発で体力すご……なんなの……化け物なのか。
「ふふ、クロワがすっごいご機嫌。朝、美山君になんて言われたの?」
「……うざ。今日ビリなやつ、罰ゲームだからな」
「え、ちょ待ってクロワ! ごめんってー!」
ひぃ……ひぃ……伊江里さんと西崎さんにも抜かれてしまった。
なんかチラと聞こえたが、ビリなやつが罰ゲームってかい……つか無理、今から逆転とか、肉パワー不足の俺には不可能。
せ、せめて、楽な罰ゲームでありますように──
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影木とふ