DAY 56 花火と藤浪桃世さんの物語を聞いた日
「おらぁ、火花大車輪ー!」
エロUFO召喚の儀式も済んだので、夜の砂浜で手持ち花火大会。
2号さん、藤浪桃世さんが花火を両手に持ちグルグルと回転させはじめる。
このアクションカメラで花火が綺麗に撮れるのか分からないが、一応撮っておくか。
つか、さっき撮った流れ星を指さす天使、の映像もどれぐらい撮れているのか不安。
編集で補正出来ればいいのだが。
「やはり花火と言えば線香花火ですよね。私、子供のころからこれが大好きなんです」
3号さん、西崎華さんが線香花火を取り出し火をつけると、パチパチと綺麗な火花が散り始める。
「私はこれだな、ドラゴン。ボヒューって火を吹き出す感じがかっけぇんだよ」
1号さん、伊江里クロワさんは、地面に置いて点火すると真上に向かって火花がでるタイプの「ドラゴン」が好きなのか。
好きな花火にも個性が出るものなんだな。
「おー、撮れてるか幹部ー! 必殺、火花残像の術ー!」
2号さん、藤浪桃世さんは、手持ち花火を持って自分が動くのが好きみたいだが、あまり人外の速度で動かれると撮れないっす……。
「うん、結構撮れてるな。これならおまけ映像とかで使えそうだ」
花火の映像を見てみるが、まぁまぁ綺麗に撮れている。
……さすがに藤浪桃世さんの、残像が見える速度のダッシュは撮れていなかったが。
「おー、ミャーマー、花火撮れてたー?」
花火も終わり、片付け開始。
バケツに水を張り、遊び終わった花火を投下。
あとは施設の人が片付けてくれるらしい。すいません、あとはお願いします。
砂浜にゴミが落ちていないか、4人で広がって確認作業開始。
「あ、うん、さすがに桃世の早い動きは追えてなかったけどね」
ゴミ拾いの合間に映像の確認をしていたら、藤浪桃世さんが近寄ってきた。
「そっかー。まぁ人類のカメラの性能が私に追いつくことは無いだろうけどね、あははは!」
藤浪さんが爆笑しているが、あなたは地球外生命体か何か?
まぁ、マジでこの人の運動能力は桁違いだからな……。
「桃世って、子供のころから足が早かったの?」
「おう、任せろ、ももよーん様は子供のころから地球レベルでは捉えられない速度で走っていたのさー! 中学で陸上部に入ったんだけどー、1年生から3年生までずっと全国大会に出ていたのさー。もちろん全部優勝な、あはははは!」
へぇ、藤浪さんって子供のころから活発だったのか。
中学では陸上部……あれ、でも高校では何も部活に入っていないよね。
中学3年間全国大会で優勝って、マジですごいのでは?
才能があって、努力もしただろうに、どうして高校では部活をやっていないんだろう。
「そっか、桃世はすごいんだな。高校では部活やっていないみたいだけど、もう極めちゃった感じかい?」
「……え、う、うん……」
聞いてみたが、藤浪桃世さんが難しそうな顔で下を向いてしまった。
やっば、余計なことを聞いてしまったか。
「ご、ごめん桃世。無神経な質問をしてしまった……ごめんね」
「…………頭撫でて」
続けたかったのに、ケガや病気か何かで辞めた可能性もある。
もし未練があったのなら、今でも悔しい想いをしているのかもしれない。
これは気軽に聞いていい話じゃなかったな、と謝ると、藤浪桃世さんが頭を撫でろ、と言ってきた。
「ごめんね、桃世」
「…………ミャーマが私の側にいてくれたら、陸上続けられただろうなー。まー、もう未練も無いし、キッパリ辞めたからいいけどー。つか、陸上続けてたらこの高校に入ってないし、そしたらミャーマに出会えなかった。あっぶな、陸上辞めてマジ良かったー、あははは」
優しく頭を撫でると、藤浪さんがクイっと顔をあげて笑顔になる。
良かった……機嫌を直してくれたようだぞ。
陸上を辞めた、か。
やはり何か理由があるっぽいな。
中学の全国大会で3年連続優勝レベルって、陸上競技が強い高校の推薦で引く手あまただったろうに……なぜ普通の、特にスポーツ系が強くもないこの高校に入ったんだろう。
「私さー、100、400、800、1500、3000、走り幅跳び、砲丸投げ、槍投げの中学女子の日本記録保持者でさー、結構な有名人だったのさー」
え……100から3000、幅跳びに砲丸投げに槍投げのタイトルホルダー……? それ全部一人で持ってるとか、マジでやべぇって!
そ、それは界隈では超の付く有名人でしょう。
「子供のころから走るのとか身体動かすのが好きで、親が心配するレベルで朝から晩まで毎日近所を走り回ってたのさー。小学校の運動会とか、もう全ての競技で私の圧勝。親も褒めてくれて、嬉しかったなぁ。好きなことで褒められるのって最高って思って、中学では陸上部に入ったのさー」
親が心配するレベルで、朝から晩まで近所を走っていた……すごい子供だったんだな、藤浪桃世さん……。
「中学でも毎日走って、地区大会出て、全国大会行って、出られる競技全てに出て、3年間優勝し続けた。それは、そっちはすっごい嬉しかったし、楽しかった。このまま走ることだけを考えていけたらなー、と思っていたんだけど……有名になった代償なのか、面倒な男がわらわら寄ってきてさー」
3年連続って、マジでとんでもない才能の持ち主ですよ、藤浪桃世さん。
え、男……? か、彼氏……とか?
「オリンピック選手を何人も出している陸上で有名な高校から声がかかって、顧問の先生と一緒に食事会に行くことになってさー、これで上手くいけばすごいところに行けるから頑張ろうって先生は張り切ってたんだけど、行ってみたらエロオヤジのセクハラのオンパレード。君かわいいね、とか言って足触ってきたり、お尻に手を伸ばしてきたり。先生がかばってくれたんだけど、そしたら後日、先生が突然遠方の中学に転勤になってさ……」
おおう……いまだにそういうハラスメントって残っているんだな……。
つか未成年に手を出してくるって、その高校行かなくて正解だよ。
「信頼してた先生はいなくなるわ、全国大会に行けば他の中学の男がニヤニヤ寄ってきて遊びに行こうだの連絡先教えてだの、彼氏いる? どういう男がタイプ? 今までの恋愛経験は? 処女? とか……あーーーー、もうっ、今思い返してもイライラするーー!」
まぁ……藤浪桃世さんって正直、マジでお美しいんですよ。
有名になった代償、なのかもしれないが、ストレスフルの厳しい状況だったのか。
「私はただ走りたいの! 褒めてほしかったの……だから頑張ったの! 恋愛とかどうでもいいしお前等に興味無いし連絡先とか教えるわけないだろー! 恋だの愛だの触らせろだの……つまらーん! お前等は話が合わないし会話がつまらーん! ああ私は処女だよ、これでいいか? じゃあもう寄って来るなー! 私は走りたいんだー!」
守ってくれていた先生もいなくなり、その隙に藤浪桃世さんの身体目当てみたいな男が寄ってきてしまった、と……。
「陸上に強い全国の高校から声がかかったんだけどさ、ただ走りたいだけなのに、まーた余計な男が寄ってくるんだろうなーって思って、面倒……もう面倒! 陸上は中学で辞める! 走るのはもう趣味でいい! 推薦全部蹴って、近くの普通の高校に入ってやるー! ってなったのさー。……親とか周りに色々言われたけどさ、いいじゃん! 3年間圧倒的な記録残してその後音信不通……ほら、これってカッコいいじゃん!」
「あー、確かにそれ、カッコいいですね。今は普通の高校生だけど、実は過去に記録保持者で有名人だった。それを隠していたんだけど、友のピンチに能力を使い助ける……おお、いいっすね、そのキャラ。俺そういうキャラ設定好きです」
ちょっと闇を抱えていて、でも友の危機には助けに来てくれる……ん? あれ、何の話してたっけ?
「そう! でも友人には自分が助けたって名乗らないんだよね。……あれれ? 何の話してたっけ?」
俺と藤浪桃世さんが二人で首をかしげ始める。
「えーとつまり、陸上は好き! でも毎日男が寄ってきて恋だの愛だのウダウダ言ってくるのは面倒! 走るのは趣味でも出来る! だから私は陸上辞めてこの高校に入ったの、そしたらクロワと華と……ミャーマに出会えた! マジ運命! ミャーマは話面白いし毎日一緒に走れるし、動画配信っていうさらに面白いことを教えてくれた! 今の私、中学の陸上をやっているときより笑顔! 毎日が最高に楽しい! いつも側にいてくれて身体を張って私を守ってくれるし、こうやってちゃんと褒めてくれるし……私はミャーマが大好き!」
藤浪桃世さんが急にズバーンと両手を広げ、ガシーンと俺に抱きついてくる。
うンごぅ……! 締め付けが強い……!
しかし、いつも笑顔で楽しそうにしている藤浪桃世さんに、そんな過去があったとは知らなかった。
好きだった陸上を辞めたから、俺たちは高校で出会えた、か……。
俺がこの高校を選んだのは、家から近い、通学の時間を減らして肉に費やしたい、ただそれだけだからな……
藤浪桃世さんはここに至るまで、多くの選択肢から選び、悩み、そしてその道が伊江里クロワさん、西崎華さん、そして俺との出会いの道に繋がった。
……人生ってのは、道の選択と誰とどう出会うのか、なんだなぁ。
「私を選べミャーマ! 私は体力あるから、ミャーマの強大な性欲を全部受け止められるぞ! つか私のほうが強いかも……うん、やっぱり私を受け止められるのはミャーマしかいないー!」
「ホごぁぁぁああ……! 桃世、ちょ、強い……」
「もちろんだー! 私の愛は強いぞー! ホラホラ、私の想いを全身に刻むがいいー! おらぁ大サービス、スタンプ全押しだぁ! あははははは!」
天使ナースコスプレの藤浪桃世さんにとんでもない締め付けで抱きつかれ、俺、昇天……って危な……! 意識飛びかけたぞ!
マジで筋肉つけといて良かった……ダイエット計画で付けた肉のガードが無ければ、藤浪桃世さんの締め付けで異世界へ飛ぶところだった……
そしてコンマ何秒か意識を失っていたら、藤浪桃世さんの『夏休みスタンプ台帳』が30個まで押されていた。
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影木とふ




