DAY 5 美女たちとお泊り会と肉に呼びかけられた日
楽しい夕食も終え、片付けも完了。
つかみんな、手伝ってくれなくてもいいのに。
伊江里さんに一時没収されたが、結局藤浪さんも寒天ゼリーを美味しそうに食べていた。
寒天ゼリーって、結構美味いんだな。初めて知ったかも。
「突然走らされたりしてビックリしたけど、今日はとても楽しかった、ありがとう。俺なんかじゃ頼りないかもしれませんが、家まで送りますので、忘れ物がないように……」
時間は二十時、さすがにみなさん、帰ったほうがいいのでは。
俺は立ち上がり女性陣を玄関方向へいざなおうとするが、みなさん無反応で化粧品とかを片付ける気配無し。
服装もハーフパンツだったり、ぶかぶかの俺のTシャツだったり。
あの、肌色多め空間は嬉しいのですが、そろそろ制服に着替えて、お帰りに……
「私こいつの部屋でいいや」
「私は寝室ー!」
「じゃあ、向かいの空き部屋で」
女性陣がのそっと立ち上がり、俺の家の各部屋に向かって歩いていく。
え、ちょ……
「美山進太、お前はここの居間な。確か親戚が来たとき用の布団が何組かあったろ。あと覗くなよ……ってお前にそんな度胸はねぇか」
伊江里さんが寝室の押し入れから布団を出し、各部屋に運ぶ。
「お泊り会ー! 男子の家とかどうかと思ったけど、ミャーマって無害系だから私平気ー!」
お泊り会……?
藤浪さん、それはどういう……
「ごめんなさい美山君。でもこのダイエットは一か月、規則的な生活、バランスの取れた食事、そこそこの運動を自分に甘えることなく、しっかりやるっていうやつなの」
西崎さんが申し訳なさそうに謝ってきたが、それとお泊り会に何の関係が?
「一人だと絶対にちょっとぐらい……と甘えてしまうかもしれない。でも三人でそれぞれを監視しながらやれば、出来るかもしれない。それで今日から三人の誰かの家に集まって、お泊りをしながら頑張ってみようと思っていたの。クロワが美山君を誘ってビックリしたけど、確かに女子だけじゃなくて、男子の視線もあれば、甘えることなく出来そう。あと、美山君の家、環境も良いしすごく心地が良いの。お願い、サービスはするから、一緒にダイエット、やってみない?」
やってみない、というか、もうすでに始まっているけど……うーん、まぁ、確かにダイエットって、一人だと大変だよな。
それにクラスメイトが困っているのに、それを見ないふりとか俺には無理だ。
肉たちとはしばらくお別れかもしれないが、彼女たちの願いを叶えるまで、頑張ってみてもいいかもしれない。
それにさっき、伊江里さんの笑顔を小学校以来に見たが……やはり彼女には怒ったヤンキー顔より、ああいう笑顔が似合う。
目標を達成したら、伊江里さんの笑顔の時間がもっと増えるかもしれない。
よし、俺も男だ、やってやるさ。
「分かった、俺も協力するよ。一緒にダイエット、頑張ろう!」
──深夜一時。
俺は居間に布団を敷き、スヤスヤと寝ていたのだが……
『……力が欲しくないか……』
ふと何かに呼ばれ目が覚める。
『……力が欲しくないか……さぁ、手を伸ばせ……掴み取るのだ……』
なんだ……誰かが俺を呼んでいる……
力……? 手を伸ばせば、それは手に入るのか?
『……さぁ、掴むのだ……肉を……』
そうか……冷蔵庫の肉……! あれを掴めば、力が手に入るんだね?
分かったよ俺のマシュマロボディ!
「みんなは寝ている。居間には俺一人……つまり今から感謝の肉祭りの開催……!」
俺はガバっと起き上がり、ダッシュで冷蔵庫に向かい、その禁断の扉をオープン──
「おい、さっき格好良く、一緒にダイエット頑張ろうとかほざいていたよな」
誰もいない空間からニュッと白い手が伸びてきて、がっつりと俺の右腕をつかまれる。
「ひやっ……お、お化けえええええええええええ…………!」
暗闇から伸びてきた女性の美しい手、うわああああ、これってホラー系の例のあれか?
確かつかまれる系って、マジヤバだって聞いた記憶が……!
俺は悲鳴を上げ、恐怖でガクンと全身の力が抜け、その場に倒れ込む。
ああ……肉、最後に肉が食いたかった……
「ちょ、何今の悲鳴ー! え、クロワが襲われたとか? やるじゃんミャーマ!」
「……まさか、クロワが襲った? ずっと部屋で待ってたみたいだし」
「ば、ばか言うな! 水飲もうとキッチンに来ただけだっての! そしたらこいつが肉を……」
女性たちが何か騒いでいるが、俺の意識はここで途切れた──
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影木とふ