DAY 46 西崎華さんの家にお呼ばれでコスプレキャラなりきりに目覚めた日
「ふふ、真っ最中に寝ちゃうなんて、桃世も子供ねぇ」
「ぐぐぅぅぅ……! ももよーん一生の不覚……! まさか寝ている間に丁寧にベッドに寝かせられて妹にキッチリ伝言してから帰るとか、ミャーマが紳士過ぎたー! 良い女が酔いつぶれてたら普通襲うだロゥ!」
翌朝、定例の早朝マラソン。
いつもの四人が集まり、走ったあとはゴムチップ舗装された広場でのストレッチ。
なんか最近、この時間に走るランナーが増えたような。
あと、この場所でいつもストレッチをしているのだが、ギャラリーが増えたような……って目的は伊江里クロワさんに西崎華さん、藤浪桃世さんがいるから、だろうなぁ。
酔いつぶれ……?
いやいや、俺たち未成年だし、昨日はゲームで盛り上がり過ぎて目が疲れていただけでしょう。
「あ、そうね、眠らせるのも……いいかもしれませんね……ふふふふ」
「……華てめぇ、人の道を踏み外した獣かよ。美山進太、今日は木刀を持っていけ」
西崎華さんが嫌な笑みを浮かべると、伊江里クロワさんが俺に木刀装備を勧めてきた。
木刀って……観光地で売っているやつとかですか?
「ついに今日は私の家ですね。ふふ、美山君をお迎えする準備はバッチリです。色々ネット通販で揃えましたから……ふふふふふ」
最後は西崎華さんの家か。
な、なんか背中がゾワっとするんだけど、なんでだろう……マジで護身アイテム持っていくか……?
夕方、マンションを出て以前行った高級タワー型ホテルの近くへ。
なんだかデッカイ門がある巨大な家が見えてきて、警備員さんとかいる建物があるが……あれかな……。
「ああ、はい、お聞きしています。少々お待ち下さい」
警備員さんに「お呼ばれした美山進太です」と伝えると、すぐに携帯端末で連絡をとり、門を開けてくれた。
「美山くーん! お待ちしていましたー! ふふ、我慢できなくてもう着てきちゃいましたー」
門から中に入ると、広いお庭……マジかよ。
綺麗に整えられた樹木などを横目に見ながら歩いていると、前方から派手な格好の女性が走ってくる。
なんだ? 杖に大きな帽子にローブ……あれは……魔法使い……?
え、俺、異世界に繋がる変なゲートでもくぐった?
「……あ、西崎華さん……てっきり異世界の住人が来たのかと……」
「ふふ、見てくださいこの杖! ボタンを押すと光るんですよ、ほらほら!」
よく見ると、異世界物に出てくる魔法使いのような格好をした西崎華さんだった。
ニッコニコ笑顔で走ってきて、持っていた精巧な作りの杖を俺に自慢気に見せてくる。
ほえー、すごいな、マジでゲームやアニメとかで見る、『魔法使いの杖』だ。
杖の先っぽの透明な部分がキラキラと光っているが、多分魔法発動のエフェクト表現なんだろう。
これ……多分相当お高いやつだぞ。
「す、すごいですね……この服もコスプレですか?」
「はい! あれからいっぱい通販で買っちゃいました! 美山君のもありますので、早くお部屋に来てください!」
太ももや胸元がガッツリ見える結構際どい衣装なので、あまり小刻みに動かないで下さい……西崎華さんはお胸様がかなりの大きさなので、動くたびにブルブルと、すごいんですよ……。
……俺のもある? はて?
魔法使い西崎華さんに手を引っ張られ、巨大な一軒家に入る。
つかこれ、もうビルだろ。
「きゃああ素敵……! エンヴィー様です、これぞまさに……ああ、美山君はスタイル良くなりましたから、こういうスマートな格好が最高にお似合いです!」
大きな部屋に通され、用意してあった『青い鎧の騎士』、みたいな格好をさせられる。
不思議とサイズぴったり……。計ったのか?
西崎華さんが俺を見て大興奮で携帯端末で写真を撮りまくりだが、確かに鏡越しで見る我が姿は……マジで異世界物で出てきそうな騎士って感じ。
銀色で長い髪のキャラらしく、カツラも用意してあった。
うーん、俺、長髪似合うんだな。
「はぁ……二人こうして並ぶと、白くて綺麗なお城が目に浮かんできます……」
西崎華さんが魔法使いの格好で俺に寄りかかってきて、恍惚の顔で鏡を見ている。
白いお城……? え、前世の記憶とかです?
「私とエンヴィー様が出会ったお城の東門、最初は手配中の盗賊に間違えられて拘束されるという最悪の出会いでしたが、間違いだと分かるとすぐに頭を下げてきて、豪華なお食事に誘って下さいました。あのとき食べた甘いケーキ……そして芳醇なワインの味……忘れられません!」
「そ、そう……よ、良かった……」
俺と西崎華さんの出会いは、高校の男子トイレの横の階段だったような。
あと俺たち未成年なので、ワインとか飲めないっすよ。
ええと、そういえば西崎華さんって、アニメとか好きだったんだっけ。
これはそういう役割を演じて楽しむ、ロールプレイってやつか。
「ふ、二人で楽しい時間を過ごせたよ。またお誘いしてもいいかい……ええと」
「マリアベルです、マリアベル!」
西崎華さんのキャラの名前を知らないな、と困っていたら、小声で教えてもらえた。
「マ、マリアベル……早速だけど、今夜の夕食をご一緒出来ると、僕は嬉しいな」
「……! は、はいもちろん! 食後に私もいただいちゃって下さい!」
俺の騎士キャラ、全然知らないんだけど、なんとなく演じてみたら西崎華さんが目を見開いて大興奮。
真っ赤な顔になり、とんでもない締め付けで俺に抱きついてきた。
ぐふぅ……締め付け強い……あ、いやあの、今日は西崎華さんの家で夕食をいただけるとお誘いを受けたので、それを言ったつもりなのだが……
こ、高校にいるときの西崎華さんと、キャラが違いすぎる……。
その後、西崎華さんのご両親と一緒に、豪華な日本料理のコースをいただいた。
──この格好のままで。
「ああ……最高でした……まさかエンヴィー様とリアルで夕飯をご一緒出来るとは……生きてて良かった……」
「そ、そう……」
俺ってご両親にどう思われたんだろう……ニコヤカだったけど、あとで出禁にならないかな……。
西崎華さんの部屋に案内してもらうが、まぁ広い。
ウォークインクローゼットとかが、もはや部屋。
そして部屋の全ての場所にコスプレ衣装や小道具、漫画、フィギュアなどが多量に並べて飾られている。
そういえば昨日、藤浪桃世さんが、「華には勝てん」みたいなことを言っていたが、確かにこれはすごい。財力と知識が成せる、本物のコレクター。
「それではエンヴィー様、誓いの契りを……」
「え? ちぎ……?」
西崎華さんがグイっと顔を前に出してきて、待ち、の体勢。
え、いやあの……キャラのやつ、まだ続いているんすか。
西崎華さんのキャラのなりきりが具合いがすごいんですけど……どうしようか。
でもまぁ『そのキャラ』だからするってのも何か違うような。
あまりにキャラへの愛が強すぎて、そう演じてはいるが、西崎華さんご本人はそう思っていないかもしれない。
ロールプレイ中に申し訳ないが、冷静になってもらうか……
「ダメだよマリアベル。ノリと勢いで誤魔化そうとする、君の悪いクセだ。でも待たせすぎるのも良くないよね、今度僕のほうからきちんとシチュエーションを作るから、その時僕の想いを受けてくれるか、君が判断してほしい」
「ふぁ……! こ、これは確定告白待ち……! そうなんですね美山君! わ、分かりました、キチンと答えをご用意しておきますので、いつでもお待ちしております! 今でもいいんですよ……!」
俺が騎士キャラっぽく言い、西崎華さんの頭を撫でると、バチーンと目を見開き、キャラそっちのけで『西崎華さん』の声が早口で捲し立てられた。
あれ……?
マリアベルとしての答えじゃないの……?
あれ……?
俺の言ったフワッフワキザ台詞、どこのどなたが誰に言った言葉になってんの……?
夜二十二時、西崎華さんの家からの帰り道──
はて、さっきの俺は誰で、今の俺は誰なんだろう……なんというか、コスプレって奥が深い。
今思ったが、コスプレしてキャラになりきるって、結構楽しい……。
今度コスプレイベント、近くでやっていないか調べてみようかな。
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影木とふ




