DAY 45 藤浪桃世さんの家にお呼ばれで全裸写真だった日
「プークス、クロワ、しくったのかー。じゃあ次、私ー!」
翌朝五時、いつもの公園を走る。
伊江里クロワさん、西崎華さん、藤浪桃世さんの三人も走り終え、一休み。
もうダイエット計画は一区切りしているのだが、普通にみんなが集まるのはすごいな。
藤浪桃世さんが俺に寄っかかり、隣でストレッチをしている伊江里クロワさんをニヤニヤと見ている。
「しくってねぇ。面と向かって予約された。多分お前らも同じオチになる」
「予約ってキープ? ぷぷー、先送りされただけじゃん。見とけよ見とけよー、ズパーンと一発で決めてやっからよー! あはははは!」
伊江里クロワさんと藤浪桃世さんが楽しそうに話しているが、なんの話だろうか。
「美山君、真面目で紳士ですしねぇ。でもそういう人ほど、一度タガが外れてしまえば、それはもうビックリするぐらいの積極性で求めてくると思いますよ? それに美山君、体力すっっごいですし……ふふ、明日が楽しみです……」
西崎華さんが不気味な笑顔で俺を見てくる……え、何?
「っつーわけでー、ミャーマは今日私の家だからー。力では勝てないけどー、瞬発力と体力面では私のが上ー。つまりー、上に乗っちゃえば私が勝つでしょー、あはははは!」
「え、桃世の家……?」
いつもの公園での早朝マラソンを終え帰ろうと思ったら、藤浪桃世さんが俺の肩をバンバン叩いてきた。
「そーそー、普段私たちの面倒を見てくれているミャーマを、我の家にご招待ー! 心して来るのだぞ弟子よ……敷地に入った瞬間から戦いは始まっているのだからな、フハハハハハ!」
えっと……? どういうこと?
「つまり、いつもお前の家でご馳走になってっから、たまにはこっちからご馳走するってやつだよ。昨日私の家に来たろ、今日は桃世のとこだ」
金髪ヤンキー女子、伊江里クロワさんが説明をしてくれた。
ああ、そういうこと。
昨日伊江里クロワさんの家にご招待されたのって、そういう意味だったんだ。
マジで昨日、説明が無かったから謎だったんだけど、やっと理由が分かった。
なんか申し訳ないな……俺にとっては、こんなお美しい女性陣とほぼ毎日一緒に俺の家でご飯を食べれているだけで、とんでもない人生のご褒美状態なんですが。
「ここかな……」
夕方、指定された一軒家の前に来てみた。
小奇麗な二階建ての家で、お庭には子供用プールとかが出され、小学生ぐらいの男の子と女の子が元気に遊んでいる。
「桃ねぇー! 来たよー!」
「弟子~? 桃ねぇの弟子~? すごいね~、桃ねぇって一直線バカだから~、付いてこれる人も~、認められた男の人もいなんだ~」
弟くんが海パン一丁で家に入り、妹さんがとことこ俺に寄ってきて、お腹とかをペタペタ触ってくる。
「こ、こんばんは、美山進太です。藤浪桃世さんに呼ばれて来ました。妹さんかな? 藤浪さんに似ていて可愛いなぁ」
「こんばんは~、うわ~、桃ねぇの彼氏にナンパされた~。守備範囲広々系~?」
小さい藤浪桃世さんみたいだな、と頭を撫でていたら、小学生女子とは思えない発言が帰って来た。
「フハハ……来たか弟子よ。挨拶代わりに我の妹を手籠めにするとはアッパレ……ヌシの周りから落としていく外堀埋め埋め作戦、しかと見届けたぞー!」
まるで瞬間移動でもしてきたかのように藤浪桃世さんが現れ、妹さんの後ろで闘気を放ち仁王立ち。
「外堀……手籠め……?」
な、なんだ……この家で俺の日本語が通じるのか不安になってきたぞ……。
「まぁ、いつもごめんなさいねー、うちの桃世がお世話になっちゃって。この子、頭のネジが数本まとめて飛んじゃってるから、会話が大変なのよー」
「フハハ、母上よ、我の頭にネジなど無い。あるのは運動欲求だけだー! あははは!」
藤浪桃世さんのお母さんが、巨大なプレートにお好み焼きを作ってくれ、それをみんなで食べることに。
お父様は帰りが遅いとか。
「お招きありがとうございます。いえ、俺がお世話になりっぱなしで、藤浪桃世さんには感謝しかないですよ」
「そう、こやつは我の弟子だからな、師が弟子の面倒を見るのは当たり前……。期待しているぞミャーマよ、いつか我を超える日をな、フハハハハ」
……?
う、うん、まぁ藤浪桃世さんって、感性が独特だからな……。
というか、家でもこんな感じなんだ……。
「…………チラ」
藤浪桃世さんの横にもう一人妹さんが座っていて、中学生の子らしいけど、なんかさっきから恥ずかしそうにチラチラと俺を見てくるな。
「フハハ、桜花よ、年上の男に憧れるのは構わんが、おヌシの体力ではミャーマは押さえられん。なにせミャーマはこの私が認めた男なのだからな、フハハハ!」
藤浪桃世さんが中学生の妹さんの肩をバンバン叩いているが、ちょ、妹さんの身体がブレてますって!
「さぁ入るがよい……我の聖地へ!」
「お、お邪魔します」
夕食後、二階にある藤浪桃世さんのお部屋へ招かれた。
「おお、漫画にゲームがいっぱいある! あ、これ俺持ってないゲームだ、いいなぁ」
さて、ちょっと、いやかなり独特の人生観を持つ藤浪桃世さんのお部屋は……と覚悟を決めて入ると、棚にいっぱいの漫画にゲームが並んでいる。
しかも俺も持っている漫画がいっぱい。
女性向けと男性向け、半々ぐらいって感じか。
そういや藤浪桃世さんって、言うセリフがどこか少年漫画チックだったりするけど、そういうのが好きな女性なのか。
「フハハ、上には上がいてな、コレクションで華に勝てる奴はいないがな。よし、ゲームするか!」
ほう、西崎華さんも漫画とかいっぱい持っているんだ。
そういえば子供のころからアニメが好きで、とか言っていたもんな。
天使たちの溜まり場チャンネルの制服になっている、『ナース天使衣装』も西崎華さんが好きなアニメの物らしいし。
「じ、じゃあ夜も遅いし、俺はそろそろ帰ろうかな……」
その後、藤浪桃世さんのご兄弟全員集合でパーティーゲームやレースゲームをやり大盛り上がり。
中学生の妹さんがゲーム上手くてビビった。
気付けば小学生の弟と妹さんが俺の膝で寝ていて、時計を見ると二十二時。
すっげぇ楽しかったけどこれ以上はご迷惑だし、帰るか。
「ぅおおおおお……しまった……楽し過ぎて時間を忘れてゲーム三昧してしまった……! さ、未成年たちは寝ろ。我はこれからミャーマと大人なタイムを過ごすのでな……フハハ」
藤浪桃世さんがゲームのコントローラー片手に頭を抱え、中学生の妹さんに小学生の二人を押し付ける。
「え、大人……? 桃姉さんも未成年じゃ……」
藤浪桃世さんのご兄弟がいなくなり、部屋で二人きり。
「あの、さすがにご迷惑じゃ……」
「ほぅ、いいのかミャーマ、今帰れば我の全裸写真が見れないぞ……? さぁどうする……フハハハ!」
ふ、藤浪桃世さんの全裸写真、だ、と……?
そ、それは見たいですけど……
「さあ見るがいい! 我の全てを……!」
「お、おおおおおおおお!」
藤浪桃世さんが大げさなポーズを決めながら、本棚から一冊のアルバムを取り出してくる。
勢いよく開かれたアルバムには、藤浪桃世さんの全裸写真が……!
「あ、かわいいですね、幼稚園ぐらいとかですか?」
「まさしく! 今庭にある二代前の簡易プールに寝そべる我、かわいかろう!」
家の庭に置かれたプールに、幼稚園時代と思われる藤浪桃世さんが仰向けで寝そべり、無表情で空を見ている写真。
た、確かに全裸だが……幼少すぎる……。
そして可愛いけど……生気が無い……?
「このころは世界に絶望していてな……なぜこれほど世の中に困っている人がいるのに、テレビで見たヒーローが現れないのか、と嘆いている写真だ」
「へ、へぇ……」
随分達観した子供だったんだな……
「だが我は気付いた、そう、ヒーローがいないのなら、我がなればいいのだ、とな!」
「な、なるほど……」
藤浪桃世さんの言動が少年漫画チックだったりするのは、ヒーローになろうとした子供時代があったから、なのか。
「そこから我の修行の旅が始まった。なにせ前例の無いヒーローへの道だからな、体力、精神力、そして勇気! 全てを手に入れねばヒーローにはなれん……我は……ふぁ、出来る限りのトレーニングを幼少期から行い……ふぁあん……」
「え、あれ、桃世?」
熱く語りだしたかと思ったら、すっごい眠そうな顔に変わっていき、ふらーっと俺に寄りかかってきた。
「ふぁぁ……ミャーマってあったかーい……胸板すごっ……スゥ……」
「…………も、桃世? あれれ、寝ちゃった……」
藤浪桃世さんがガッツリ俺に抱きついてきて、そのまま安眠し始めてしまった。
え、ちょ、どうするの、これ。
「…………」
完全に寝てしまったぞ。
藤浪桃世さんのそこそこ大きいお胸様が、がっつり腕に当たっているが……これ、ちょっとぐらい触っても大丈夫だったり……
い、いやいや、寝ているあいだに悪戯とか、そういうのはよくない。
許可も取らず触るとか、欲の権化野郎だ。
「……どうしたものか……」
とりあえずベッドに横になってもらい、ちょっとだけ、チラとお胸様の膨らみを2秒ほど凝視させてもらってから廊下へ出る。
寝てしまったのだから、あとはご家族にお任せして帰ろうとしたら、廊下に中学生の妹さんが座っていて、バッチリ目が合った。
「あ……! ヒッ、ご、ごめんなさい……! 決して大人の時間を覗いていたわけでは……!」
真っ赤な顔になった妹さんがワタワタと手を振り謝ってくる。
大人の時間……? はて?
「あの、藤浪桃世さんが寝てしまって、夜も遅いですし、俺も帰ろうかと。あと、お願いできますかね……」
「え? あ、ああ……桃姉さん寝ちゃったんですか……あんなにやる気満々だったのに……あ、いえ、分かりました、あとは私にお任せください。今日は楽しい時間をありがとうございました」
寝てしまった藤浪桃世さんをお任せして帰りますと伝えると、妹さんがちょっと残念そうにしてから、笑顔で俺を見てきた。
「姉さん、中学の時、元気ではあったんですが……ずっとつまらなそうにしていたんです。でも高校に入ったら、急に笑顔になって……どうしたのかな、と思っていたのですが……理解しました。あなたという人と出会えたから、でしょうね」
妹さんが、部屋で寝ている藤浪桃世さんを見ながら小さい声で言う。
「毎日、ミャーマが、弟子が、って言って、すごいんですよ? ふふ、楽しそうな姉を見るのは、私も嬉しいです。急に今日連れてくる! って言って、あの姉が気に入る男性ですから、一体どんな奇人さんなのかと思いましたら……とても可愛らしいお顔の優しい方でビックリしました」
ニッコリと微笑まれたが、あ、その、普通ですいません……
「あの姉と波長の合う男性は少ないでしょうし……出来ましたらこれからも姉と仲良くしてくれたら嬉しいです。すいません長々と……それでは」
帰り道、兄弟が多いって……ちょっと羨ましいな、と思いながら、今日携帯端末で撮らせてもらった御兄弟との集合写真を見る。
彼女の過去に何があったのかは知らないが、高校で出会って以降の藤浪桃世さんは、ずっと楽しそうな笑顔。
もしかして、チームで始めた『天使たちの溜まり場チャンネル』がとても楽しいのだろうか。
そうだとしたら、始めて良かったなぁ、動画配信。
藤浪桃世さんの笑顔に少しでも貢献出来ているのなら、クラスの三軍の俺にも少しは価値があったってことかね。
そういえば朝、西崎華さんに『明日が楽しみです』とか言われていたが……明日は彼女の家にお呼ばれされるのだろうか……
まぁいい、とりあえず今日は帰って寝よう……
「……なんだか、にぎやかで楽しい家だったなぁ」
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影木とふ




