DAY 44 伊江里クロワさんの家にお呼ばれされた日
お昼、素麺。
お風呂後、女性陣はご帰宅されたので、一人でお昼ご飯。
「……一人って寂しいものだな……」
「ボッス」
愛犬を小脇に抱えながら素麺をすするが、いつも伊江里クロワさんに西崎華さん、藤浪桃世さんが一緒にいるので、一人だと部屋が広く感じる。
ダイエット計画を始めるまでは一人が当たり前、でも最近はずっとあの三人と行動していたので、今は火が消えたように家が静か。
愛犬のボスも、伊江里クロワさんがいなくて寂しそう。
「そういやスタンプ、西崎華さんと藤浪桃世さんからは二個押してもらえているけど、伊江里クロワさんからはまだゼロだな……」
夏休みが始まったタイミングで女性陣からもらった『夏休みのスタンプ台帳』。
二人からはスタンプを貰えているが、伊江里クロワさんからはいまだにゼロ。
押してもらえるタイミングもよく分からないし、俺が狙って取れるものでもないんだけど、ゼロかぁ。
「伊江里クロワさん的には、まだスタンプを押すに値しない、ってことか……ってうわっ!」
──ブルルル
伊江里クロワさんのことを考えていたら、テーブルに乗せていた携帯端末が急に震えて驚いた。
「って、しかも伊江里クロワさんからメッセージだ。へ、返信……! えーと、何々、夕方家に来い……か」
伊江里クロワさんからのメッセージには『夕方にウチに来い』という短文が書かれていた。
以前のクセで、内容を確認する前に慌てて顔文字で返信してしまったが……ん? 家に来い……?
「……来たか、入れよ」
「う、うん、お邪魔します……」
夕方、俺の家から歩いて数分の場所にあるマンションに行ってみると、共用玄関で伊江里クロワさんが待っていてくれた。
中に入りエレベーターに乗る。
「…………」
チラと伊江里クロワさんを見るが、特に説明は無い。
ええと、なんで俺、呼び出しを喰らったんでしょうか……。
もしかして伊江里クロワさんのスタンプがゼロなことが関係してます?
お前全然ダメだ、ヤキ入れてやる……とかそういうやつ……?
「あらぁー進太ちゃん! 本当に痩せたのねぇ。見違えたわぁ」
「おお、美山くん、精悍になったな。うん、クロワがソワソワするわけだ、あはは」
「クロワがどうしても進太ちゃんを家に呼びたいって言って聞かなかったのよー。こんなに楽しそうなクロワ見るの、小学校以来かしらー」
「うちのクロワを頼んだよ美山くん。君なら安心だし」
伊江里クロワさんの家に入ると、ご両親が出迎えてくれ、ぺたぺたと身体を触られる。
「お、お久しぶりです。お邪魔します」
伊江里クロワさんとは小学校の時に仲が良く、家にも何度かお邪魔させてもらったが、まさか高校生になって伊江里さんの家に入れるとは思わなかった。
「……チッ、二人とも余計な事言うなっての。部屋来い」
「う、うん」
伊江里クロワさんのご両親は、お父様が日本人、お母様がアメリカご出身。
お母様がこれがまぁ金髪グラマラスボディをお持ちのお方で、伊江里クロワさんはアメリカ系の血筋が色濃く出た感じだろうか。
「し、失礼します……」
「なんだそりゃ、子供の時何度も来てたろうが」
伊江里クロワさんの部屋に入るが、うわぁ懐かしいなぁ、小学校のときの記憶が蘇る。
机にベッドにクローゼットと、とてもシンプルな部屋。
壁に写真が何枚か貼ってある。多分子供時代から今までの、思い出の写真とかなんだろう。
よく見ると、小学校の時の写真だらけ。
中学とか高校の写真は数枚ぐらいで、ほとんどが小学生時代の物。
「って、ほとんど俺との写真じゃないか!」
「な、なんだよ急に。写真? ああ、別にいいだろ。楽しかったんだよ、小学校の時」
思わず声に出してしまったが、貼られている写真のほとんどが俺との小学校時代の写真。
「あ、いやごめん……いやぁ小学校の時の俺、太ってんなぁって思ってさ。モテないわけだって、あはは」
「……まぁ丸かったな。って別にモテる必要ねぇだろ。チッ、なんだよ、好きな女でもいたのかよ」
あれ、伊江里クロワさんが不機嫌になってしまったぞ。
「え、まさか、俺なんか女子に相手にされてなかったし。でもクロワは俺と遊んでくれたから、嬉しかったなぁ。ほら、家でよく格闘ゲームやったでしょ。あれ楽しくてさぁ。クロワが勝つとすんごい笑顔になってさ、それがあまりに可愛くて、クロワの笑顔見たさに手を抜いてわざと負けたりとかしてさ。あ、ご、ごめんね、今更だけど謝るよ、わざと負けるとかやってて……」
「…………」
あれ、黙って向こうをむいてしまったぞ。
やば、俺余計な事言ったか?
まぁそうか、手抜きされてたってのは面白い気持ちにはならないよな……。
「あ、あの、それでご用事は……」
と、とりあえず話題を変えて逃げる!
わざわざ伊江里さんが自宅に俺を呼んだ理由ってなんだろうか。
「…………別に無い」
「え?」
「いいだろ何でも。しばらく一緒にいろ」
ボソっと伊江里クロワさんが呟き、俺をベッドに座らせてくる。
「…………」
そして真横に伊江里クロワさんが無言で座ってきたが……はて。
その後、夕飯のお寿司をご馳走になり、伊江里クロワさんの部屋で懐かしの格闘ゲームをマジ対戦。
今回は手抜き無しでやったのだが、あれからも伊江里クロワさんは家でプレイしていたらしく、勝敗はイーブン、互角の結果となった。
「あれ、もう二十二時だ……ご、ごめんクロワ、面白くて時間を忘れて遊んでたよ。さすがに帰るね」
懐かしさと、互角の戦いに白熱し、気が付けば二十二時、さすがに女性の部屋に長居しすぎたか。
「……帰んのかよ……。別に明日までいてもいいし」
「え? さすがにゲーム徹夜は身体に悪いでしょ、明日の朝走らなきゃだし、もう帰るね」
慌てて帰ろうとすると、伊江里さんがムスっとした顔になる。
「……あのよ、お前……性欲とかねぇのかよ」
俺の右腕をがっつり掴んできた伊江里さんが、じーっと俺の顔を見てくるが……せ、性欲……?
そ、そりゃあありますよ!
今朝の三人に裸で身体を洗ってもらったときとか、欲を押さえるためにどれだけ徳川歴代将軍の顔を思い出して誤魔化そうとしたことか。
「え、そ、それはありますけど……」
「じゃあどうして私に手を出してこないんだ」
……ん? ……いやいや、性欲があるから女性に手を出すとか最低野郎すぎでしょう。
俺はそこまで獣じゃあないっすよ。
特に、伊江里クロワさんは俺の大事な幼馴染みで、天使たちの溜まり場のチームメイトですし、欲のままに手を出すとか絶対にしないです。
むしろ守るのが俺の役目です。
「どうしてって……それはクロワが俺の大事な女性だから、です。クロワにはずっと笑顔でいて欲しい。クロワの笑顔を俺は守りたい。まぁ俺も男ですし、そういう気分になることもそりゃあありますが、どうしても我慢ならん、クロワ可愛すぎ、もう無理ィってなったときは土下座でお願いするかもしれませんけど……なんて、あはは」
「………………したくなったらお前から言ってくる。分かった、ずっと待ってる」
最後ちょっと冗談っぽく言って、伊江里さんに「てめぇふざけんなよ」って言われたら完成かな。
と思っていたのだが、伊江里さんが真っ赤な顔で俺に抱きついてきた。
あれ……?
あれれ……?
「ボッス!」
頭にハテナをいっぱい浮かべ、帰宅。
玄関で寝ていた愛犬ボスが、嬉しそうに俺にダイブしてくる。
珍しいな……ああ、俺の身体から伊江里クロワさんの香りがするからか。
「……なぁボス、あれはどういう意味なんだろうなぁ」
「ボッス!」
ボスに人生相談をしてみたが、「ボッス」以外の返答はなかった。
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影木とふ




