DAY 42 夏休みの最後はお泊り海イベントとシャワーで裸の可能性がある日
「というわけで、『料亭西崎』の保養所の予約が確定いたしましたので、このチームでの夏休みの締めくくりは『旅行とお泊りデートで海を満喫!』となります、皆さまよろしくお願いいたしますね、ふふ」
動画撮影翌日、早朝マラソン。
朝から暑いので、無理はしないように軽めに走り、ストレッチ。
ベンチで休んでいると、和風美人、西崎華さんが笑顔で携帯端末を見せてくる。
「うわぁ、さすが西崎さん……じゃなくて華。いいんですかね、こんな高級そうなところを格安で利用してしまって」
海の側に建っている白くて大きな施設。
どうにもこれが西崎華さんのご両親がやっている、『料亭西崎』の保養所らしい。
しかも送迎付きで一人千円でいいとか……あの、安すぎじゃないですかね?
「ふふ、問題ありません。だってこの四人なら、絶対楽しいに決まっていますから。お友達とお泊り旅行……ああ……こういうの、ずっと憧れていたんです! 中学までは親が許してくれなかったのですが、高校に入り、みなさんをご紹介しましたらやっと許可が降りまして、もう今から当日が待ち遠しくて頭が沸騰しそうです! 実は施設のすぐ横がプライベートビーチとなっていまして、昼間は青い空の下、海を楽しみ、夜には月明かりに照らされた白い砂浜をロマンチックに歩くなんてそれはもうキラッキラな思い出が生まれること必至でして自然と二人が見つめ合い身体を抱き寄せ流れ星が見えた瞬間甘い口づけをジュルルっと……」
ええと、西崎さんが大興奮で語り始めてしまったが、ようするに俺たちの夏休みの最後は、『料亭西崎』の保養所にお邪魔するってことで決定か。
しかしマジで豪華な施設。
ご飯も向こうでご用意していただけるとか。
砂浜ではバーベキュー、スイカ割り、花火なんてのも自由に楽しめるのか。
これは予定していた『夏休みにやりたいこと』のほとんどが、このプライベートビーチで出来そうだな。
「うっわー、すっごい施設ー! しかもプライベートビーチとかエッぐー! もしかしてここって裸で泳いでもいいとか? 動画の撮影も予定しているだろうけどー、ミャーマー、さすがに裸のところは撮るなよー? あはははは!」
藤浪桃世さんも興奮し始めたが、え、ここって……ヌーディスト……的なやつなんすか?
マジで! 日本にそういうところあるんすか!
動画の撮影はしますけど、さすがに裸は無理っす。
まぁその、プライベートで楽しむ用になら……ってそれは盗撮で人生アウトか。
「……桃世に乗せられてんじゃねぇよ。海とか、こういうところで裸とかアホか。……見たいなら、室内で普通に言えばいい」
プライベートビーチからのヌーディストビーチなんてのを想像していたら、伊江里クロワさんに脇を小突かれた。
す、すいません……! 16歳の俺にとってはとても夢の膨らむワードだったので、つい……。
ん? 見たいなら普通に言えばいい……?
はて、それは一体どういう意味でしょうか伊江里クロワさん……。
もちろん見れるのならば見たいです!
今言いましたよね、見たいなら言えって!
……どれ、怒られるのを込みで……言ってみるか。もちろん冗談で、だけど。
「……クロワ、君の裸が見たい」
「……え、は? い、今か……? て、てめぇ話聞いてたのか……外はダメだって言ったろうが! し、室内でならその……」
ちょっと決め顔で、王子様っぽく伊江里クロワさんの手を取り迫ってみた。
……あれ、ビンタぐらい当たり前かと思っていたのだが、伊江里クロワさんが顔真っ赤でモジモジし始めてしまったぞ……。
これは予想外の反応……。
ど、どうしよう……怒られて土下座までがセットのボケだったんだが……。
「ずっる……ずるいずるいー! なんでクロワだけなのー! ミャーマ、私は? 私のは見たくないの? むぅぅ! やっぱ大きさ……ミャーマは胸の大きさで女性を区別しているんだー! ひどいー! 私だって二人に比べたら大きくはないけど形はとっても良いんだよー!」
伊江里クロワさんと謎の見つめ合いをしていたら、横から藤浪桃世さんが俺にダイレクトアタック。
ごっふ……よ、良かった……ちゃんとツッコミが入った!
え? 藤浪桃世さんのは大きくはないけど形は良い、だと……?
ほう……それはどういう感じなんだろう……ちょっと見てみたい……じゃなくて、こういうのに乗るから俺はダメなんだ。
さっき伊江里クロワさんに怒られたばかりだった。
……おっと、朝とはいえ周りに人がいるのを忘れていた。
公園でちょっとした寸劇を披露しているチームみたいになっていて、注目を浴びていたぞ。
さすがに帰るか、西崎さん、もう行きますよ……
「──服を脱ぐのももどかしく二人は抱き合い求めあい白い砂浜に跡が残るぐらいのそれはそれは激しい夏の思い出の1ページが二人の身体に深く刻まれ──」
……あれ、こっちはこっちで単独講演の真っ最中だった──
「ふぅ、走ったあとのシャワーは最高だぜ」
自宅に帰り、シャワーで汗を流す。
──ガチャ
「風呂上りは冷やした寒天ゼリーでも食べて……」
あれ、髪を洗っていたら、後ろの風呂場のドアが開いた音がしたぞ?
え、なんだ、誰?
うっふ、シャンプーが目に入って何も見えないー!
「…………お前が言ったんだからな……責任は取れよ」
「え? この声、伊江里さ、じゃなくて……クロワ? え、待って俺裸……」
背後から声が聞こえ、どうやら風呂場に伊江里クロワさんが入って来た模様。
え、ちょ……待って! 何で入って来たの……!
じゃんけんで順番決めて、俺が一番だったはず……あ、どうしても汗が嫌で、我慢出来なかったとか?
だ、だったら俺が出ますのでもうちょっと待って、すぐにシャンプーを洗い流して……いや待て……風呂場に入ってきた伊江里クロワさん……これ、もしかして裸……の可能性……。
見えてしまうと、それはとってもマズイのでは……?
だめだ、シャンプーを流すことは出来ない!
絶対に振り返ってもいけない!
目を閉じ心眼で風呂場を出る……これだ!
「じ、じゃあ俺出ますので……!」
「待てよ、シャンプー流してないだろうが」
泡を纏い風呂場を出ようとしたら、伊江里クロワさんに右手をがっつりつかまれる。
い、いや、シャンプーを落としてしまうと、伊江里クロワさんの裸が目に入ってしまって大変まずい状況になるので、その……。
「……見たいって、さっき言ったろ。なんだよ、嘘だったのかよ……」
伊江里クロワさんが少し悲しそうに言う。
え、いや、そ、それは見たいですが、見てしまうと色々とマズイような……
いや待て、これはフェイクの可能性がある。
つまり、水着で入ってきて、俺を驚かそうとしているパターン。
よくゲームとかで、そういうシチュエーションを見たことがある!
そう、今、伊江里クロワさんは水着を着て風呂場に入ってきて、俺を驚かそうとしている……そうに違いない。
なのでシャンプーを落とし、脳に焼き付ける勢いで直視しても何の問題もない。
だって彼女は今、水着なのだから──
いくぞ、せぇの……!
「おっとそこまでだクロワー! なんかコソコソやってるかと思えば、抜け駆けどころか数段すっ飛ばして裸で迫るとかチーム協定でアウトー! やるなら全員一緒だっつーの!」
さぁ目の録画機能は準備万端、目の前の光景を、伊江里クロワさんの全てを一生の思い出になるように見……うっふ……な、なんだ……急に視界が真っ暗で何も見えなくなったー!
カメラの故障か……?
いや、そもそも俺の目に録画機能とか無いんだけども。
あれ、藤浪桃世さんも風呂場に入って来たのか?
バチーンと、すごい勢いで俺の顔にタオルが巻かれた。
み、見えぬ……!
「ちょ、そういうのは海に行ったときじゃないんです!? いきなり仕掛けてビックリです! あ、美山君の裸体が目の前に……! やりましたわ、ちょ、どいて下さいクロワ、美山君の全てを見て私の夏の思い出に……!」
「ちっ……! なんで来るんだよお前等! こいつが見たいって言ったのは私の裸だろうが! 見たいと言われたから見せに来た、何が悪いんだってーの! あ、こら、勝手にこいつの裸見てんじゃねぇよ華! 最初は絶対に私がするって決まってんだっつーの!」
あれ、西崎華さんの声もするぞ。
え、もしかして、この狭い風呂場に伊江里クロワさん、藤浪桃世さん、西崎華さんが入ってきていて、しかも全員裸……?
おいマジか……!
クっ……タオルがとんでもなく絡んで外れん……なんだこれ、クソ、18禁の壁の意志を持ったタオルか何かなのか……?
つか、女性陣に俺の裸をガッツリ見られたような……
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影木とふ




